設定が面白くて、思わず書店でレジへ。確かにぐいぐい引き込むものがある。なんせ、1年後に自殺を勧められる人たちの話だ。そしてその通り自殺していく人たち。不自然と思った雑誌記者が追いつめてゆく、、。
最初の方に読者に対する引っ掛けがあったんですが、ほとんどの人が恐らく従順な読み方をしてしまうのではなかろうか。ラストの驚異的などんでん返しは、でも、かなり強引かな、といった感は残る。ほとんどの人が最後の . . . 本文を読む
敗戦直後のサナトリウム(古い言葉だ)。当時は薬もそれほどないのだろう、映像で見るように体力のみで治療していたような雰囲気だ。恐らく資産家でないとこういう療養所には入れなかったのだろう。優雅な療養生活である。
変に明るいのだ。でもそれは野外の日光の明るさではなく、患者たちから眺めた脳裏の明るさというか、だからそれはあくまでも抽象的な観念を伴ったものなのである。だから、映像ではまるで楽しい学園生活っ . . . 本文を読む
原作は読んだはずだが、ほとんど覚えていないという健忘症です。でも、それほど感動しなかった記憶はあります。しかし、映画は結構良かった。それも、最後の最後で被害者側の犯罪者への裁きの中身を知るその観客への提示の重さは持ち切れないほどだ。
だが、二時間弱ラストまでの描写は凡庸だ。一人一人の演技は見るに値するが、いくらなんでも指名手配を受けた一般人が軽井沢でペンションの聞き込みをする際、あんなに自由に行 . . . 本文を読む
予告編で見たラストのスティール写真が絶品で、その色彩感覚と構図の素晴らしさ、そしてやるせない男女の愛の在り方を一瞬のシルエットでとらえた映像は、冒頭から日本映画の伝統と技術、そして日本文学の心地よさまで包含し、最近の日本映画として集大成の域にまで達している出来だと思われる。
これほど素晴らしいショットが最近の日本映画にあったろうか、、。「人でもいいじゃない。生きてさえいれば、、」ラストのセリ . . . 本文を読む
いわゆる難病ものである。趣向が違っているのは、姉のドナー対象として人工的に生産(?)された妹が両親を告訴するという設定である。このテーマは深い。考えさせられる。実に重い。そういう思いで見ていくと、、。
ちょっと違うんだよね。人間の誕生にかかわる基本的な人権問題は掘り下げられない。時間がたっても家族間の情感は語られるけれども、それはふうっとはるかかなたのことのように追いやられ、語られることはない。 . . . 本文を読む
時間給800円のパートから月給14万円の正社員になった主人公。計算したら800円×7h×25日=14万円でペイ的にはまったく変わらない。これで、転職したとはいえ大卒の女性29歳の給料である。親元で暮らしながらのつつましい生活感がにじみ出る。
ほとんどが彼女の生活スケッチというものである。大阪弁が話し言葉そのままの表現されているので、とてもいい。大阪弁がこんなに詩的で美しいというのも初めて感じる。 . . . 本文を読む
まさにB級映画なんだけれど、結構丁寧に作られているので、映画の骨格がはっきりしている。こういう映画は見ているうちにどんどん目が輝いてくる。エンタメの本骨頂だ。
恐らく演出が行き届いているのだろう、画面から画面へのカットも情緒が残るようにB級映画でよく見られるような無愛想な部分はほとんどない。
ただ、ストーリー的にはちょっと欲張ったというか、大きくなりすぎていくらなんでもこんなことのために政治家 . . . 本文を読む
実写的には湯水のようなお金を使った贅沢な映画です。2時間半、それこそ打ち上げ花火のように金属同士の戦いのオンパレード。
ストーリーはそっちのけでそれを見ているだけでよだれが出そうだが、それにしても全編クライマックスの戦闘シーンの連続は美しさを通り抜け本当に花火ショーだ。ものすごい技術を駆使したハイテク映画であることは間違いない。
でも、やはり牛肉のフルコースと超濃厚ワインの2時間半はお年寄りに . . . 本文を読む
お気に入り道尾秀介の最新作。今回は義父、義母と暮らすそれぞれ二人の兄弟と、その交錯から生じるミステリーだ。
まあ、二組の家族設定は通常だが、あるふとしたことから関係性が生じてしまうという設定がこの小説のみそである。そして底流イメージの題名の竜神。相変わらずひねりひねりが進行し、そして最後はいつも通りのどんでん返し気味の展開。
でも、今回はこの偶然が生む設定がこの小説のすべてであり、その分道尾の . . . 本文を読む
話題本、やっと読みました。意外と短く、あっという間に読んでしまいました。
ミステリーとしては、構成が巧みです。最初にあっと驚かせ、告白者で時間をつながせ、最後に最初の告白者に戻り、アッという終わり方を見せる。
悪意に満ちた本であり、とてもや本屋大賞などと賞賛すべき本でないことは間違いのないところ。本を、面白いからという評価だけで人に勧めていいのかどうか、かなり疑問が残る。作者が女性だからまだ読め . . . 本文を読む
人形が心を持つこと。精神を持つというのではない。物質が心を持つということ、、。その反面、人間が心を捨てるということ。心を所有しないということ、、。
映画では全く同一のことだと言っているようだ。心を持ったダッチは映像では生きた【ペ・ドゥナ】になる。人間になる前の完全物質人形と映像で区分している。心を持つダッチは人間に他ならないのである。だからこそ、心を持つからこそ、苦しみが生じる。人を愛するように . . . 本文を読む
アニメ嫌いの僕がまたしても青春の息吹を感じたくて【細田守】を見る。
【細田守】と言ったら鮮烈な青空だ。淡き青色のようでいて、むしろ碧色に白を混ぜた感じ。切ない色だ。空模様は雲が近付くと一変して黒く灰色に濁る。それが青春だ。青春こそ淡く哀しくそして現実的には残酷だ。
最新作はネット社会の危うさを題材に実際の敵が人間から生み出されたバーチャルなものとして提言される。(将来かもしれないが)バーチャル . . . 本文を読む
小西真奈美さんのファンである。出演作品のほとんどを見てきました。でも、意外と主演作品って少ないんですよ。『恋愛小説』は鋭く良かったけれど実はテレビものだったし、本格主演は『うどん』でしょうか、そして引き続き本作もコメディでの主演です。
だいたい、そこにいるだけで絵になる人なので、静かな役柄が似合うんですね。でも彼女はそれにとどまらず挑戦したいようです。本作も途中にイメージとかけ離れた剣幕でしゃべ . . . 本文を読む
9.11以降のアメリカの抱える移民問題をテーマにしている。7,8組の群像劇である。ほとんど彼らが交錯することはないのであるが、それでもドキュメンタリータッチにならなかったのは演出のたまものと言えようか。
結構単調な話の中で、殺人事件が起こる。ここがエンタメとして秀逸なところで、しかも観客をあっと驚かせるオチは一応用意してある。心憎い配慮である。唯一娯楽性の残るエピソードであるから、これがなければ . . . 本文を読む
ちょっといろいろあって、ブログが止まっていた。結構悩みがあるときにはブログが書ける時とそうでないときがある。昔よく日記などを書いていると、自分の悩みなんかが何か小さいものに思われて書くことだけで解決していく時代もあったけれど、もちろんそれは学生時代の話であって、もうこの実年齢になるとそんなことでは解決される悩みなんてない。
でも、それでも実に時間というのは人間に対して一番のお薬となる。珍しく食欲 . . . 本文を読む