セントの映画・小演劇 150本

観賞数 2024年 映画 93本、 演劇 71本

The NET 網に囚われた男 (2016/韓国)(キム・ギドク) 80点

2017-02-27 20:55:54 | 映画遍歴
キム・ギドク、最近の不振ぶりをアッと見直す原点に戻ったような秀作だ。不振って、僕が勝手にそう思っているだけなんだが、2011年の「アリラン」辺りからちょっとついていけなかった。でもそんなこと彼は何とも思っていないのであろうが。 映画は、初期の作品に戻ったように(僕はこの頃が好き)憑かれたようにこの国のことを思う。思っている。それでいいのだ。この北、南朝鮮というのは世界でただ一つ、大国の政治的思惑 . . . 本文を読む
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空の驛舎 「どこかの通りを突っ走って」(作/深津篤史 演出/中村賢司)(於・ウイングフィールド) 80点

2017-02-26 18:32:37 | 演劇遍歴
深津篤史のホンは暗くて難解という定評があり、悩んだが、空の驛舎の劇でもあり敢えて観劇す。この劇団の演出力、俳優の力量が並大抵でなく、見ずにはいられないのだ。気づいたら背もたれのない席で90分過ごす。 全編、死の香りが漂っています。自殺した一周忌に集まる男女たち。そこに阪神大震災で別居中の女房をなくした男も酔いつぶれて寝ている。そしてレズの女たちの血をたぎる静かな諍い。 全編、大阪北港のヘドロ混 . . . 本文を読む
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あしたかぜ『手のひらをたいように』(作 つぼさかまりこ 演出 あしたかぜ)(於・阿倍野長屋) 80点

2017-02-25 20:48:40 | 演劇遍歴
作家の内面をそのまま吐露するというのは実に勇気が要ることだろうと思う。しかも、書きたいけれど書けない、その苦悩が毎日を苦しめるまさに日々地獄の話である。そんな私小説風の話をつぼさかが熱演する。 彼女の作品は何かを作るということ、それを表現するということ、その苦しみ・喜びを謳ったものが多い。今回もその流れではあるが、いつも受け側だった江戸ハレが編集者としての彼の人生を深くえぐる陰影のある演技を力演 . . . 本文を読む
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イカスケ『アンサンブルトルネード』(作・演出 青木道弘)(於・independent 1st) 80点

2017-02-25 20:14:24 | 演劇遍歴
あの狭い小さなindependent 1stが客席両面型に変身。となると、中央の狭い長方形のスペースがこの舞台となる。そして何と総勢14名の面々が、踊り狂う、、。 冒頭、シンデレラの姉、白雪姫の狩人、眠れる森の美女の魔法使い、ブレーメンの音楽隊の盗賊、そして桃太郎の犬の飼い主などが群れを成す。彼らは、童話でも超脇役、いわゆる演劇のアンサンブル的存在である。 彼らが主役を為すのかなあと思ったが、 . . . 本文を読む
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マリアンヌ (2016/米)(ロバート・ゼメキス) 75点

2017-02-20 17:43:12 | 映画遍歴
どこから見ても安定した映画作り。絵になる二人の俳優。レジスタンスで敵か味方か分かち合うストーリー。時は戦争末期。監督はゼメキス。うーん、TOHOのいい席で見るメロドラマの代表作。昨日見た「たかが世界の終わり」とは全く対照的な映画。それだけ。 . . . 本文を読む
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たかが世界の終わり (2016/カナダ=仏)(グザヴィエ・ドラン) 80点

2017-02-19 18:25:39 | 映画遍歴
ドランの映画は初めてです。なるほどこういう感覚なんだ。作品自体は演劇っぽい展開で、それほど場面が変わるわけではない。年代もちょっと前のエイズ症候群の暗さがあります。 西洋に、「放蕩息子の帰還」というテーマがありますよね。このルイをして、放蕩息子と決めつけるには少々無粋すぎますが、実際、作家で成功したとはいえ、世間にはばかる死病を抱えて帰還した弟をどう扱えばいいのか悩む兄にとっては、家族を守ること . . . 本文を読む
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sputnik.『星降る地中に〈竜〉は棲まう』(作/土屋甫 演出/鈴木径一郎)(於・カェスロー大阪) 80点

2017-02-12 19:51:19 | 演劇遍歴
sputnik.2回目の観劇である。前回も現代の矛盾を通して生きることの困難さを繊細に見つめた作品だったが、今回は何と研ぎ澄まされた感覚的なポエムとでもいうべき独特の世界を作り上げている。 人間世界にとって不都合だからという力学で、地中の奥深くに閉じ込められた竜と人間との対話寓話であります。永く時間をかけて相手をそれぞれ理解し合うことで、雪解けのときはやってくる。夏でも氷のように心を閉ざした竜は . . . 本文を読む
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劇団不労社『生きてんだか死んでんだか』(作・演出 西田悠哉)(於・ウィングフィールド) 80点

2017-02-11 20:14:40 | 演劇遍歴
何とも自由で、すこぶる面白くハチャメチャなコメディ劇だ。作りは学生劇らしい雰囲気を残しつつも、その実、人間の見方が実に批判的で内省的であるのが、このお化け屋敷に集まったのが自殺サークルという名の面々であることからも明らかである。 90分ほとんど爆笑気味の劇なのだが、実はどこかで醒めた自分を見つめる複眼も持っているのである。あの臭いのする家。3日ほど住めば気づかなくなるが、初めての人には強烈に臭う . . . 本文を読む
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男と女 (2016/韓国)(イ・ユンギ) 75点

2017-02-07 21:27:35 | 映画遍歴
この映画、カンヌグランプリ「男と女」をかなり意識しております。まず、男と女にそれぞれ子供がおり、寄宿舎で出会うところがまず一致している。 原版はそれぞれバツイチだったのが、今回はそれぞれ相方がいる。すなわち完全不倫ものであることがこの映画の挑戦ですよね。 面白いシーンもあります。子供たちの宿舎に二人で行くのですが、車を凍湖のほとりに止め、なぜか男は湖を歩いていこうとします。いつ氷が割れるか分か . . . 本文を読む
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能×現代演劇「心は清経」「夢みる女篇 作/岡部尚子」 「さまよう男篇 作/林慎一郎」 ( 演出/林慎一郎)(於・山本能楽堂) 80点

2017-02-06 21:21:36 | 演劇遍歴
能楽を、多少の興味はあったけれど、劇とのコラボで多少なりとも初めて見る。そりゃあ、想像していたより全然素晴らしい。 楽としての笛の音の美しさ。幽玄。そしてその能楽の中心となす舞とともに凛とした衣装のすばらしさ。豪華である。今までなぜ見なかったのか。 まずは、女編。岡部作である。夢見る女である。本当に夢を見る。いや、否が応でも夢を見る妻の話である。小池さんの例の唄から始まり、能の舞台に小池さんが . . . 本文を読む
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マグニフィセント・セブン (2016/米)(アントワン・フークア) 75点

2017-02-04 09:22:59 | 映画遍歴
この豪華な俳優陣。そしてあの「7人の侍」の再来。となれば、見ないわけにはいかんでしょう。けれど、劇場は上映2週にして早くもTOHOで一番狭いスクリーンに移設され、その結果、観客は身動きのつかないほぼ満席状態で見ることになる。 良くも悪くも今や懐かしき西部劇の香りがむんむんする至極の世界である。ノスタルジーである。ここに入ると世間のこと、家族のこと、すべて忘れ切る昔よくあった百貨店の屋上のビックリ . . . 本文を読む
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Dの殺人事件、まことに恐ろしきは(2016 KADOKAWA)(歌野 晶午 著) 75点

2017-02-02 22:05:59 | 読書遍歴
歌野晶午×江戸川乱歩という、ミステリー好きなら読まずにはいられない短編集です。なるほど、乱歩の題材を現代に置き替えるとこういう話になりますね。よく練られています。 特に歌野氏お得意の現代通が文章といい、会話といいこよなく出現するので、小気味いい展開と相まって楽しく読める。 何といっても全編とてもよく書けている。いわゆる一気本である。会話が面白いんだよね。今の若い人たちの生態をよく捉 . . . 本文を読む
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スノーデン (2016/米=仏=独)(オリヴァー・ストーン) 70点

2017-02-02 18:22:52 | 映画遍歴
ジョセフ・ゴードン・レヴィットは演技派でもあり、なかなかいつも魅せるものを持っているので、彼の映画は見ることにしている。でも、最近大監督の映画には出てるんだが、落ちて来てるかなあ。「リンカーン」辺りから顕著です。 今回もほとんど彼の独り舞台なんだが、踏ん張れなかった感がする。でもだいたいストーン監督が絶賛するほど、スノーデンという男が時代を賑わせたヒーローだとは思えず、映画自体もストーンのそこは . . . 本文を読む
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