見ている間は結構面白い。エニグマという言葉もほとんど聞いたことがなく、知って驚き、またその結果に倍驚く。
戦争というのは暗号解読が一番の先手攻撃なんだということは知ってはいた。けれどね、解読できてもそれを察せられることを禁じ、うまく戦術に使っていくというやり方は、一個の生命の重さを考えるにどうも、もやもやすることしきり。
けれどその結果、1400万人の命を救い、終戦を2年早めたというテロップは . . . 本文を読む
宇宙物理学では超有名なホーキング博士の半生を辿った映画であるが、私のような年齢を重ねた人間からすると、実にほろ苦い、歳月を感じ取ってしまう秀作でもあります。
愛には始まりがあり、そして終わりもある。それを自覚しながらも生活という基盤から抜け出せずに虚構の生活をしている人も多いことだろう。
難病と秀でる物理学学者という側面を持ちながらも、所詮、人の営みというものは家族愛、夫婦愛という得体のしれな . . . 本文を読む
悲しい話である。むごい話である。文化大革命の10年は人々にとってはむしろ戦争ではなかったのか。歴史が人間に対して与える試練は一人一人の個人生活を牢獄にしてしまうこともある。
冒頭の荒くて動的な映像からは考えられないほど、夫が帰還してからのこの家族の営みは一転して緩やかに一つの家族の現実を描いてゆく。
どんなに夫が過去を思い起こさせようとしても、病状が進んでいる妻にはほとんど効果は表れない。一番 . . . 本文を読む
さすがシュレンドルフだ。映画的な映像を構築しているが、もともとは二人の密室劇なのだろう、8割方将軍部屋での交渉劇である。
冒頭にワルシャワの街が焼け野原になってしまう映像が挿入される。だいたい話の内容を分かっている観客はパリももしかしてこうなっていたのか、と熱いため息を漏らす。
もう狂人としか思いようのないヒットラーからパリ爆破計画を命ぜられる将軍の話である。そういう時でもよく理性が保たれてい . . . 本文を読む
いつもおなじみ、すれ違い、勘違いが巻き起こす人情劇、と言えばそれっきりだが、岡部の作品にはどこか昭和を想うノスタルジーが感じられます。向田邦子が昭和を思う気持ちにもダブってくる。それははっこきなべだったり、家族への並々ならぬ思いだったり、そして小道具の段ボール箱に至るまで満載であります。
特にみんながいつも思っているのにふと忘れている家族のつながりを強烈に感じてしまうのが岡部の人情劇の特徴である . . . 本文を読む
高校生活の部活を描いたものです。文系で演劇部、男子がいないというまるでアイドル映画のようですが、原作者が演劇人からも分かるように実に地味で真面目なさわやか青春ものであります。
僕が結構演劇を見ているのでこまば劇場が出てきたり思い入れもあるが、青春のひと時をきらりと一筋のものをみんなが同じく見ている、という経験はその時だけの宝物だ。歳月を過ぎても、みんなその時を共有しているからこそ自分の歩んできた . . . 本文を読む
参ったな、この映画、小西真奈美さんのこの役柄が、どうもいかん、見てもう数日になるのにまだ尾を引いている。鑑賞後は食欲もなくなるほどだった。この役柄に小西さんを同化してしまい、めずらしく自ら理性をなくす、、。
小西真奈美さんに初めて邂逅したのは小泉堯史の「阿弥陀堂だより(2002/日)」だった。確か難病の役で死を見据えていたような透明感のある演技ではっとした。美しい女優さんだった。
それ以降ほと . . . 本文を読む