なかなか面白かった。さすが、こういう家庭内部の動的な部分のあまりない日常劇にミステリーを味付けしたその達者な演出ぶりは山田の円熟さを伺わせるに十分だ。
後で考えるに、シンプルな話なのである。戦時中とはいえ、贅沢をできる上流階級もあれば飢えで苦しむ庶民の家庭もあったのだろう。この作品での上流階級の生活ぶりを見るにつけて、しかし人間って時代を超えてけなげに貪欲に生きてゆくものなんだなあと納得する。
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わが敬愛するアンゲロプロスの遺作。見ることは出来まいと思っていたが、ようやく公開されて感激する。創作方法が、分かりやすい最近の諸作品から、また20年ほど前の詩情豊かなアンゲロプロス独特の混迷漂う時間・空間を超えたまさにポエムとなっているのがスゴイ。
俳優陣が今回は国際スター級であるのが目を見張る。古くは「ベルリン・天使の詩」のブルーノ・ガンツ、フランス映画の至宝ミシェル・ピッコリ、 キ . . . 本文を読む
確かにこれは平成のエラリー・クイーンですわ。現場に残る小さなものから推理してゆくそのロジックはこれぞ本格の香り濃厚だ。実は僕はこういう本格ミステリーを待ってたんだね。うれしい限り。
しかも著者はまだ大学生というじゃないか。これは将来楽しみでありますよ。
ミステリーにおいて道具を大切にするということは基本の基本である。読んでいてこの関連が面白いのである。文章もとぼけたギャグ満載でこれまた楽しい。 . . . 本文を読む
翻訳もので最初は取っつきにくかったけれど、そのうち慣れてくると叔父と姪の少々異常な関係に舞台と観客席とがどんどん密接してくる。
俳優たちの汗と吐息と動悸までが聞こえてきそうな濃密な舞台であった。近親相姦といっても血のつながりはないのだから、特に目くじらを立てるものでもない。それが15歳ぐらいから始まり18歳で終わるという時間的基軸が存在するというのがとてもユニークであった。
主役を務めるお二人 . . . 本文を読む
毎度おなじみそして超楽しめる隠蔽捜査シリーズの新作。今野 敏 の作品でもこのシリーズは本当に抜けて面白い。ミステリー部分よりキャリア官僚を主人公としたその生き様がスカッとするのだ。まあ現実はこうはいかないだろうが、だからこそ読むときのこのワクワク感はたまらない。
このシリーズももう5作目なのでそろそろ人事異動があるのかもしれないね。伊丹部長も結構長い。この竜崎と伊丹との取り合わせがこのシリーズの . . . 本文を読む
舞台は左に右に一対の生活調度品がある。よく見ると全く同じ風である。
カップルの一室である。右側はほとんど会話も少なく若いのにもうお疲れ風。左側はヤングの一人は詩をめざし、一人は演劇を目指す颯爽ヤングである。
ところがそのうち左側が同じカップルの人生の使用前・右側が使用後の世界だと分かってくる。時間の歳月は10年である。
左側の人生を垣間見ているとこんな関係でそう持たないなあと思っていたら、観 . . . 本文を読む
3部作の完結編らしいが、前作は見たはずなのだがほとんど覚えておらぬ。だけどそこはミハルコフ、一編の作品として鑑賞できるストーリー構成を設えている。
カメラがいいね。さすがそこらの映画とは異質のダイナミックな撮り方。唸ります。冒頭の無謀な戦闘シーンにも、一人一人の人間像が深くカメラを通して観客に迫り来る。その基本的な「映画の文法」テクと映画的高揚。最近あまり見たこともない何故か懐かしさまで感じる本 . . . 本文を読む
何かパスししてしまいそうな題名、そして最近やたら流行りの老人映画ということで期待はしていなかったが、どうしてどうして暗い映画よりこういうように明るい映画もいいのかなあと思った。
ベタな展開、ラストも想定内の映画ではあったが、俳優たちの老人ぶりがとても印象に残った。実年齢は90行っている人もいれば、ありゃまあ50代の人もいたのだ。
セリフのほとんどない人もいれば主役で演技を求められる人もいる。そ . . . 本文を読む
こういう作品はテーマにとらわれ過ぎて(印象が一点に集中しそうで)映画としてのコメントを書きづらい気がする。そう、やはりこの作品はラストにすべてがあるように思う。
50前にもなって生活を母に頼る情けない男である。今までどういう生活をしていたのか明確ではないが、要するに年齢は経っていても実は幼稚なコドモである。こんな子供を人生の最後に見なければならない母親もまた不幸である。そんな風に映画を見ていたが . . . 本文を読む
ハナシは少女の青春記のような形式にはなっているが、その女性蔑視にただただ驚愕するのみ、、。
そういえばインドで少女がひどい目に遭っているという新聞記事を思い出す。何故同じ人間でありながらそういうことが可能なのか僕には不思議だったが、この映画を見るとその内実が分かるような気もする。
女性は車も乗れないから乗合タクシーのような代物と契約をする。男に見られないように顔を隠すというのは周知の事実だが、 . . . 本文を読む
名探偵となるとこちとら気になって仕方ないんだよねえ、、。結構日本でもいろんな人が名探偵シリーズを書いているが、意外と駄作が少ないんですよ。名探偵というからにはかなり労力をかけているんでしょうなあ。
この作品、まあ展開そのものは変わっている。次から次へと事件が起こる。まるで短編集の集まりみたいだ。ところがベースの事件には最後にあっと驚く仕掛けが用意してあった、、。
と、こう書けば一気読みのミステ . . . 本文を読む
中学生の長ーい日常。新一年生。クラブ勧誘。不安とときめき。そういう時代だったかなあ、もう50年ほど前のことだからだから感覚さえつかめない俺。けれどこの映画はまさしく少年少女の生きる息吹が、その確かな息遣いが静かにこちらに伝わってくる、、。
たいして事件が起こるわけではない。イジメもそれほど深刻なことはない。誰かとラブラブになるわけでもない。性の興味が旺盛なはずなのにそれにも触れない。多少フルート . . . 本文を読む
いい話なんだけどなあ、俳優もいいんだけどなあ、何か盛り上がらなかったかなあ、、。何故だろうかなあ。
そこは演出が鋭くないから、なんて言いやしないけど、多少それもあるかな。それと大体この手の話、もともとそれほど特別な話であるわけでもなく、普遍的なストーリーだ。あ、そう、だよね、ごく普通の話に終わってしまう可能性もある。だからこういう話ほど演出はきりりとしなければならない。
温水洋一とかふせえりの . . . 本文を読む
2013年最後の演劇をわが故郷ともいえる天六で見る。小さなカフェバーでの演劇。観客は10人強。普通の和室の畳の部屋が舞台である。観客との接近距離はほとんどないほど。これはどんな演劇になるのだろうか、、。
ところが30を超えた男どものほろ苦き青春の名残に僕は涙してしまう。男たちはいくら年をとってもガキなんだね。これをかわいいと言っちゃえば弁護し過ぎだろうが、やはりやるせない生き様を見せる男どもの青 . . . 本文を読む
普通、演劇を見るとき冒頭で関係者は諸注意を言う。ふと気づくと、肉付きのいい足をさらした女性が観客をを睨んでいる。そしてこの彼女が諸注意を言う。
付けまつげをしている人は取ってください。心臓のペースメーカーをつけているひとは外してください。(でもそんなことしたら死んじゃうかも、、)とか、思い切り失礼で怖い発言を観客に投げつける。でもそれはほんの序の口だった、、。
それにしてもなあ、あんなかわいい . . . 本文を読む