「トライアローグ展」では、フェルナン・レジェの作品が3点展示されていた。
「コンポジション」(1931、横浜美術館)と、「緑の背景のコンポジション」(1931、愛知県美術館)、「インク壺のあるコンポジション」(1938、富山県美術館)の3点。
私は誤解をしていたようだ。横浜美術館のコレクション展で展示される機会の多い「コンポジション」は奥行き感をきわめて縮めた空間に押し込め、黄・青・赤の美しい原色がバランスよく、そしてリズム感をもって配置されていることで目を引くものであった。しかし描かれているものが幾何学的なもので、機械に対する親和性が気になっていた。人工物・機械的な物に対する関心の強い作家と聞いていた。
1930年代、多くの画家の、大型の機械に対する信仰にも近い親和性というものに対して、私は違和感が強かった。色彩の配置には惹かれる作品でが、同時に、精密な機械の美しさ、機能に対する信仰が危うくもろいものであることを現代の視点で私は判断していた。
今回同じ年に制作された「緑の背景のコンポジション」を今回の展示で初めて見て、考え方を変えたほうがいいと思った。この作品では同じように奥行き感の乏しい画面に緑・赤の原色を配置してあるが、機械ではなく植物の形態を基本としている。中央に配置された長方形、円、三角などの幾何学的な形態も、有機物の形象の単純化の中でできた形態である。このことに好感が持てた。
「インク壺のあるコンポジション」では、赤・青・緑・黄の原色のバランスが好ましいだけでなく、卓上の人工物であるインク壺やペンだけでなく、樹木に見えるような羽、雲に見えるたばこの煙、落ち葉のような形態など、卓上に風景が現出したような作品である。人工物と自然が混在して、不思議な空間を作り出したように思えた。
この3作品を並べることで、レジェという作家が私の第一印象だけではない、普遍性を志向した画家であることが理解できた。私にとっては収穫のあった展示であった。
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