これは面白い! ある少女の自殺未遂から教師たち、母親がお互いを責めたり、そして自ら解決に向かうテーゼを発想するまでのいきさつがユニークで爽快だ。
舞台劇となっている「12人の怒れる男」に展開が似ているので、とても見ごたえがある。どんでん返しというわけでもないが、真相を発見するに至り、登場人物、そして観客が納得して劇を後にするという展開は舞台冥利に尽きる設定なのである。
劇場は新たにできた福島の . . . 本文を読む
大胆な着想と愛をはぐくむ強さに心地よい息吹を感じる。たまにこんなにストレートな愛を感じるのもいいではないか。日本の警察があんなに間抜けとも思えないが、でもあれがないと天に突き抜けられないから許す。前半の生きづらさといい、新海誠は現代人の目を持っている。それだけで十分だ。 . . . 本文を読む
話題作で、即劇場へ。メジャー映画館にかかってはいるが、小さな館内に押し込められ、ふむふむ映画通らしき風貌の人たちがわんさいる。
冒頭の夫の部屋でガンガン鳴らす音楽がめちゃセンスが悪い曲で、もう完全に私には暴挙の挑戦です。これじゃあ、あのインタビュアーどころか、映画ファンも席を立ちたくなる。その音楽暴力がなくなると、ふむふむなるほど面白い設定で、ミステリー的にはどうかとは思うが、謎解きが控えており . . . 本文を読む
久々に大きな劇場へ。そして題名からはうかがい知れぬ秀作劇を見る。
今、世界で使用されているロボットという名のもとになった劇である。チラシもコミカルで分かりやすい劇かなと思っていた。実際分かりやすかった。シンプルなテーマである。ロボットとは何か、すなわち自分とは何か、人間とは何か? が、見ていて自分の脳裏を駆け巡る。もうぐんぐん掘り下げてくるような哲学っぽい重鎮が目の前に垂れ下がる。
ストーリー . . . 本文を読む
関西では珍しい翻訳物コメディ。登場人物も多く、女優はみな美しく、衣装も凝っていて、見て楽しいまさに本格のイギリス演劇の粋をなしている。
これが休憩を挟んで3時間。贅沢な時間である。長丁場感はまったくないほど、話が次へ次へと追いかけてくる。こんな楽しい艶笑喜劇は日本ではあまり上演しなかった気もする。日本とイギリスでは男女間、特に夫婦の絆感はかなり温度差があるのだろうが、さらりと仕上げているので劇と . . . 本文を読む
高橋にしては平明な映画作りにびっくり。でもその平明さがゆえに、社会の底辺に棲む市井の人間たちの生き方が生々しくまぶしく浮かぶ。
板谷がバクダンと意気投合するまでの過程は秀逸。一瞬の夢。でも元バクダン魔はもはや機能せず、夢破れしのノスタルジー男に変貌していた。板谷は人間の原点に戻り、今まで一度も社会に逆らわなかったことを改め、本来すべきことを目指そうとするラストに突入。爽快である、。
一方、普通 . . . 本文を読む
舞台は左右に土間の設定。左側は1段、右側の方が2段で高さの違いがある。土間をつなぐものはないが、スニーカーやらすのこで渡ることができる。題名といい、もうこの演劇のテーマはすぐに見えてくる。
村社会での出来事の積み重ね。都会から帰ってきた次女(といっても随分大人)。長女と娘、入り婿でおとなしくさせられている夫、闖入青年の話である。
日常の積み重ねのような展開が続くが、どこの家庭でも起こっているこ . . . 本文を読む
加害者と被害者、その双方の両親がある教会の仲立ちで対峙する。せめぎあうそして心の安定へと経る過程をどっぷり四つ、4人の重厚な演技で見せつける室内劇。昔こんな映画をどこかで見たような記憶もあるが、、、。
途中これではどうしようもないなあと思いつつ、もつれ、崩れ、そして静謐が訪れる終盤になって急に、被害者の母親のつぶやき。「このままでは自分の息子の存在を忘れてしまいそう、あなたたちを赦す、あなたたち . . . 本文を読む
お気に入り、チャン・リュル作品です。映像で生きていることの意味を辛口の湿度で綴ってゆくという文体が好きで、またその感覚的な静謐感も好きです。
さて、本作は僕の知らない町、群山 をふと尋ねる二人の男女の話です。群山の案内図を前に何かしら漂流感を見せる二人のたたずまいがもう素敵です。そこからはもう映像でどんどん見せてくるタッチの応酬。
日本という統治国家だった時代にさかのぼろうとするリュルの鮮明な . . . 本文を読む
ターの発する言葉の翻訳が男言葉なのがまず気になったが、英語でもそういうニュアンスがあるのだろうか。この映画の違和感ははまずそこから始まる。
設定が今までの映画ではなかった華やかなクラシック界の裏の世界である。冒頭から高尚なクラシックのお話がターと司会者との公開討論で語られる。私も結構クラシック好きだが、それでもかなりの高度で語られているのが分かる。
それは通常の人はもういい加減にしてと言わんば . . . 本文を読む
あの『ミツバチのささやき』のビクトル・エリセの新作が31年ぶりに戻って来た。こんなことってあるだろうか、、。早速、映画館にお出ましだ。
冒頭の「悲しみの王」の館。一人の男が館主に出向かれて娘の捜索を頼まれるシーン。もうそれは緊密感もさることながら、出色のエリセ感覚ほとばしる絵巻物のよう。こんもシーンだけでこの映画を見た甲斐があるというもの。
この作品、31年ぶりということに意味があるようです。 . . . 本文を読む
文庫本とはいえ、500ページ近くになる長丁場。ありとあらゆる最新の密室トリックが現れる。そりゃあ面白いわけないと言ったら嘘になる。よく、これだけ考えられるなあと思われるほど、もう現代では密室物のネタ切れといわれているのが嘘のよう。読者と一緒に楽しませてくれる。
まあ、こうこういう種のものは楽しむことが一番だ。どんどん人が死んでゆくので、新犯人は限られてくるが、その方面についてはかなりあっけらかん . . . 本文を読む
交際中の彼女と食事前に見る映画ですね。画面には見てるだけで楽しいおいしそうなお菓子がどっさり出てきます。もうそれだけで幸せになれそうと思ってしまうデート映画です。
まず、この話の核になる女性の自転車爽快シーンから始まり、あれよという間に彼女の死が告げられる。残された4人が一堂集まってくる物語です。この出だしは面白いが、あとはスムーズに時は流れ、みんなハッピーになってゆくすこぶる現状満喫する映画で . . . 本文を読む
耽溺的な美しさをゾクゾクと見る喜び。男と女の生の美しさ。ロングショットからの冒頭の草の萌ゆる色合いの見事さ。モーツアルトのたゆとう死のような白眉の高まり。
人間は一つの到達点を見極めるとその先は光のみ、、。この作品とヴァルダの「幸福」とが、映像的に交互に私を錯綜させる。この時代は映像耽美主義全盛だった、、。55年前でこの映像の筆舌出来ぬ美しさはたとえようもなく、衝撃的である。 . . . 本文を読む
ソフォクレスの有名劇「オイディプス王」の断片を紡ぎながら、交互に現代若者の生態を描くという大胆な演劇であるが、通常の演劇からかなり遊離しているので、吾輩のようなお年寄りにはついていけず、かなり苦労しましたぞや。
2時間、38名もの役者が出演する。場面は10を超えるが、それでも若者たちの熱気は観客に十分伝わってくる。彼らの、彼らの言葉で考えた演劇。それは第三者からはわからぬ言うに言われる思いがある . . . 本文を読む