ブルガリアって、ヨーグルトだのバレーボール、重量挙げなど東欧圏の一小国というイメージしかなかったが、この映画から自由のありがたさをひしひしと感じる。
秘密警察を題材にするドイツ映画はかなり見た。ソ連でもKGB,戦前の日本でも特高など、人間の自由を阻害する政治体制は探せば僕らの身の回りにいくらでもある。
この映画は二人乗り自転車で記憶喪失の孫と祖父とが、故郷に戻りながら自分を取り戻していくハート . . . 本文を読む
この映画、とても若々しくみずみずしい。【イオセリアーニ】、かなり老齢のはずなのに捉えどころのヤングっぽいのがうらやましいほど素敵だ。
男二人に女の子一人。これはもはや恋愛の定番といっても過言ではない。古今東西昔から題材にされてきた。しかし、子供時代からすうっと大人になるシーンから、普通の恋愛沙汰にしないところがこの作品の憎いところ。恋愛なんかに構ってられないとでも言いたげなほど映画作り(81/2 . . . 本文を読む
少々食傷気味の荻上作品、と思っていたら『マザーウォーター』と『東京オアシス』は別の監督なんだよね。それほど【小林聡美】のイメージが強かったということなのかもしれないが、今回は都会的な、ツーンとした澄ました感じがないのでとても親近感のある作品となった。
内容はマンガチックな寂しがり屋を集めた短編集だ。心の穴ぽこを埋めるのにレンタネコいかがですか~、なんていかにもアレっと思わせる突飛な着想。これひと . . . 本文を読む
伊岡の初めての短編連作集。通常僕はあまり短編を読まない。短編は短編で長編と作り方が違い意外と作る方からは難しいものなのだが、その割には読後感が浅いと感じることが多く、だいたいミステリーの短編は今までほとんどパスしていた。
しかし、伊岡の作品は何とまだ3作品しかないのだ。短編云々と言ってられないものがある。そしてこの作品だ。
中味は小学校の臨時教員の、ワルガキどもとの奮闘記だが、各章ミステリー的 . . . 本文を読む
人体発火事件の真相を解くという一応ミステリーものなんだが、娯楽アクション映画でございました。でも、香港映画にしてはカネをかけているので、ハリウッド並みのCG(ちょっと大げさ)には目を見張るものがある。
俳優陣も豪華でそれぞれしっかり熱演。そのため起承転結が明瞭で長時間にしては退屈することなく観賞できた。
俳優陣では初めての【ダン・チャオ】の金髪染め、白塗りが目を引く。最後は哀れ彼も発火してしま . . . 本文を読む
冒頭の解雇を受ける5分間までは水準の出来。けれどもその後の平面的な内容、演技、演出どれをとっても現代の映画にそぐわない出来だと言わざるを得ないのではないか。何回居眠りしても展開しないストーリー、、。 . . . 本文を読む
厭な映画である。人の心をいたぶるいやあな映画である。前作と違うのは、見なければいいと思った時間が極端に短かったところか。それだけ脚本が緻密でしっかりと書かれている。布を織る時の縦横の繊維が明瞭である。映画としてそれらは時として僕らの前に対比型として提示されるわけであるが、、。
まず夫婦の離婚調停。男と女の考え方の相違。結婚して14年にもなるのに夢想的な妻と現実的な夫。
別居するがゆえにメイドを . . . 本文を読む
ミステリーなんだけれど、登場人物がきっちりと書けている。よくミステリーであるところのトリックと筋立てを重視するあまり人間が書けていない、という評とは別次元の作品だ。じっくりと人間を描いている。それにひきつられ静かに静かにページめくる。
そして哀しい人間の人生を垣間見てしまう。しかし、確かに犯人探し的な要素は少ないが、大きなミステリーの流れも背景には存在する。そしてラストの思いがけないどんでん返し . . . 本文を読む
ミステリーにはスパイミステリーというジャンルがある。本格、倒叙という本道に一歩譲ってはいるものの立派なジャンルである。しかし米ソの緊張感が続いた時はいざ知らず、現代においてこのジャンルはどうなんだろうか、、。
そんなことを映像を見ながらついつい考えている自分。この映画、ほぼ40年ほど前の東西冷戦時代を引きずった時代の話である。いい意味ではノスタルジー、悪く表現すればちと時代感を感じてしまう映画で . . . 本文を読む
北極に近い極寒の孤島に少年院がある。そこは隔絶された世界であり密室である。そこでは教育という名前のもと、想像を絶する日常が繰り返される、、。
映像は緻密で、吐く息は白い。そこで暮らす少年たちの極限の意識が張りつめている。ちょっと反抗でもすれば過酷な労役が待っている。そしてやっと卒園するときに引き過ぎた弓が音を立てて壊れてしまう。
そこには自由という希望などはない。ほころびから来る抵抗。そして静 . . . 本文を読む
【カウリスマキ】の待望の新作。そうかもう5年経つんだ。久しぶりだったね。今回はどんな話かな?
冒頭のアクションからラストの静かな花見まで相変わらず【カウリスマキ】節は健在だ。でも、もう作るべき映画は作っちゃったという感じで、ラストの2か所はかなり強引な筋立てを考え付く。
これが【カウリスマキ】だから目を細めて赦すかどうか、この映画の評価を左右する。僕は大の【カウリスマキ】ファンだけれど、ちょっ . . . 本文を読む
この映画は孤独な少年のまなざしのみを一気に描いた作品ですね。彼を取り巻く父親、環境(施設)、里親、友人(悪人ではあるが)たちの説明はほとんどカットして、あくまで少年の見ている方向だけを描写している。それは正しい。
子供は大人ではない(当たり前だが)。だから僕たち大人が見ている視線で世の中を感じ取っているわけではない。愛情いっぱいにはぐまれて育つのがまず基本線なのだ。花でさえ毎日水をやらなければし . . . 本文を読む
冒頭は小津の『浮草』のあの激しい雨のシーン(これはラストでシンメトリー化する)。唐突なベルイマンの『処女の泉』(話だけだが)といい、【原田眞人】はこの映画を何かオマージュっぽく集大成化しようとしているように見える。
確かに映像、演出、そして豪華な俳優陣、そして脇役の隅々までの彼らの確かな演技。どれを見ても一級品だ。現代日本映画の粋だろう。しかし私には作品的には立派でも肝心のわが心が全く触れてくれ . . . 本文を読む
僕にとっては珍しい種類の演劇だ。とにかくとっても卑近過ぎる題材、手法、現実を見据えたカッコつけない抉り方は、ただ何となく舞台を見ていてはいけないと思わざるを得ない圧倒感を持って僕に迫る。
観客と舞台との距離を狭くしようとしているのだ。すなわち客観的に見せてくれないその演劇方法に最初驚きと違和感を持って見始めたのだが、例えば日常で電車の中で不意に起こる事件が目の前で実際起きているような錯覚さえ感じ . . . 本文を読む
何か今この映画が出現するわけが後で余計分からなくなった映画でした。恐らく小説と読後感がかなり違うのではと思ってしまう印象です。(未読で失礼ですが)
家族5人の物語なんだが、5人とも何か人工的なんだよね。ベタな話なんだけど5人とも少々みんなイマイチ筋だけを追ってる感じというか、肉付けが少なすぎる。
父親。本社に呼ばれて過去の同僚の前で急に愛を叫んでもこちらは空しく引くしかない。
母親。盛岡であ . . . 本文を読む