昔見た「シベールの日曜日」を思い起こさせる設定にこの映画の深さを知る。痛い映画ではあるが、人生における旅のはかなさ、よろこび、永遠というものを感じ取れる秀作であります。
とにかく二人であのトラックで旅に出てからがすごくいいんだよね。もう家族なんて、雑音程度にしか見えなくなってくる。このままいつまでも二人きりであの旅を続けることができればどんなに至福であることか、見ている僕ももう完全に映像の二人の . . . 本文を読む
いつものごとく何の前知識もなく(というかガイ・リッチー作品ということだけで見た)拝見。そのうち、あのテレビシリーズものであることを了解。でも、ソロはそうでもないけど、イリヤが全く印象が違う。そのため別作品のような感覚で見られたが、、。
冒頭のベルリンシーンは秀逸。リッチーはこのシーンをやり遂げて安心しちゃったのだろうか、あとはジワジワもたつき感が沸き起こる。でも考えたら、この映画、1960年代へ . . . 本文を読む
狭い空間に50人ほどがひしめき合っている。小さな劇場。40センチほどの座席につくねんと舞台を見ている。肩はもちろん隣の人とぶつかっている。
でもいいんだよなあ。若い芸人志望者の2人が夢を求めてあくせく道をかけずり登る。そしてふとしたことから相棒は夢破れ、病院に、、。
ただのギャグコメディかなと思っていたら、後半から十分人生を感じる劇となっていました。小道具ば何もない舞台で、ここまでそれなりに演 . . . 本文を読む
題名からは窺い知れない強烈なシリアス熱闘劇。とでも言えそうな全く観客を退屈させない見事な劇でした。
通常の何気ない普通の新聞屋さんに言いがかりをつける無差別テロ女が入り込む。そこから七転八倒、市井の人間の営みに潜みうごめく心が爆発してゆく。その過程も立派だし、とにかくぐいぐい引き込まれる。面白い。最後まで演劇でここまで一気に集中して見られる作品は稀有であろう。
とにかくとても楽しめたね。役者さ . . . 本文を読む
言わずと知れた怪談コメディ。総勢12名。狙いは分かるけどね、ちょっと軽すぎた感もないではない。
ホロリとさせる部分があるはずなのにそれほど乗れなかった。これは僕自身の心境の問題でもあるかもしれないが、でも舞台を見たらころっと現実を変えてくれるそんな強いひと時でありたいです。
12人はそれぞれ楽しいね。みんな若くかっこいいし、美人も多い。見ているだけでだんだん楽しくなってくる。若いってやはりいい . . . 本文を読む
絶賛された今までの作品群からは、ふらりと糸の切れた凧のように空を泳ぐかのような作品である。一挙、出発地点に戻ったかのような初動映画のような色合いがある。
見終わってから思うと、3人のそれぞれの話である。愛妻を通り魔に殺された男。姑と夫とともに明日のない生活を背負わされているどこにでもいそうな主婦。そして学生時代から好きになってしまった男を今でも忘れられないゲイの弁護士。
そこにあるのは現代の喧 . . . 本文を読む
映像が素晴らしい。ため息が出るほどだ。特に舞台が日本になると水を得た魚のごとくクラシック風音楽と混合し独特の小栗映画を供出した。
けれどこの作品の主人公たるフジタが見えない。彼の内面に入らない。世界に名だたる芸術家なのに芸術の悩みでさえ全くない。これはこの手の映画にしては珍しい。
というか、見方を変えれば変な映画でさえある。伝記映画にしているのに彼そのものを全く描かないのだ。これは映画として稀 . . . 本文を読む
これは痛快なミステリー。これほど叙述を盛り込んだミステリーがあったか。確かに労作。これだけ大変な小説はふつうよほどミステリーが好きでなければ手掛けないものだ。
既成作家がこれに挑戦したことが見事であり、賞賛に値する。偉い。深水もミステリーオタクだったんだね。それが分かって嬉しい。そのうちこの気持ちが感動に至る。
最初から一気読みの語り口でこれは楽しい。結局15通りの犯人探しだったが、途中から少 . . . 本文を読む
小演劇にしては2週間ほどの公演。これは実際稀有である。それだけ自信があるのだろう、自然と見る方にも期待が高まる。
劇場は広いが何にもないただの空間のようにも思える。白い紙が床に全面ランダムに敷いてある。何なんだろう。題名からすると船になるらしいから海のようにも思える。病院のシーツを干してあるような光景も見える。
役者の一部は前衛劇のような風采である。顔半分が白く塗られている。ちょっとキモイ感も . . . 本文を読む
豪華絢爛、美術も俳優陣もそして脚本、演出も見事。久しぶりにじっくり映画本来の娯楽性に浸る。デザインというものから真っ向から離れすぎている僕でも、実に鮮やかなる衣装に目を見張る。
ハン・ソッキュとコ・スの新旧対決の演技合戦も興味津々だが、そこに割り込んでくる悲王ユ・ヨンソクの個性たっぷりの容貌も強烈だ。何から何まで映画という娯楽性を追求してくる韓国映画人のバイタリティに乾杯。
観客は映画館を出る . . . 本文を読む
原作はもう随分前に読んだが、伊坂に失礼だが、ほとんど忘れている。面白かっただけは鮮烈に覚えている、なんて言うのも気恥ずかしい。監督が瀧本であることを確認し、いざ映画館へ。これは拾い物。映画料金決して高くはないぜ。
原作で高評価イメージだった菜々緒の役どころが、多少それほどでもなかったのが少々残念だが、例の殺し屋連中、すなわち自殺屋鯨、ナイフ師蝉、押し屋が映像でも魅力たっぷりで、これは久しぶりに( . . . 本文を読む
総勢なんと20人近い出演者。舞台は豪華。字幕映像も重要な間合いで出没する。優れた音楽。なかなか秀逸な舞台設定。話は子供時代から大人になる過程を事件らしき大胆な切り口で描いてゆく。上演時間は2時間15分。
立派です。よく練習出来ているし、難癖をつけるところないです。俳優みんな若くかわいいし、いい感じ。
面白い題材なんだが、うら若き女性が多いせいか、少々少女漫画風展開になってゆく。僕は結構好んで入 . . . 本文を読む
雰囲気は悪くないんだけどね。出だしのあの4,5分間の消失、なんかは結構いい。ところが時間軸をいらい過ぎているのか、何かつじつまの合わない部分も出てきたりどうしたのかと驚く。
登場人物は誘拐事件から8年を過ぎているのだが、少女以外は全く歳月を感じさせない容貌。刑事たちも両親も全く老けない。これじゃあ時間軸をめちゃ編集しているのに、観客たるや、余計ややこしくなる。
検挙率が秀逸な刑事が初対面で男親 . . . 本文を読む
チェーホフのいろんな戯曲のセリフが唐突に出てくる。あまりこの現代劇とは関係なさげだが、この劇団がチェーホフを猛烈に好きなことはわかる。チェーホフファンにはたまらない。
しかし、肝心のこの本編ストーリーが分かりづらく、しばし目は宙を舞う。チェーホフの世界とは全く違い、最初少々面食らう。でもこの狭い舞台に10数人の役者たちが動き回る。セリフのとちりが全くなく十分練習された完成度の高い劇だということが . . . 本文を読む
この暗くどんよりしたロシアの自然と一体化したかのような現実感。荒涼たる写真群は人間の生きることの苦悩を写し出す。
人は土地でさえ、家族でさえ権力の思いのままに奪われ、もはや神の不在を問うことさえ愚直に思えるほどだ。このペシミズムは現代のロシアを提起しているのか、それとも人類の普遍的な営みの危機を訴えているのか。
2時間強、観客はこの苦痛に耐えている。その時間は映画の登場人物と共有する。けれど、 . . . 本文を読む