絶賛された今までの作品群からは、ふらりと糸の切れた凧のように空を泳ぐかのような作品である。一挙、出発地点に戻ったかのような初動映画のような色合いがある。
見終わってから思うと、3人のそれぞれの話である。愛妻を通り魔に殺された男。姑と夫とともに明日のない生活を背負わされているどこにでもいそうな主婦。そして学生時代から好きになってしまった男を今でも忘れられないゲイの弁護士。
そこにあるのは現代の喧 . . . 本文を読む
映像が素晴らしい。ため息が出るほどだ。特に舞台が日本になると水を得た魚のごとくクラシック風音楽と混合し独特の小栗映画を供出した。
けれどこの作品の主人公たるフジタが見えない。彼の内面に入らない。世界に名だたる芸術家なのに芸術の悩みでさえ全くない。これはこの手の映画にしては珍しい。
というか、見方を変えれば変な映画でさえある。伝記映画にしているのに彼そのものを全く描かないのだ。これは映画として稀 . . . 本文を読む