重松の作品は久しぶり。この作品はずっと気になっていたけど、何故か読まないでいた。そして今年もいろいろあった暮れにじっくりこの作品を読む。短編集で、それぞれがいずれもどこかでつながっている。
底流に流れているのは人は死んでいくということだ。これは私たち人間から、いや動物、生きとし生けるものすべてから逃げることのできない設問である。
あまり本を読んで泣かない私だが、この本はじんわり泣いた。人が死ん . . . 本文を読む
出だしからいい音楽がかかる。そうだこの映画は音楽映画なんだ。でもいい人間ばかり出てくる。
人間が殻を抜け出すのにどれだけ人の助けと愛が必要なのか、というテーマが全編に音楽とともに流れている。一人で見るには最適の映画。心が洗われる。 . . . 本文を読む
年末になるにつれて秀作を見続けるこの気持ちはどんなものか。今日も学生演劇だと高を括っていれば、とんでもない優れものに出会う。昨日も阪大の学生演劇に大いに感心したところである。
この演劇、かなり難しく、まともにセリフを聞いていても何が何だかわからない。おそらく作者の脳裏の想念がそのまま舞台に飛び出したような、ある意味厄介な演劇なのだが、これがまた若い俳優たちにやらせれば、とんでもなく面白くなる見本 . . . 本文を読む
10人以上出演する楽しい演劇です。ちょっとfantasyで、みずみずしい感覚が素敵だ。いつも気になる学生間の年齢差もこの劇ではそれほど気にならず、劇に没頭できる。
結局人間たちの白昼夢だったんだろうけど、でもこういう劇は終わってからの読後感がすこぶるよろしい。
若い人たちの自由な演劇を見るのはとても楽しく、これは学生演劇の醍醐味だろうと思う。 . . . 本文を読む
50分の短い劇だが、3人の女優がしゃべるセリフの早いこと、合い間もないぐらい機関銃のように喋りまくる50分であります。これは通常の劇の90分を畳み込むような劇の作りであります。
なんといってもこれは脚本の力かなあ。すごいわ。もうそれに尽きる。それとこれを書いたのが男性だということ。どうやって女性の心理を深く、また散漫に膨れ上げさせたのだろう。
女優たちは、一寸の余裕もなくとにかくしゃべり続ける . . . 本文を読む
「カルネ」「アレックス」など数々のセンセーショナルな映画作りで話題性十分なノエの新作だ。今回はところが意外とおとなしい、、。
目立つのは言うまでもない延々と続く2画面分割。そのうち慣れるが最初はそのテリトリーをじっと深く見てしまう。
老夫妻、特に妻の認知症は急激に進み、そのやりきれなさ、おぞましさは観客をも道連れにする。ノエは60歳ぐらいだから、まだまだ傍観者の視点を保つことができているようだ . . . 本文を読む
大学演劇でも阪大の演劇部と並ぶ勢いの万絵巻。今回は2時間半の超歴史ロマン劇を熱演してくれた。
登場人物が多彩でそれぞれ主役級の性格付けをされているので、観客はどのシーンを見ても見飽きない。それはおそらく俳優陣も演じることへの追及、発表感にも表れるはずで、途中とちることもほとんどなく、流れはラストへと感動を誘う。
同じ人間でありながら、差異を生じることへの根本的な問いが究極的に底流を流れている。 . . . 本文を読む
1mgにしては珍しく、いたってシンプルな、また身の丈十分な青春の輝き十分な、みんなが一つの方向を見つめているその時を切り取り、人生を感じ始める素晴らしいひと時を舞台に輝かせてくれた。
それぞれ人生を経ても、いつでも人間はその輝ける時に戻る時ができる。いい演劇だったなあ、、。
. . . 本文を読む
膨大な数のエキストラの表情が日本映画ではどうもリアルが感じられず、嘘っぽいのが難点。とはいえ、これはどうしようもないことなのかもしれない、、。
まあ、古臭い美談を基調に純愛ものしているが、それでもやはりあの展開は分かっていてもうれしい。でもラスト、感動のご対面シーンで、あの女の子は父親な顔を見ていて、母親を見ていなかったなあ。せめて3人で抱き合ってほしかった。
とはいえ、ゴジラが神出鬼没輩出し . . . 本文を読む
いかにミステリーを読んでいる吾輩でも、この4編目の「いとしい人へ」には強烈に驚かされた。伊吹にしては、この1~3編目まで少々甘いかなあと思っていたのだ。それが、4年目の途中で、また1編の最初から読み始める羽目になってしまった。
これは僕の長いミステリー人生においても初めてのこと。
すごいからくり、どんでん返しにかなり懊悩する。いや、嬉しい。面白すぎる。でも、読んでいるのは、ラストの編ではないん . . . 本文を読む
老いを見つめるある村の一日の出来事。そこには老人目当ての詐欺師が訪れたり、平和に見えるのんびりした日々にもほころびが見え隠れしている。静の生活にも老いとともに認知症の病気もはびこってくる。
彼らの生活。いやあ、日本人の老後の縮図でもあります。でも、通常それを醜悪とか嫌悪感とか感じる流れなのだが、この演劇不思議とそんな空気感が生まれず、むしろ彼らの世界が透明感まで感じるほど美しい。
これは何だろ . . . 本文を読む
ユニークで才気煥発、関西でも常に注目を集める劇団の新作です。今回はなんと日本の戦後政治史を辿る一応コメディです。
一応というのは、あまり笑いが取れなかったからなんですが、でもこの現在の政治状況までを俯瞰し、思い切りひねくれさせ、かなり現実を揶揄させた描き様はやはりシリアスとは言えず、コメディなんでしょうな。
その吹っ切れた感覚が全編を多い、いかにも面白い。映画もかなりお好きなんでしょうか、その . . . 本文を読む
めずらしいキルギス映画。イスラムの国でありながら、離婚についても女性の地位がある程度認められている国。シンプルなテーマであるからこそ我々の胸にも動揺が走る。
このテーマ、23年ぶりに帰還した夫の家族はすでに妻が再婚し家を出て、帰った夫は国の乱れである象徴のゴミ拾いに没頭する。そして村社会でもそれが徐々に波紋を上げていくことになる。
昔イタリアの名匠デ・シーカに「ひまわり」という佳作があった。戦 . . . 本文を読む
久しぶりのウイングフィールド。毎週来てた時もあったほど、あの時はよく見てたなあ。あのコロナの影響で足が遠のいたけど、やはりいい劇場だ。手作りの演劇がどんな形にも応用し、料理できる。今回も、舞台を観客エリアまで広げ、俳優が何回も通路を通る面白い試みをしている。
さて、俳優はまるで大学生と思えるようなヤングたち。でもセリフはしっかり言えてるし、発声も豊か。いい劇団である。話は少々難解そうな仕組みを取 . . . 本文を読む
石持の新作。彼の作品は誰も持ってないユニークさとスマートさが売り。それが存分に発揮された作品であります。
5編の短編集です。それぞれは設定が違い、ラストもそれぞれ違ってくる。よく考えている。ミステリーとしてもとてもまとまっており、しかも読みやすい。250ページの短さなので、あっという間に読んでしまう。それはもったいないぐらいです。
ずっと石持を呼んでいるが、ますます孤高の位置にたどり着こうとし . . . 本文を読む