お気に入り辻堂作品だ。今回は書下ろしだそうで、しかも文庫本。あまり期待せず読んでいたら、やはり辻堂独特のストーリー作り。清新な若い人たちの行動に共鳴す。
何となくそうかなと思っていたラストに突進してゆくが、この暖かい心地よさはなんと表現したらいいだろう、素晴らしいのひとことです。
ミステリー的には、ちょっと無理かなと思うところはあれど、それを許せるほど素敵な恋愛ストーリーです。秀作。 . . . 本文を読む
またまた新境地へと向かう石持 浅海。時折キモイ描写があるので、中断しようと何度も思ったが、最後まで一気読みでした。こういう材料はどこから仕入れるんでしょうな。ますます石持から眼を放せない。
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発明王としての偉人ものエジソンしか知らず、いわゆる子供時に読んだ伝記ものの枠を超えない私のつたない知識であるが、この映画で全く知らない彼のブラック面を見て唖然とする。
そもそも主人公ベネディクト・カンバーバッチが悪役という設定。対して主人公と双極的に配置されている マイケル・シャノンがまともな経済人設定だったが、いつカンバーバッチが盛り返すのか、そういう展開になるはずだと信じて疑わなか . . . 本文を読む
1971年、いわゆる雪解け後の統制下での文学者の6日間を切り取ったまさに抒情的・文学的な作品であります。彼の交流の一部始終を緻密に撮っていくわけだが、いかにもドラマ性がなさすぎるので、観客は忍耐を強いられる。
こういう話は戦前の日本の作家にも顕著であり、似たようにも思うが、この作品では怒涛ともいえる登場人物の多さ・会話を通してそれらがすべて網羅される仕組みとなっている。
見終わった後では、1篇 . . . 本文を読む
老境のドヌーブに心境移入する走馬灯のような映画です。この手の映画では是枝の「真実」が先行しているが、作品的には是枝の方が断然格上だと認識。でも何より、ドヌーブと実娘 キアラ・マストロヤンニという取り合わせが興味深く、
キアラの顔はあの名優マルチェロ・マストロヤンニにまさにそっくり。ずいぶん昔から映画を見てきた吾輩としてはこの3人が映像の中に飛び交っていたような嬉しい映画空間を奏でていた . . . 本文を読む
映画作家としての貫禄を十分見せつけたイ・チャンドンのみずみずしく才気あふれる作品となった。
冒頭の路頭の行き交う人の言葉に日本語が介在する。春樹へのオマージュ。
そこで邂逅した女がパントマイムが好きだという。
女とのセックスで男は部屋の壁を眺めたり、窓から外の風景を見て虚ろだ。繰り返し描かれる自涜状態の方が彼にとっては本当のセックスのようだ。
女が幼少期に井戸に閉じ込められ男が救出した話。 . . . 本文を読む
それほど好みではないが、来るといつも見てしまうダルデンヌ作品。その素朴で、リアルな作風が画面を疾走する。
今回は、イスラム原理主義に感化された子供を追う。宗教だけは、何とも人類史上的にも難しい範疇に入る想念だろう。そこに踏み込み、論議することを許さない何かがあります。
ダルデンヌもそんなことは分かってはいるので、ある少年の意識を素直に正直に紡いでゆく、、。そんな時間の動きをじっくりみんなで見ま . . . 本文を読む
子供の心のみをただまっすぐに、まっしぐらにじっと見続ける。この視点は大人から見たものなのか、それとも純粋に子供自身から湧き出たものなのか、懊悩しつつ葛藤しながら見ました。
この映画では、ベルイマンが言うような「神は存在しない」ではなく、「神は存在するが何もしてくれない」のだと思う。あのきつい一発が醜い大人になり過ぎた僕の胸倉にきついド一発となった。 . . . 本文を読む
文庫本で430P。結構長い。半分ほど読んだけどなかなか話が展開しない。何だろうと思い、途中でやめようかとも思ったが、なんせ2020年本格ミステリー3位の本。見どころはあるんだろうと、我慢して読み始める。
まあ、ところどころ面白い部分はあれど、本格と言っておきながら、データを伏線として読者に全面的に展開しているのでもなく、登場人物の裏を解き明かしてゆくのだが、なんか、都合がよすぎないかい?
しか . . . 本文を読む
アーロン・エッカート以外はあまり知られていない俳優陣。いわゆるB級映画布陣だが、そこは意外とB級ならではの自由奔放な展開を用意し、なかなか野心的な作品となった。
しかし、何故肝心な時に警察が来ないのか、とかご都合主義がはびこったり、ラストの感動シーンでさえ、あの女の子が瀕死のはずなのに十分元気だとかのように、いい加減な作りでさえある。
でもそういうのも大びろにハグしちゃうのもB級映画の楽しみで . . . 本文を読む
ジャームッシュっとは折り合いが悪いんだよね。でも過去4作見てて平均4.25だったら、評価的には悪くない。どころか、すこぶるいい。けれど今回は苦手なゾンビものと来た。迷ったけれど、見て正解。よかった。
前作「パターソン」に感心したんだ。まるで天国での営みのような淡い色合いの映画で、寄り添えた。本作も、基本的にはその線で撮ってると思う。
地球の自転軸がおかしくなりかけたことから、地球の荒廃・人類の . . . 本文を読む
うまくつけた題名。お気に入り俳優イーサン・ホーク。彼とは「いまを生きる」からずっと映画で一緒に過ごしてきた感がする。少年だった彼も今や立派な大人。でもまだやんちゃな感じが漂ういい俳優だ。
そんな彼は今回、年だけは取っていても青年のまま現役を離れたシンガーを演じる。気づけば子だくさん、孫まで生まれてしまうオジン歌手である。イーサン・ホークだから嫌味はない。
外人って、40代になっても子供のままな . . . 本文を読む
なかなか導入部から面白い。クロイツパイントナーは映画の仕組みを十分分かってる。そんなことを考えながら、どんどんミステリー仕立ての展開・幼馴染の恋人との恋愛を絡ませ、終局に持って行く技は褒められる。
完全黙秘の被告から全くデータを与えられず、自分一人で謎解きをして行く過程が意外と楽しい。題名・題材から想像できないエンタメ要素もある。この辺りはこの監督、映画に長けた人だ。
そして徐々に、そしてスピ . . . 本文を読む
3章まではミステリー的にもどこが面白いのか、ともう中断しようか、とさえ思い始めていた。これがその年の本格ミステリーNO1か、と訝っていた。
ところが、4章を読み始めると、、これこそが相沢の策略にはまっていることに気づき始める。あとは、もう一気。
とはいえ、読者にも忍耐力が要るということなんですね。いやあ、メチャ面白いけれども、これはかなりの大設定ミステリーですわい。まあ、本格と言ってもいいかな . . . 本文を読む
相変わらず面白い。署長から刑事部長になってどうなんだろうと思うも、少々空気を読む部分もあったが、そのうちいつもの竜崎伸也を通す。
今回の事件的テーマは公安だ。深くはないが、さらりと切り取っている。妻の自動車教習場を通しての警察OBの登場シーンなど興味深い。まだまだ続くと思われるので次回作がもう今から楽しみだ。 . . . 本文を読む