うーん、ほんと久しぶりの純文学読書。だいたい、ここ10年ほど、ミステリーかサイエンスものしか読んでなかった吾輩。ふとしたことから今話題のイシグロ文学に挑戦。
昔、アイボリー監督の映画作品は見ており、感銘したことは覚えている。またイギリスの名優アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの重圧な演技は覚えていた。
で、なかなか純文学から遠のいていた吾輩であったが、、、。
これが結構読みやすい。しか . . . 本文を読む
80分、コント劇の積み重ね的展開で、想像以上に脚本が練られていて、期待以上の出来だ。とにかく面白い。喜劇は観客を笑わせなきゃならんので、本当はとても難しい。でも冒頭の寸劇で、早々とそれを切り抜ける。素晴らしいスタート。
後は、多彩な俳優陣との息もぴったりで、自然感満載。もう客席を乗せたら、彼らの劇はまっしぐら。行くところ、颯爽と前を向くのみ。
あの、時間を止めて、魔王が自分を犠牲にしようとする . . . 本文を読む
60分、まさに休むところなく殺陣が続く。まさに時代劇のオリンピックだ。セリフが一切ない。何人もの人が、人を殺し人に殺され、それが延々と続いてゆく。
主人公と言える人は5人ほどだと思われるのだが、同じ俳優が何回も殺され、そして(同じ衣装なので)何回も生き返り、そのうちストーリーがほとんど分からなくなってくるが(そもそもストーリーがあったのかどうか、、)、でも殺陣は止まらない。疾走する。ものすごいエ . . . 本文を読む
ずっと楽しく、大切に読んでいた小説だが、とうとう完結編だ。それで、最後は完全無欠のハッピーエンド。これほど、やってしまわれるとは、ある意味あっけない感もする。
最後は日本物ではなく、何とシェイクスピアもの。かなりの額を賭けたオークションも始まるし、新しい題材ではある。でも、ミステリー色がほとんどなくなったね。
とにかく、終わらせるために書かれた小説だという感も無きにしも非ず。まあ、いいか。
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今回は映画的題材でもあり繊細な演出だったなあ。家族のチカラ、歴史、生きてゆく希望、そして諦観、何より血縁、民族、国籍とは、といった切実な問いが冠婚葬祭の儀式の中で各自自問することにより掘り下げられ、その経過が圧倒的である。
作りごとでない自然な流れが実にいいです。まさにそこに私の家族の姿があるように錯覚してしまうほどだ。こういう一同が集まる血縁の繋がりは誰もが経験しているところ。その自然な展開が . . . 本文を読む
楽しみにしていた一人芝居(30分もの)11演劇を通しで観る。午後2時に見始めて終わったのは午後9時半。さすがの僕も疲れたよ。短編芝居を長時間観たことはあるけれど、一人芝居のこれは初めて。観劇前のBGMもよかった。相内唯史さん、ありがとう。
30分は結構きついだろうなあ。でも、自分のやりたいことは十分出来得る時間でもある。技量と個性が試される。
全部評価を書けないけれど、さすが本篇の9作はどれも . . . 本文を読む
スタイリッシュな映画センスで驚かせたフォードの2作目です。前作とはかなり印象が変わる映画です。
冒頭の年増巨体ヌードの芸術とやらには圧倒させられる。4,5分続くのだ。現代そのものを描いているんだろうなあ、しつこいぐらいです。美を追求しながら、醜悪なものにも容赦しないフォードはまさに完全芸術家でもあります。
話はこれも途中、一枚の絵として出現する復讐がテーマです。ブルジョアを嫌いながらも、実はそ . . . 本文を読む
この劇団は内容こそ違えど、いつも同じテーマで観客にぐいぐい迫って来る。観客はそれを十分知っており、劇団側ももちろんそれを知り過ぎている。そういう「あ・うん」の関係でこの劇は成り立っているのだと思う。
今回は、でも舞台はあるうらぶれた旅館でもなく、昭和の色濃い喫茶店でもなく、ましてや古びた商店街でもない。昔栄えたお化け屋敷の廃墟の跡に彷徨うお化けたちと、彼らと心を交わせることのできる者たち(すなわ . . . 本文を読む
昨年クリスマスイブにみた「ハッスルライフ」の実質的再演である。前作では血縁の祖母に対する憎しみまでを沸々と凝縮し、そしてビッグバンごとく爆発させたが、今回は多少島崎の心情の変化もあったのか、後半からラストになるにつれ、祖母への赦し、また自分自身への赦しが色濃く出ていた。
かなりの変化である。それが島崎の人間的成長でもあり、それをばねにして再出発を図ろうとする意図もあったのだと思う。そこがよく理解 . . . 本文を読む
いつも年度末に開催される劇です。今回も3話の短編集。すべて、人間の営みが確かに描かれていて、渋い。淡い。深い。すなわち人生そのものです。
洞察力が並大抵ではない。特に、3話の、人生を上から、真下から、斜めから見透したような鋭さにはっとする。
僕も、人生を十分語ることのできる年齢になり、この語られている人の移ろいゆくはかない歩み(それを人は人生という)がまるで自分を写しているがごとく思えてしまう . . . 本文を読む
3時間の演劇。原作はあの太宰治の遺作。脚本はケラリーノ。一度見たことある演劇で、どんな劇に神崎は処理するのだろう、興味津々であった。
1幕は原作に近い展開で別れたい女性たちに「グッドバイ」を言うため偽の妻を携えて訪ね歩くシーンが続く。それは意図したものではなくなっていくのだが、、。でもそれほど笑いも出ない。余裕がないのかなあ。
俳優陣はよくやっているんだが、こういう名作っぽい演劇は、壁があるよ . . . 本文を読む
7年ぶりの再演。ベランダの大道具は覚えてはいるが、意外と初めて観るような演劇のようで、自分の記憶力のなさに我ながら驚く。とはいえ、再演というイメージが全くなく、逆にみずみずしい空晴の演劇を堪能する。
この劇は先日観た「遠くの花火」の裏バージョンのような構成だなあと思う。冠婚葬祭で一同が集まってくるところも同じで、岡部は恐らく、二つでセットの劇を10周年に用意したのではなかろうか、と勝手に僕は思っ . . . 本文を読む
「空晴」10周年の新作である。いつものようにベランダが舞台。様々な人が現れ、勘違いから始まるコメディ、と全くワンパターンである。けれどもこのワンパターンが観客の心を強く鷲づかみするのを観客こそが知っている。
今回は冒頭で、懐かしき糸電話を持つ男登場。ところが、その父親らしき上瀧が強く嗚咽するシーンから始まる。誰かが死んだらしい。いつもとは違う。激しい。すぐ暗転する。
どうやら、ある人の10年祭 . . . 本文を読む
二人芝居だ。彼らはカエル。彼らの切実な日常が我々人間にもぐんぐん押し寄せてくる。その力量たるや、並大抵ではない。脚本が練られているのだろう、セリフの一つ一つにまったく無駄がない。まるで全編がポエムのようである。
彼らの生きるつらさ、悲しさ、喜びが手に取るように分かる。65分光り続ける彼らの芝居。手作りの凝縮した彼らの知性に乾杯。秀作です。
何といっても、このチラシが素晴らしい。そのまま文庫本カ . . . 本文を読む
いわゆる青春ロードムービーなんだ。この4人(特に3人)はそれほど高校生に見えないけれど、僕ら、既に彼らからすると化石に見える御仁からすると、今の高校生が不思議と見えて来る映画であります。彼らは、、
①それほど今の自分の置かれている場所を気にしない。
②自分のいわゆる生まれ出づる根本的な悩みを全面に出さない。(気にしない)
③どこかに逃げようとか、そんなユートピア志向はない。(いつか戻ろうと思 . . . 本文を読む