「おくのほそ道」も残すところ2段、1回ないし2回で書き写しも完了する。これだけで終了では目的を達していない。書き写しを始めたのは、漢字をかくのがたどたどしくなり、間違いや字形を忘れたりして、満足に文章がかけなくなったと自分で判断したからである。まだまだ回復していない。長年のキーボード頼りで40歳以降はほとんど字を書いていない。仕事上の起案も、組合の資料作りも、ビラ作りもワープロ・パソコンがないと何もできないに等しい。便利なようでいて、結果として60歳を過ぎると字を忘れるばかりであった。
まだまだ回復に至っていない。一番字を書いた10代から30代の状況まで回復するのは難しいとは思うが、せめて2~3善事の手紙くらいはきちんと読める形で書きたいものである。もともと達筆ではない。それでも丁寧にきちんと書いて、読んでもらえる字、間違いのない字、大きさの揃った字、行が波打たない文面で書きたいと思っている。
そんなことで次の書き写しの候補を探した。一番の候補は古今和歌集の仮名序である。紀貫之が書いたといわれ、日本で初めての歌論書ということになっている。
「やまと歌は、人の心を種として、万(よろず)の言の葉とぞ成れりける。‥‥」という冒頭は知っているが、私は最後まで読んだことがない。たぶん多くの人は古文の授業でも最初の段落「‥‥男女の仲をも和らげ、猛き武士(もののふ)の心をも慰むるは、歌なり。」までではないだろうか。この初段は全体の5%にもならない。最後まで目をとおすいい機会かもしれない。
むろん最後まで読むのは私も初めてである。これが終われば、当然にも次の新古今和歌集の仮名序に目をとおし、両者の違いを知ることにも繋がる。
もう一つの候補は、百人一首。その他平家物語のいくつかの段、方丈記、芭蕉の他の紀行文なども考えた。
結局一応第1番の候補に絞ることにした。種本は岩波書店の新日本古典文学大系の「古今和歌集」。