選りすぐりの6つの短編集。どれも秀作だが、やはり日本推理作家協会賞短編部門を受賞した「都市伝説パズル」が秀逸。断然面白い。
最近、奇想天外な時空を超越したような作品が目立つ中、新本格を常道に基本的にミステリーを上程し、且つ新味十分の解決編が楽しめる作家は稀有だと思います。ただ法月は寡作なのでいつ出るか分からない本を待つことになる。新作の期待されるところであります。 . . . 本文を読む
お気に入りのホン・サンスの新作だ。何気なくただ映像だけを見ていると、普通の、夫の出張中に3人の友人を訪ねるロードムービーになってしまう。何か不思議な映画だけどこれがベルリンの監督賞?と思ってしまう人もいるに違いない。
けれど僕はたんとサンスの映画を見てきた。この何気ない会話劇に仕組まれたサンスの思惑とは何か!それはミステリー的であります。
第1話。男性にも見える女性と同居している先輩。女友達は . . . 本文を読む
何回も見てきた「トランス」。意外性とどんでん返し的展開が最後まで続く傑作劇であります。結構若い劇団で上演されることが多いが、なかなか深い人間劇であります。
2時間の劇でセリフ量が半端でなく、稽古に時間がかかるだろう、でもそれをこの3人は克服している。セリフを言いながら乗ってくるのが分かる。自分のセリフにしている証拠だ。頑張ったね。
次作も期待できる! . . . 本文を読む
樋口一葉の伝記ものだが、想像をはるかに超えて明るくキュート。じめじめしたところが全然ない。恋にも恵まれず、生活は貧しく、それでも書き続ける一葉。24歳でこの世を去るが、現代から考えるとホント大人ですね。
そんな一人の女性の生きざまをダイナミックな演出と粋のいい俳優陣で見せてくれる観客にとっても至福の時です。主役の一葉は断トツの出来だが、妹役の人が後々印象に残ります。
小さな狭い舞台も工夫してい . . . 本文を読む
この手の話は誰もがどこかで経験している題材で、観客への訴求感は強い。しかも松居の思い入れが全編に流れており、いい作品となった。
早くから成田がポロリと「俺は、、」と漏らすセリフから観客を???とさせる大胆な脚本がユニークだ。通常は後半で明かされることが多いのだが、そのためかなり面白い魅力的な展開となった。
だが、冒頭から30分ほどは6人の遊びが結構退屈で、松居の自分だけの世界に入ってしまってい . . . 本文を読む
相当裕福な、周囲に家一つない大富豪の敷地に建つ一軒家。老人が野菜を栽培している。自給自足しているようだ、、。
テーマは安楽死。この州では非合法らしいのだが、医者である夫は妻の望みを聞き入れて自殺に見せかけて行為を全うしようとしている。この日は、最後の晩餐に娘二人と友人がやってくる。家族を連れて、、。
ふつふつと静かな展開だが、感情の起伏が高まり活火山が2,3度噴火する。演技派で知られる俳優陣を . . . 本文を読む
やはり主人公のキャラの魅力と遺言動機の謎がこの本のすべてでしょう。文章は若いが読ませます。老人の私でもメチャ面白かったです。
しかし、肝心のこの奇想天外な動機の謎がどうも解せないですな。いろいろ書き込みしてるけどリアリティがなさ過ぎます。
まあ、でもトンデモ小説として、恐らく途中で読むのを辞める人は少ないでしょう、一気ものではないけれど、ミステリーとしては読んでいて楽しいので、売れてるんだろう . . . 本文を読む
この映画を見るのにかなり逡巡したのは事実です。私の茫洋とした人生の原点はまさにこの映画の時代にあるからだ。映像を介して目の前に映る人々。50数年の時を経て魔法のように目の前に再現される。そして私は今初めて当時の彼らの思いを知ることとなったのである。
この映画の佐々木幹朗さん、岩脇正人さん、三田誠広さん、岡龍二さんそして黒瀬準さんたちは当時のこの高校の2年先輩にあたる人たちである。私は . . . 本文を読む
洗練された舞台設定。3方からどこの方向からも十分楽しめる演出工夫。内容は裁判ものであるので、名作「12人の怒れる男」を多少意識した展開。なかなかの意欲作であります。
ただいろいろテーマを詰め込み過ぎたのか、私の脳裏が追従できません。しかし、若い劇団がこういうものに取り組んでいくということ、それだけで素晴らしいと思えました。
無罪・有罪の比率がどんどん変わっていき、最後は全員OO罪だなんて、「1 . . . 本文を読む
この劇団はこの2,3年常に見始めている注目劇団だ。理詰めで決め込んだ演劇ではなく、昔よく見た唐十郎の状況劇場めいたプロセスを踏んでいることが分かってきた。
軽妙なセリフのやり取りとともに突拍子もなく突然に演歌が流れたり、歌ったり、今回は洗濯機を舞台狭きとマシンガンのように移動させる。しかし演劇の基本的な作家的懊悩、構想を観客と共有したり、結構実は理知的でもあり、4,50年前の演劇のかけらを大事に . . . 本文を読む
出演者がマスクをしている。いわゆる現代、まさに今の映画である。2極化した日本の現実。もちろん、弱者の方が圧倒的に人数は多い。その弱者たちからの目線で現代の問題点を切り取った映画と言えようか、、。
冒頭は上級国民から夫を奪われる尾野。相手が詫びを入れないので、保険金受理さえ拒否する。一途、一徹。けれど生活のために夜はソフトサービスの風俗で働く。リアルでなかなか面白いシーンだ。
その風俗仲間のケイ . . . 本文を読む