東ドイツ時代の思想スパイに巻き込まれたミュージシャンの実録版。思ったより深刻さは映像からは感じなかったが、音楽シーンのすごさに圧倒される。政治映画というよりむしろ音楽映画だ。
日本でも戦前の特高警察が存在していた時代にはこういう生活スパイがあちこちにいたのだろうと想像させられる。ただし、日本の場合は完全にオフリミットで、一部しかこういう存在を公にされていないのではないだろうか、そんな気がします。 . . . 本文を読む
特攻隊員の出撃前の本音に辿る2,3日のできごと。でもそれは重く懊悩地獄。美談で逃げごまかしていたこの手の映画では、かなり異色の作品ですが、上層部への作り手側の敵意がむき出しなのは賛否あるところ。とはいえ、特攻は死刑と何ら変わらない絶望だと自覚す。 . . . 本文を読む
ほとんど知らない俳優陣によって演じられるある夏のできごと。ある家族の日常はどこにでもあるかのような親近感さえ覚えるが、ひとつひとつが濃密な陰影を帯びていることに気づく。そう、退屈で明日を予見できないこの現実こそがドラマなのだ。 . . . 本文を読む
懐かしい俳優陣が目の前に。舞台が倉敷らしいので、当時の面影を反芻しながら、何やらいい時代の映像を見続ける。
室生犀星原作ものの文芸映画なのだが、当時の日本人の精神性を見るには意外や勉強になる。現代と比べてみんないい人ばかりの日本人。こんな時代だったんだなあ、と感慨深い。
作品的には題名にもなった青山京子の口笛の、どう考えても男性が吹き続けたとしか思えない音色の不気味ささえ感じる部分、越路吹雪の . . . 本文を読む
小学生の女の子が失踪する。「埼玉県警の奈良」の視点からその後の一部始終を綿密に書き留めた力作です。警察の動きはもとより、被害者家族の生活、奈良の家族の描写が生々しく、とても好感が持てた。
失踪してあっけないラストに至るまでがとても長いんだけれど、でもそれまでを描きたかったのだろうから、仕方がないことですね。
人物の描写は実に自然で生き生きとしていて、実に読み応えがありました。小説の世界だと思え . . . 本文を読む
監督は韓国人だが、対象とされるのは連続企業爆破事件の受刑者たち日本人である。私とほぼ同世代であるが、彼らは反日という名のもと国家権力に牙を向けていた青年たちである。
劇映画ではないので映像に映る人た心根をそのまま理解したとは言えないが、どうもやはり彼らの生き方そのものというか、内面への追及が緩く、映画自体もそのまま中途半端に終わってしまう。
それでもかなり親近感を見たのは獄死したリーダー大道寺 . . . 本文を読む
結構長編してたけど、読んでいるうちに重厚な語り口に魅せられて、時間をかけて読む羽目になりました。
人生の暗部をきちんと見ている作家なので才能がかなり感じられる。ハードボイルド感が優れており、それだけでも十分ミステリーたり得ます。新宿歌舞伎町の裏世界の描き方も見事。なかでも、久保寺の颯爽とした印象が後々残る小説でした。
さらにこの独特なダークファンタジーがこの作品を個性的なものにしている。かなり . . . 本文を読む