2年ぶりの公演です。とにかくこの劇団はスタイリッシュ、斬新、カッコよさ抜群。あまり内容を掘り下げる演劇でもないが、見ているだけでほれぼれさせる演劇集団で、最高だ。
客演の山田蟲男のドスのきいたというか、おどろおどろしいセリフの言い回しがキーとなり、この演劇を引っ張る。でもこの演劇、セリフそのものは少ないんだよね。ほとんどが画面の字幕で伝わられるので、通常の演劇との相違感がある。観客は見て驚き見て . . . 本文を読む
秀作の名高い東野の短編集、と思いきや、一個の長編小説と考えてもいいと思う。それぞれの短編が相互につながり、ラストで一つの解決編を呈するという複雑な仕組みながら、それぞれの編に全く無駄がなく、ひょっとして東野のベストに近い小説ではないか、と思われるほどの出来である。
やはり魅力的なのは、加賀刑事と人形町という東京の下町との関わり合いである。彼は大阪の出身であるのに、随分東京の下町に愛情が深い。とい . . . 本文を読む
ホント久々すぎるほど乙一を読む。かなり前、乙一の作品は全部読みふけった。それほど気に入った。僕の人生で、彼の書物がいつも僕のそばにある、そういう作家だと思っていた。
いつごろかなあ、彼が本を書かなくなって、こちらも追うのをやめ、ほとんど忘れていた。本だけは買いそろえていた。そして最近この本を見つけた、、。
5編の短編集。幽霊が常に出ている。なんか、でも乙一らしいところはあれど、でもやはり違う。 . . . 本文を読む
ドラマとしても、この上ない緊張感に満ちたストーリー。設定も宗教に挑戦的でとても面白い。これがイランの現状、すなわちイスラムの世界。この不幸は神の与えたもうなのか?
冒頭からラストまでずっと食い入るように画面を見る。そんな時間の最近珍しいことよ。誰もが悪くないのにこの不条理さだけは突出して暗黒を包む。最後まで見ても明るさは見えぬ。けれど、ほうき星のような一瞬の輝きは見える。
太宰治「右大臣実朝」 . . . 本文を読む
異常な設定から始まる人類生存を託す未来はいかに、、
でも最近はロシアによる侵略戦争が実際まだ続いており、この閉塞感のある一空間はまるで現代社会の生き写しのようにも思えるし、なかなか鋭いテーマを追求した秀作劇だと思います。
俳優陣も多数で、しっかりセリフも勉強されており、小さな劇場ではあったが、臨場感にあふれ、忘れることのできない演劇になったと思う。この劇団、次作も期待します。 . . . 本文を読む
本格というほどではないけど、ミステリーとしてはとても人間感のある彩にあふれてて、ページを繰る手が早くなる秀作です。
17歳の少女の周囲の環境が少女の自意識の成長によりきめ細かく描かれてるところが素晴らしいです。ミステリー部分ももちろん面白いが、彼女の人生観をきっちり描く手法はミステリーでは珍しいですね。
もちろん、主人公である私立探偵のみどりも最高です。相棒の浅川も魅力的で思い切り一気読みでし . . . 本文を読む
文章が読みやすく、また子供たちが主人公のミステリーなので、さわやかで前半は俄然読後感がよい。子供たちの成長が記されミステリーというより通常の小説を読んでいる感が続く。
ミステリーといっても、まず本格物ではない。読者に伏線をあまり提供しておらず、何気なくぽつんと新事実が浮き彫りになる。これってなあ、推理する楽しみはほとんどなし。一応意外な犯人を浮かび上がらせるが、それは作者側のリードにおいてであり . . . 本文を読む
久々の一人芝居です。100分。いつも思うが、セリフ覚えはどうやってんだろう、、。僕だったら2,3分でも無理です。
出し物は題名から思いもつかない夫婦愛で有名な智恵子抄の裏話。この作者、野田はかなり野心家で不遜です。みんなが思っている夫婦愛を逆なでにしてしまいます。あの福島の美しい安達太良山も哀しい険しい山に変貌してしまいます。
後半になると、千恵子から光太郎への強い恨みつらみに変わっていきます . . . 本文を読む
お気に入りPTAの新作だ。何と4,50年前の時代にムーブした青春グラフィティ。わんさか出て来る当時の、時代及び業界俳優ネタとベタに徹したPTAの才能にほほえまされるも、やはりアメリカ風土に順応していない吾輩の乗り遅れは最後まで続く、、。
いろんな俳優をギャグるシーンが多い。バーブラ・ストレイサンドなんて、何回も言い回しさせアメリカではさぞや爆笑が続くところなんだが、日本では全くの反響なしでした。 . . . 本文を読む
いやあ、文庫本とはいえ630ページもの超長編もの。ふつうこういうものは避けるのであるが、最近では珍しい本格ミステリー&探偵ものと聞けば読まずにはいられない。
ところが、読めども読めども160ページになってやっと殺人事件が始まるというスローテンポの展開。叙述自体はしっかりと登場人物を書き分けていて退屈はしないが、それにしてもミステリーで事件が発生しないことにはこちとら俄然読む気がなくなってくる。と . . . 本文を読む
ホン・サンスの映画って、普通の映画のように「さあ今から映画が始まるよ」といったところが全然ない。あたかもそこらの小説を読むように自然に入り、そしてしかしラストで読者は思いがけない発見をして何それ?で終わるのだ。
本作も全くそう。長くアメリカに移住していた元女優が突然韓国に帰ってくる。妹はなぜと疑問を抱えながら何気なく財産状況などを聞くが女はそんなのないとうそぶく。しかし女は昔住んでいた家を訪ねた . . . 本文を読む
ニールサイモンと言えば、わが青春時代に映画化されたものも多いブロードウェイの名脚本家であります。たまにはメジャーの演劇をも、また懐かしい時代に触れたいなあとも思い鑑賞しました。しかもこの演劇、好きな役者・村田雄浩&篠田三郎が出演していて、何とも興味津々だ。
話は中年サラリーマンの挫折からくるニューヨークの生活が決して楽園でなく、むしろ牢獄に思えてくるという現代的な意味を秘めている。しかし葛藤を経 . . . 本文を読む
お気に入り監督の話題作である。なるほど全体を13章に分けており、小説を読んでいるかのようでもあるが、1人の女性の心象を表現するにはメリハリがあって、よろしい。
男と女の生き方にはさまざまあれど、この映画のように2つの恋愛を見てると、随分有り体で分かりやすい。この作品は女性から見た人生への探求となっているので、男性への関わり合い、人間のそもそも自由とは何か、愛する人からも束縛されたくはない、などの . . . 本文を読む
5編の短編集。一応時系列的にはつながっている。金沢の刑務所での囚人と刑務官の話である。人々の生活空間からぽつんと疎外されているこの空間に人間的なまなざしを深く感じることになる。
まず視点がいい。刑務官、囚人たちの真実の心の慟哭、広がりを感じ取り、そういう世界とは関係ないと思っていた自分がはっとさせられる素晴らしい小説であった。ミステリーとしても秀逸だ。
なかでも「ガラ受け」は不覚にも涙を流して . . . 本文を読む
あまり読むことのない出版社の裏話満載、というほどでもないが、出版社の実名が出てきたりするので頑張ってるなあという期待感もある。
そして盗作疑惑を捜査するのが新人作家という設定だが、編集者からこき使われたり、それなりの松岡の当時の思いが伝わってきたりして、それは面白い。作家と言えども、売れない間は編集者からぞんざいな扱いをされるのかと興味を引いた。
さて、盗作事件の真相だが、これはそれほど面白く . . . 本文を読む