主人公目線でカメラが動き回る。時代がヨーロッパの末裔ハクスブルグ家の終焉と第一次大戦のトリガーとなる時代の背景をちらつかせるも、「第3の男」のオマージュっぽいし、まさに
ラストで、兄と自分が同化してしまうなど、ラースロー一夜の迷宮映画でした。でもこの撮り方好きですなあ。こういうイメージの豊穣たる映像の露出は十分映画たり得ますね。楽しめました。 . . . 本文を読む
言わずと知れた清水邦夫の名作。演劇を志す人たちにとってはチェーホフの「かもめ」「3人姉妹」の名台詞が出てきたり、とても人気があり、やりがいもある芝居です。
4人の出演者、当然ながら皆若く、その分見た目で人生を感じとるということがとてつもなく無理な話だとは思う。でもこの芝居は演劇を好きで好きで仕方がない人たちだけれども、一方では人生の苦しみにはじき返され死を伴った人もあるという設定だ。そこのところ . . . 本文を読む
年齢的にはもう立派な青年なんだが、心は思春期同様に迷夢する二人。そんな二人の切ない揺れ動く心象風景を、繭から1本の糸を紡ぐように鋭く描き切った佳作です。
二人の周囲の友人たち、家族たち、会社関係の会話はだからこの映画の場合、ほとんど意味を持たない。僕たちは映像から知り得る二人の心の動きを観察することだけに専念させられる。このセリフで語られることのない二人の心情こそがこの映画の骨格となっているのだ . . . 本文を読む
コロナ騒動の中、なんと半年ぶりの演劇鑑賞。映画とは違い、演劇では発声が絶対存在するので、かなり鑑賞には慎重を期していたが、この劇場は環境的に問題なしと踏み、やっと前に出る。やはりこの広い劇場でも舞台から客席まで5メートルの距離を保ち、また左右前後の空席を保っているので、いつもの半分以下の観客数だろう。演劇関係者さん、もう少しの辛抱でしょうか、、。
劇は懐かしや、菊池寛の原作もの。二作を一本の作に . . . 本文を読む
日本では珍しいハイジェットコースター展開のプチミステリーです。300ページぐらいだが、これをまともに紡いでゆくと通常は倍のページになるのかもしれない。でもそんなことしたらこの小説の魅力は半減してしまうだろう。
紙とプラモとグーグルのオタク小説といっても言い過ぎではないのかもしれません。あれだけの情報で一つも間違わず推理を重ねるのはちょっとあり得ないが、それを言っててはこの小説が成り立たない。それ . . . 本文を読む
いまや上映が一番待ち遠しい映画監督、クリストファー・ノーランさまのお出ましです。冒頭からの30分はさすがワクワク感が漂い、これはやるなあと思っていたが、、。
途中から、時間軸を彷徨う展開はやはりかの秀作「メメント」「インセプション」の二番煎じ気味です。あの漂流感が忘れられないんですね。分かります。分かりますとも。でも、やはりそれはノートンほどの大家になればやっちゃ、だめなんじゃないかなあ、ぞなも . . . 本文を読む
栞子と大輔が結婚して、なんと早や小学生の女の子が将来のディテクティブを予感させる展開に、少々戸惑いもし、また熱いファンサービスを感じる。
この手法だったら、さらに10年20年続きそうだね。実の主人公たる古本は世間に山とあるのだから、、。
で、全体の読後感だが、二人が結婚したことで、あの甘酸っぱい青い恋愛モードは淡色になってしまったが、まあ、雰囲気は続いている。その分、ミステリー部分が前面に押し . . . 本文を読む
思春期のある出来事がその人の長い人生に烙印を押されることはあると思う。岩井は真正直にこの作品で、行きつ戻りつ結局は過去の光点に拘って、緩く回転し続けているようである。
驚くべきは、岩井のピュアな(そうに見える)思春期へのあこがれ、その永久感である。初期の作品群からのテーマ・イメージを30年近く経っても持ちこたえているその執拗さ。
彼の脳裏は今でも少年のみずみずしさ、すがしさが蔓延しているのか。 . . . 本文を読む
5編の短編集。読みやすいし、別に犯人を当てる本格物でもないから、読み物として読み進んでいけば、それなりに楽しい、そんなミステリーである。
面白いけれど、でもよくあるこの手の短編物でのひねりが足りない気がします。裏の裏がないのです。これは欲張りかもしれませんが、、。
でも、女刑事とその娘の活躍編というのは、あまりミステリーでもない気がするので次回も楽しみである。 . . . 本文を読む
寡作のホ・ジノと「シュリ」の両名優ががっぷり四つの演技戦が期待される作品です。私には苦手な時代ものですが、さすが格調が高く二人の競演をじっくり演出しています。
王と出身の科学者という身分的には似ても似つかない二人だが、肩書を取れば、遠く北極星を見るようなまなざしと志は全く同一の人間であった。そんな二人の友情と、王とはいえ植民地状態の国情を過去のお国柄に結び付けている。
演技的にはチェ・ミン . . . 本文を読む
NHK『透明なゆりかご』で少女時代の大竹しのぶを凌駕する演技を見せつけた注目の女優の映画初主演作だ。映画はドラマ的にもそれほど深刻ではなく、思春期の絶え間ない揺らぎを底に据え、素直で薄青色のまぶしい青春を描いている。
テーマとしては家族の営みと淡い恋愛なのだが、そこらを連ねるのは敢えてどこにでもいる婆にしてしまった桃井かおりの捨て身の演技だろう。さりげない演技を身上とする彼女にしては、今回は随分 . . . 本文を読む
中山の作品を読み続けているが、ホントに読者が望んでいるものを目の前に提供してくれる。
読めばわかるが、今までの登場人物のフル出場。主役が何人もいるただただ豪華さを感じる至福。検事室での不可能密室殺人。これ以上の面白さを味わえないのではと思えるほどの読者へのリップサービス。
もうもう完璧です。ミステリーとしても上出来。しびれるねえ、、。 . . . 本文を読む