最後の方にはじめが海に入り、ぼわーと4肢を広げ、浮かぶシーンがあります。この作品はこのように僕らが現実を受け入れつつ、茫洋とした宇宙の空間にしっかりと心地よく漂っていることを終始感じさせてくれます。
歳月とともに変わりゆく自然、街、そして人。そう、すべて何物も一定であることはない。許されない。宇宙でさえ時間の概念は違えどたゆまなく変わってゆく、、。
そんなことをこの映画を見て思い浮かべる。これ . . . 本文を読む
娯楽作でも常にファンを意識しているショットの積み重ね。それが分るだけに不思議と映画と観客との間に密着さが存在している。これがこの映画の第一の売りだね。一体感があります。北川はキレイです。 . . . 本文を読む
シンプルな話なんだよね。だけど誰にもありうる話だけに考えさせられるし面白い。たったこれだけのことから、延々とこの家族は地獄に落ち込んでゆく。
男と女との違いをたった一瞬で描き切り秀逸だ。この映画は動物学的にもなかなか意味深い。そもそもオスはメスの関係は「花と蝶」であり、オスはメスを求めて花から花へと飛んでゆく存在である。
一方、メスは子供を産むがゆえに子の存在は自分の体の分身のようでもある。だ . . . 本文を読む
あの力作「幕末史」と比べるとかなり分量も少なく、そして半藤をよく読んでいる人からは、それほど新味はないと思われる幕末史であるが、読みやすく講演調でもある。そういう意味で分かりやすいもう一つの幕末史なのである。
でもかなりあちこちで彼の本音が出ている。まず西郷をちょっとこき下ろす。これはある意味僕もそうかなあと思う。あれほど人間味があり、広く世の中を解っている西郷が、一貫して武力で幕府を倒すことを . . . 本文を読む
とてもチャーミングでちくっと人生の悲しみも訴える。でも、もうこんなに老いさらばえるとこの手の話は感動もできない。そのことにただ驚き、そして哀しい、と思うのであった。
父親が失踪し、クルマ生活を余儀なくされている3人家族。女の子はただただバースディで級友を迎えるために家が欲しい。お金があればいい。そう思う彼女は、金持ちの女性が可愛がっている犬を誘拐する計画を立てる。その顛末は、、。
と、面白、可 . . . 本文を読む
樋口の魅力を十分伝えた秀作だろう。やはりこの人の作品は人間が書けている。ミステリーでなくとも十分読める作家である。
特にミステリーのジャンルは謎解き、プロットに重点が置かれ、小説の基本である人間そのものを描くことがなおざりにされる傾向にある。そういう意味でも頑張ってほしい作家である。
彼のミステリーは本格からすれば外れてるし、意外な犯人、どんでん返しというミステリーの究極の楽しみは備わっている . . . 本文を読む
大勢の俳優陣(13名)、タイムトラベラーで時空を100年単位で何回も上ったり下がったりするそのわくわく感、ロボットと人間との本質的な関係。舞台で何倍も楽しめる要素を持った作品である。しかも2時間20分。
演じる方も観客の方も楽しめるか楽しめないか、それぞれじっくり勝負である。ぼくはあまり初日は行かないようにしている。それはやはりセリフがとちることもあるだろうし、音響とセリフ感など、日を重ねていく . . . 本文を読む
園が売れない時、25歳の時の脚本であるという。奇作「冷たい熱帯魚」は頼まれ映画で実はそれほど好きではないという。そんな彼の肉声を聞き、映画館に即馳せ参じる。
昔見た「気球クラブ、その後」という彼の作品を見ていて何故か思い浮かべる。園の映画では一等青春映画っぽく、気球が空に揺れ漂う青春を凝視していた佳作だった。25歳だとすればこの映画はその時代の園の心境を謳ったものではないだろうか、、。
最近に . . . 本文を読む
あまりミステリーらしきものは感じなかったが、後半になってからだんだんそれらしくなる。でも読んでいるうちに、この小説が実にだんだんと愛おしくなってきているのが分る。いい小説の予感である。
題名も素晴らしいが、この小説全般を通して、人生の虚無が底流を静かに流れている。癌で余命わずかだと告げられ入院している50代の父親。家に帰れば祖父がほぼ寝たきりの生活を送っている。そんな二人を黙々を世話をする男子大 . . . 本文を読む
珍しいトルコ映画。そしてカンヌパルムドールだという。でも最近のカンヌは信用できない映画が多いが、本作品はトルコ映画だけにひょっとしたら、と期待に胸ふくらませる、、。
うーん、そして最初の数分間を見ただけで、この映画が秀作だと言うことがわかる。トルコ映画にしては実に文学的で、何か一冊の本を読んだ読後感も生じる。そこにはベルイマンらしきものもあり(ある結婚の風景 )、何か懐かしい。
実に長い作品で . . . 本文を読む
出演者が出演するかどうか未定、というのも村上が手紙を送って出演を依頼する。それを受けるかどうかは当日になって初めてわかる。
ということは出演者不在のまま演劇は行われることになる。観客は、つまりぼくは今回でも12,3人中、4,5人の出演者不在のまま舞台を見ていることになる。
こんな演劇って初めてである。4バージョンあって、僕が見たのは記録編。
あらゆる記録装置を舞台に持ち込み、現場の一回性とそ . . . 本文を読む
この柚木シリーズ、2作目だが(読むのが)あれほど面白いと思った文体も、この作品ではもう流しかけた読み方になっている。(作者に大いに失礼)
何か似てるんだよね。本格といってもそのうち真相に読者が気づくようになってくるし、またその真相に至る伏線も何かいい加減だし、ちょっと鼻白みました。
もう一回このシリーズを読んでみて、また一緒だったらもうやめようなんてこと考えてます。読者は勝手です。怖いです。
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同じように育てられて姉妹でなぜこうも違うのか、なんていうことはよくあること。ひとはただ単に馬鹿な女だねの一言で片づけるが、本人はそれなりに自分と戦い続けているのだ。
映像でぐんぐん押して来る力はものすごく新鮮で、躍動力がある。説明のないままカットが変われば、それは5年も経過しているなど、慣れるまではちょっと大変だが、まず「説明はあと」、とにかく映像でどんどん邁進してゆくスタイルは、とても斬新で力 . . . 本文を読む
何でもない明るい自由なドキュメンタリータッチの微笑ましい家族映画なんだと思いながら見てゆくと、いやあ、そこには人間に深淵のドラマが隠れていました。しかもそれをある意味ミステリーで描くとは、うーむ、参った! この作品、現代の秀作です。 . . . 本文を読む
ミステリー映画なんだけど、いわゆる犯人捜しなどでない。スターリン体制下での魑魅魍魎な社会現象を題材にした娯楽作品であります。
なんといってもねえ、共産主義体制には殺人事件は起こりえないという想念で、44件の男児殺人事件をすべて事故処理にしてしまう社会体制には、もう開いた口が塞がらないというか、それにずっと付き添っていた人たち(国民も含めて)がいることを思えば、まさに恐怖以外の何物でもない。
一 . . . 本文を読む