力作だと思う。何より自分とは何か、人間とは何か、レプリカントとは何か、内省的なゴスリングが久々に役に溶けるような熱演。映像、音響も秀逸で、何か、カフカ的な暗黒の世界が宇宙に浮遊している感が強かった。映画ファンであってよかった!
3時間すべてのシーンが好きだが、その中でも、体がほしいと願うジョイが生身の女性と交差し、Kと愛を交わすシーンが絶品。素晴らし過ぎて涙が出た。
また、ラスト近くの怒涛 . . . 本文を読む
手作りの、誰もが演劇をできるといったテーマで集まった人々の、ダンスもある楽しいイベントでした。劇の方はミステリー仕立てで、まさに設定は本格ミステリーでしたが、細部にまでは神経が行き届かなかったようで、なかなかこの手の演劇も難しいなあと思う。
後半は、楽しいダンス演目が次々と続き、ひょっとしたらこちらが主だと思われる熱演ダンス。観客と一体となった珍しい演劇でした。 . . . 本文を読む
若くユニークで卑近なことからどんどん面白くなってくる不思議な魅力満載の劇団である。
3話の連作なんだが、僕は2話の警備員と恐すぎる学校の侵入者とのやり取りが印象に残る。この女優さんは飛びぬけて美しいし、また完璧にコワイヒトを演じ切っている。その醒めた冷たさが怖さを混ぜ合い、めちゃ印象深い舞台となった。
全体的に、どこにでもありそうな題材を選びながら、すべて個性的な脚本に驚く。それは才能のなせる . . . 本文を読む
2年前に見逃した作品でした。やっとの思いで、秀作の誉れ高いこの作品をじっくり鑑賞する。
見てみると、何と、ほとんど福谷の脳裏の中を妄想という形で吐露した実に面白い、一見難解にも見える作品でした。
演劇だけでなく、映画作家にもこの手の作品は多い。古くはフェリーニの「8・1/2」、アンゲロプロス「永遠と一日」、ベルイマン「野いちご」など名作が多い。
福谷の場合は作品を作る苦しみがあまりないようで . . . 本文を読む
さすが佐々木譲。読ませる文章で550ページはそれほど苦にならず。
警察から、弁護士から、そして被疑者の関係者から全く等距離でこの単純な事件を描き切っている。通常はどれかが主となって展開するものなのだが、公平なんだよなあ。だからこそ力作となったと思う。
けれど、警察のでっち上げのような逮捕も小説としては少々疑わしく、真犯人の描き方も雑ではある。この辺りが気にはなったが、一気読みはミステリーの定番 . . . 本文を読む
勝手に見限って最近5作ほど見ていないオゾンの新作。安定した定位のカメラワーク。美しいモノクロ。人の心の分かり易い(現代に比べて)第一次世界大戦後という時代設定。もう、今までのオゾンの才能をすべて発揮した秀作となっている。素晴らしい。
2時間、もう見惚れたかのような快感の持続。これぞ映画を見るときのひたひた来る至福を体全体に感じる。この映画は見て何かを考える映画では決してない。映画を見ることの本源 . . . 本文を読む
僕としては映画で久々に吉高由里子を見られたというのが一番。しかも、絶妙で迫力のある演技。彼女はやはり映画女優ですなあ。この題材を現代で堂々と映画館で上映されるのも好ましい限り。
ただ、この特異な病気(と言ってもよいだろう)の女性が辿る遍歴の中でのあの、リストカットの延々描写がぼくにはきつ過ぎた。スクリーン左壁の非常誘導灯を何回見たことか。
ミステリー的要素はほとんどないが(あんなに警察が甘いと . . . 本文を読む
20周年第2弾。こちらは子供時代に戻ることのできるハートフルファンタジー。12歳から27歳までを出演者が自由に丹念に柔らかく演じている。子供時代に演劇に目覚めたその時の感覚を大事に大きく描いた作品である。
実にみなさん童心がいまだ十分に、また豊富にあるようで、しみじみした味わいまで発露するいい作品になった。
川田氏はまさにこういう役が得意中の得意の人。自分に何をも色づけずに出せる役柄で、繊細で . . . 本文を読む
20周年の記念公演。第一弾はただただ走りまくるほんわかファンタジー。主役小出太一は汗だくで狭い舞台を80分疾駆している。18歳の役だけど、頑張ってる。
内容は交通事故であの世に行ってしまった一人の男の、そのあの世での奇妙な話です。かなり軽い展開なので、それほど生きるとか、死ぬとかをあまり考えないコメディではありますが、見ていてみんなお若いなあと思う。体力にも自信があるのかな。安定感があります。
. . . 本文を読む
これは凄い劇でしたぞ。最初時代を感じさせる「もののふ言葉」で入りづらい面があるが、慣れてくるとそれが快感になる。美しい日本本来の言葉をジーンと感じている。
通常の時代劇ではなく、何かしら能にも通じているような芸術性がかなり高いように思えた。驚きました。こんな芝居をする劇団は関西ではないと思います。それだけ、東京での小劇場の密度の高さを窺うに十分な秀作でもあった。
だいたい、僕はしょっちゅうシア . . . 本文を読む
久々に邦題がナイスな映画です。そうこの映画は、人間がどんな環境にいようと、諦めることなく希望をもって進めば何か生み出されるといった、今の現代では不透明になってしまったずばりガッツ映画です。
ちょっと良過ぎの展開であれっと思ってしまうが、冒頭でいつものようにこの映画は事実に基づいた映画と出ているから、それについては不問にします。
映画的テンポもほどよく、黒人女性の3人の話だけれども、全然退屈しな . . . 本文を読む
このシリーズも6作目。通常はそろそろマンネリしそうなものだが、ところがどっこいますます面白さを増している。もうサラリーマンを卒業した吾輩であるが、俄然痛快な竜崎の心根にただただ脱帽。
そして今回は発生する事件にかなりのひねりがあり、ミステリーとしてもなかなか新味があり、惹きつけられた。
いやあ、とにかく330ページはもうどこに居ようが、何をしていようが、もうこの小説のことにかまけていて、早くこ . . . 本文を読む
安部公房が書いたかのような不条理劇風であり、ショートショート風のミステリー風でもあり、また何といっても娯楽性が十分満ち満ちている。出演俳優も声といい、華やかさといい、この上ない彼らの個性を引き出している。
ウイングフィールドで、左側の窓が開いているのは実に珍しい。その窓から光が流れ射している。いつも暗闇に親しんでいる舞台はなんだか明るく、ある意味まぶしくもある。それほど常に劇場は自然日光を拒否し . . . 本文を読む
本格的と言おうか、いわゆる新劇っぽいオーソドックスな演劇である。難しそうだなあと思うのは劇が始まるまでで、社会から放り出され、見くびられ、希望を失い始めた人たちの巡礼の旅が基本となる劇である。
20人ほどの多数の虐げられた人たちの個別の無念の思いや、かすかな希望はそれほど描かれず、炭坑事故でCO中毒になって幼児に戻ってしまったような夫とその妻、そして姑のそれぞれの葛藤が話の主軸となる。
そして . . . 本文を読む
RPGというゲーム感覚で話が展開する。これが結構、謎が謎を呼び、ワクワクする。ストーリーの先が読めないのだ。だから面白い。ゲームにはミステリー感覚が重要なんだなろう、それが分かる。
だんだん登場人物が出尽くしてくると、果たしてこれからどうなるんだろう、ちょっと手詰まり感も見え始まる。何か脚本を書いている川下氏の脳裏が見えてきそうな展開」である。
そうすると、何やら怪し、楽屋落ちらしき会話も見え . . . 本文を読む