連城三紀彦の遺作。ミステリーの手法を採りながら、男女の微妙な愛を掘り下げる名手であった。一頁ずつ開いてゆくと、病気を抱えながらこれを書いていたのかと驚くほど緻密で素晴らしい構成に唖然とする。
8編とも秀作ぞろい。ミステリーも最後の最後まで練られていて、ストーリーも斬新で、まだまだ新しいものに挑戦している連城の姿勢を強く感じる。スゴイ。
ほんと、ミステリー界は惜しい人を亡くしてしまったと思う。多 . . . 本文を読む
同じ原作でも日本版より数段こちらの方が面白い。被害者の悲しみが痛烈である。それを観客に示すことがこの映画の目的であるかのように静かに激しく終末に向かってゆく、、。
平凡な父親が可愛い娘の死にざまを見てしまったとき、そしてその瞬間に「パパ、パパ」と救いを発していた声を聞いたとき、間違いなく人間は畜生へと変身するだろう。
ゲーム感覚で殺人をしてしまう高校生たち。彼らが捕まっても2年程度で出所してし . . . 本文を読む
これって、昔懐かし漫画チックなラブコメです。D・クルーガーがこんなコメディに出るのも初めてなんでしょうが、まだまだ固いなあ。もっとくだければよかったのになあなんて思ってしまいます。
無理やり笑わせようとするシーンも多いけれど、そういうところでチャーミングじゃないから爆笑にならない。これは演出のせいなのか、演技力なのか。
ロシア、アフリカと観光に行った気になるのは少々お得だが、(なかなか行けない . . . 本文を読む
ほとんどが遠くからのロングショット。街中でただ何となく人々を見ていればこんな感じだなあという映像だ。セリフは脚本があるとはいえほとんど役者任せ風。そのため会話は結構ちゃらく思える。
何とも言えない女同士の陰湿さが見る方につらい。リアルなだけにつらい。見なければよかったと思う。けれど見ている。
後半はもう今や普通になってしまった時間軸映像。特に新鮮ではない。なるほどそうかという感じ。でも前半あれ . . . 本文を読む
密室もので(飛行機内だから当たり前)本格犯人捜し、次々と起こる連続殺人、時限爆弾、緊急着陸は可能か。考えられるすべての謎解きを観客はじっくり、ハラハラと挑戦させられてゆく羽目に、、。
まあ考えたらフライトものサスペンス劇をジェットコースターさながら見ているようなものですなあ。この娯楽作品は2時間まったく時間を無駄にさせません。
ダレるところがないのですよ。これはエンタメの神髄でしょう。俳優陣も . . . 本文を読む
何をって、一番驚いたのが山崎の変わり様。あの、情念をじっくり執拗に追求していた山崎が(5作程度見ているだけで決め込み過ぎかも)、まるで東京の演劇のごとく(関西演劇っぽくないという意味(何のことや?と言われそうだが))洒脱で派手やかでメジャーっぽい演劇を音楽という(山崎にとっては)珍しい手段で圧倒的に見せつける。
うーん、なんかわからないが、とにかく熱闘。こんなおじさんをいとも簡単に、自然にスタン . . . 本文を読む
思いもかけず昔懐かし名優たちが勢ぞろいしていて、その意味でも最近の映画の中でも安心できじっくり鑑賞できる魅力満載の映画でした。特に話のとっかかりがヒッチコックばりの巻き込まれ型でわくわくする。
ポルトガルでたった40年ほど前にこういう政治状態だったとはつゆ知らず、まず相変わらずの不勉強ぶりに自分自身を憐れむほど。
この映画では反体制型のレジスタンス情勢はそれほど深く描かれてはいないが、ブルジョ . . . 本文を読む
相変わらず楽しいサンス節。題材はよくある女性大生と教授との不倫なんだけど、サンスにかかると春風のようにさわやかで、でもちょっぴりなまめかしい。からりと明るく湿っぽくはならない。ほんと、珍しい映画作家である。
チョン・ウンチェの容貌が韓国風でないのがこの映画のちょっと異国風のところだ。役柄ではロンドンに昔いたというからイギリス人とのハーフなんだろうか、僕はフランス人とのハーフかなあと思ったが、、。 . . . 本文を読む
いつ見てもホン・サンスの映画って、(いつも言うけど)フランス映画っぽい。軽妙でけれど本当は深刻で、でも滑稽でおかしい。そういう風に軽くさらりと人生をスケッチする。その行間からにじみ出る愛らしさがたまらない。
今回は彼の作品でも珍しくストーリーがしっかりある。ちゃんと考えられている。驚いた。起承転結の仕組みはいつも感じてはいたけど、今回は練られている。
でも、例の、飲みながらのグタグタ話は相変わ . . . 本文を読む
セリフの徹底的排除、動かない長時間のワンカット、聞こえてくる本来劇映画では排除される街中の日常音(騒音も交じる)、そして最後にミンリャンは映像の本質論を唱え、観客に映像を見続けることの忍耐力と想像力を導く。
今までの作品のように、現代人の孤独とか、よそ者意識の追及とかそういう括りでは本作を語ることは困難だろう。
映像はロングショットが多用され、実に街中で日常に僕らが風景(他人)を見ているそのま . . . 本文を読む
これは面白い!こんな臨場感のある、最初から最後までずっと緊迫感のあるハラハラする展開、そしてほとんどワンマンショーのハ・ジョンウの、瞬時に明確に対応する鋭敏な演技。韓国映画、またまたすごいものを作ってくれました。
映画という題材をもってして、とにかく面白いものをとことん追及するというこの姿勢は映画界全体が見習うべきものであろうと思う。このすごさはとにかく映画館で見なければ分からない。僕はこの映画 . . . 本文を読む