休日初日。月曜日。人々が働き始める憂鬱な初日に僕は休日の初日になる。この生活をして云十年。いいこともあり悪いこともある。この日ばかりはいつものうらぶれたスーツよサヨウナラだ。
さて、最近は時間のローテーションで映画館に行っているが、なるべくマイナーなもの、いわゆる見たいものを優先的に見ようと思い始めている。
今日はまず心斎橋のシネマートで香港映画の「殺人犯」。なんとなく見た。韓国映画かなあと思っ . . . 本文を読む
題名は初々しいけれど、ある若すぎる男女の妊娠から結婚式を終え、出産を迎えるまでのドキュメンタリーである。【キェシロフスキ】はドキュメンタリーのドラマ化という難しい技術に迎え立つ。
どこまでがドキュメンタリーで、どこまでが演出なのか分からないほど、巧妙だ。俳優陣もカメラを全く意識していないのでそのまま見ればドラマだと思ってしまうのではないか。でもこれはドキュメンタリーであり、しかもドラマでもあるの . . . 本文を読む
自由な発想で描く、いわゆる地下鉄ストリートの土産物屋での一夜での出来事。そこから見えるあらゆる世俗の風景群。その何気ない人間の仕種は小さな一つ一つの人生を感じさせる。
いわば密室となった土産物屋での一晩の時間はある男女の蠢く一夜でもあったのだが、それは小さな窓から見えた一風景に過ぎないことを愛の終わっている男と女は知るのみ、、。
『デカローグ』の一話かと思えるほどの斬新さと自由さで人生の一部を . . . 本文を読む
まだ連帯のような政治を意識した思想映画でもある。ショットの一つ一つに【キェシロフスキ】の魔法がすでに見えている。
平穏とは無事平和、これこそが人間の一番の幸せだあると言っている。けれども人間は今そこにあるこの平穏さを幸せとも感じない。退屈だと思う人もいる。何もないということの溢れるような幸せを亡くして初めて人は幸福を想う。
政治性を追求しているテーマなので【キェシロフスキ】としてはまだ堅いが、 . . . 本文を読む
これが韓国映画であればもっと執拗に残酷に一人の人間を徹底的に掘り下げるんだろうけれど、見た目は似ていても香港映画、やはり娯楽的であると同時にほのかに明るさが見え隠れする。
じわじわ自分に降りかかる恐怖体験がそれほど深刻に見えないのは演出のせいか、映像のせいか、はたまたその他の出演者の連関の不足にあるのか明確ではないが、やはり香港のお国柄なんでしょう。そういえば香港版ホラーは珍しく感じる。
見て . . . 本文を読む
何故なんだろうなあ。それほど感動しないんです。いい映画とは思うけれど、僕の心にズキンと刺さって来るものがなかった、、。
で、何故なのかを考えます。
一時は一世を風靡し、しかし今は寄る年波で(57才なんだから仕方ないとも思うけれど)、ただ流れで毎日を場末の飲み屋でショーを開いてその日暮らしをしているシンガー。けれど彼にはまだしゃんとしたマネージャーがおり、行くところどころには友人たちも控えている。 . . . 本文を読む
うーむ、これはなかなかの前衛劇風。冒頭から小さなダンスから始まる。ダンスというより小さな動きといった方がいいだろうか、緩やかなダンスである。
出し物はあっと驚いたが、鏡花の「外科室」がメインイメージ。これは難しいぞ。というのも、文語調の朗読で始まるこの劇は一瞬で好きになった男と女が何年後かに手術室で告白し合う超純愛劇だからである。
だから、朗読に徹し、イメージで狭い劇場を乱舞する。でも、この文語 . . . 本文を読む
ゆったりと流れる雲、海、そして船。人類は過去小さな国ポルトガルから世界を目指して5大陸を探求する航海に出た。500年ほど前の大昔だ。ジェット機も、ガソリンも何もない人間、自らが船を漕いで航海していた時代だ。
コロンブスがポルトガル人であるかどうかは、実際は【オリヴェイラ】にとってはどうでもいいことなのだと思う。高齢のため明日をも知れない人間にとって、たゆやかな海の動き、流れる雲、それらを見つめる . . . 本文を読む
3月ごろから初めてのバラの苗に芽が出始め、てんやわんやのバラ栽培も3ヶ月。
書籍を結構買ったりしたり、テレビの趣味園芸も見たりしていたのに、バラの病気は他人事だと思っていた。
人の話を聞いたり、書物を読むとバラは人間が手をかけないと育たない代物らしい。そういう意味で育てがいがあるということなのですね。
まあ大変だからやってみようと思ったのも事実なのだから、いまさら泣き言はいえないが、うどんこ病と . . . 本文を読む
海も見えないのにシーサイドモーテルとはいかに、と最初から人を馬鹿にしたコメディですが、この映画、ホテルそのものが主役なのにフロントも一切出てきません。
4つの部屋の出来事をコメディにしてあるんですが、結局それぞれ関連するところもあまりなく、この手の映画にしてはちょっと手抜きかと。
まあ一番しゃんとしているのが、ギャンブルでヤクザから逃げて追いつめられる【山田孝之】【玉山鉄二】【成海璃子】チーム . . . 本文を読む
「世の中には二種類の人がいる。一つは人生を自分で選べる人。もう一つは選べない人。」若い時に人生を自分で選べる人って何人いるだろうか。恐らく選んだと思っていても実は選んではいないのだ、、。
そういえば最近人生論っていうのもあまり売れていない気がする。人生いかに生きるか、ということ自体私のような年になっても気恥ずかしく無意味だと思われる。であるからにして、若い人が人生そのものを考えるときもあまりない . . . 本文を読む
この映画、単なるブラックジャック医師の孤高性を表現してもそれなりの評価しか出ない。そこで、ある看護師の日記を通して、心を伝える告白として愛を描くことで広がりのあるいい映画となっている。
【夏川結衣】がいい。白衣の天使たる看護師の仕事に嫌気をさして、もうどうしようもない日常だったのが、ある医師の登場で医学の本質を知りそしてその医師に好意を持ち始める。あれほど厭だった手術も医師の出現で全く違ったもの . . . 本文を読む
最近の北野映画の不調ぶりに見る気もそがれたが、今回は心機一転という触れ込み。さて、どうか、、。
冒頭からの黒を基調とした様式美は多少戻ったかなと思わせる出だし。でもいつの間にか掛け声だけのセリフとホラーまがいの残虐シーンのオンパレード。映像はヤクザの生業をなぞっていく。
しかし、そのうち映像は冒頭のしゃきっとしたチカラを失ったかのようにただ流れていくかのようだ。そして尋常ならぬ出演者の多さに相 . . . 本文を読む
久々のDVD。なんとなく見始めたが、やはり脚本がうまい。【山田洋次】の落語芸だね。
まあ派遣の女の子が玉の輿に乗るようなシンデレラストーリーなのだが、【西田敏行】の胃カメラ検査の爆笑ものアイデア、そしてそれをさらに発展させた披露宴のスピーチ場面。本当に面白いわ。
そのスピーチ場面でも、ある社員をネタに笑わせて座布団一枚の上司に人間的な非情さを後で観客に考えさせたり、【山田洋次】の落語芸はとても . . . 本文を読む
この、最初から最後まで息もつかせず、僕の脳裏を一点に捉えてしまった衝撃作の登場は見てしばらくしてもそのどよめきが途切れることはない。
その、脳裏の一点とは悪意という概念である。原作を読んだときとても読後感が悪く、これほど悪意に満ちた小説も稀有だと思った。こんな小説がベストセラーというのももう日本人が完全に病んでいるとさえ思ったものだ。
しかし、映画化されたこの作品は、その悪意というものを材料 . . . 本文を読む