何気なく見た劇。しかし痛烈に残る作品となった。
舞台に照明が上がると一人パソコンを駆使し、脚本を書いている女性がいる。同棲しているのだろうか、男と些細な会話を交換する。女は脚本作成中の男の不用意な会話に苛立っている。男は優しく女を心配しているだけなのだが、、。
何気ないこの若いカップルの会話がたいした内容でもないのだが、現代風を切りこんでおりなかなか面白い。もう終わりかけの二人かなあとも思った . . . 本文を読む
隠岐の島のことをあまり私は知らない。中世では天皇が流罪されたことでも有名だが、そのイメージで秘境めいてもいる。だが、そんな先入観も一掃される見事な隠岐の姿が映像にクローズアップされる。
ドラマの神髄となるのは神事でもある古典相撲大会である。20年に一回開催されるという島の重要行事である。逃げるようにして島を出た男が帰島し、心技体に優れた者に選ばれる栄えある相撲を取るまでの話である。
カメラは隠 . . . 本文を読む
今年の話題作であると同時に個人的にも小津を標榜する私としては気になると共に待ちに待った作品でもある。でもどうしてもオリジナルとの比較をしてしまう自分が存在する。でもそれは仕方のないことなのである。世界的名品のリメイクなのだから。
山田はオリジナルと似ているようであちこち相違を持たせている。まず、郷里の舞台を尾道からフェリーで渡る島に設定したこと。そのためラストでは父親と紀子が眺めた浄土寺から見え . . . 本文を読む
ミュージカルで名高い劇団四季にも本流たるストレートプレイが存在する。そしてこれはそもそもテーマが硬質で人間の尊厳を問う愛と死の物語である。観客数も少ないのではないか、と思っていた。ところが平日の昼間。ほぼ満席である。
2時間、主人公はベッドに括り付けられたかのようにずっと寝かされている。観客は2時間それを見続けていることになる。しかし鍛えられた抑揚のあるセリフ捌き、内面からほとばしる心の叫び、彼 . . . 本文を読む
Space早稲田、演劇場と言ってもまさにスペースがあるだけの狭い空間。だがここで今まで名作を何本も見て来た。狭ければ狭いほど工夫をし、いい舞台空間を醸成する。
今回も、全く難しいところのないエンターテイメント。被害者が加害者を食って行く、そんなある意味ミステリー風味のある心理劇だ。
けれどそれも一転二転するこの上ない面白い展開。なかなか凝った脚本で観客は、時たま出るサービスたっぷりのダンスと共 . . . 本文を読む
先日、かの松竹ヌーベルバーグの一人大島が亡くなった。今彼の作品群を思い出しているのだが、結構多作であることに驚く。しかし、2000年になって以来作品はとどまっている。僕は彼の監督作品24作中、半分の12作を見ていることになる。
けれど驚くなかれ、みんなが誉めている「戦場のメリークリスマス(1983)」は未見である。「愛のコリーダ(1976)」で世界的に注目されて以来の大島作品は実は僕はあまり好き . . . 本文を読む
この映画がテレビドラマだったことも知らない僕が、この映画を見て、正直なかなかイケる、と思ったほど新鮮でした。原作がコミックであることは何となく分かってはきたが、でも超真面目教育論だったり、妄想スケベ脳内だったり、生徒たちが実際とは違ってはいても、そんなの全然気にならないほど武富健治ワールドは健在でした。
先生たちの本音が語られるタバコ部屋がいいねえ。屋根裏なんだろう斜め屋根で窮屈で煙がモウモウだ . . . 本文を読む
最近「愛」そのものについて、こんなに、濃密に、考えさせられる時間を持つことはなかった。3話の話なんだが、場所以外でそれらは交錯することもなく、きっちり2時間でまとめあげ、1本で3本以上の感銘を持たせる、それは見事という一言に尽きる。
何か感覚は僕の大好きなキェシロフスキの「デカローグ」に似ている。物理的なシチュエーション、人間の本源的な捉え方、それらはこの作品と共通する何かを持っている。
主話 . . . 本文を読む
7年ぶりの書き下ろし作品。法月ぐらいになると手抜きのようなモノは出せないし、そもそも遅筆の方だからあっと気づくと7年になっていたのかなあ。そしてこの作品は評判が高く、彼をずっと読んで来たファンとしてもすこぶる興味ある作品であった。
倒叙物から始まりその内いつもの法月親子の掛け合いになる。交換殺人に気づくも4重であることに辿る過程は面白い。けれど、けれども、9割読んでもスゴイと思わせるものがないん . . . 本文を読む
一時浦賀氏の作品をむさぼり読んでいた時期もあった。面白かったけれど、ミステリーでも本格からかなり逸脱していたのでそのうち遠のいてしまった。そして評判高い本作。でも12,3年以上前の作品なので本作はその時夢中になっていたとき読み落とした作品群なのかもしれない。
冒頭の大学生と加奈子と多重人格者らしい女性との3人の取り合わせの会話が面白く、ミステリーそっちのけでこの作品に入ってしまっていた。文庫本で . . . 本文を読む
声だけ出演でも佐野さんの生き様が見られると期待して見たんだけれど、さて、それはどうだったんでしょうか、、。
この映画の題名である絵本は全編紹介してくれる。まさにその話はやはり感動的だ。でもそれを体験したくてこの映画を見ているわけではないだろう。この絵本に感動して自分の人生を語る様々な女性の読者が映像に映る。でも、そんなのを見たくてこの映画を見ているわけではない。僕は佐野洋子さんの生きざまを見たか . . . 本文を読む
今さらというのもなんですが、エヴァをこのご老体たる吾輩が初めて見させていただきました。全然面白いやん。これがエヴァだったわけ?うーん、感心。
ひょっとしたら14年という長期の覚醒後の話なんで、前後がなくても分かりやすかったのかもしれません。まあ、それほど筋書きというものが分からなくても、現代の若者がこういう感性的なものを好んでいるということに、正直驚いたし、安心もしました。
でもこの一作だけで . . . 本文を読む
10分ほどの短編映画。と、しかし実は上映中はずーっとエヴァの冒頭シーンだと思っていました。絵自体は全然違うけれど関連性がなくはなかった。そもそも宇宙の滅失感が断然強く残り、存在の消滅することの悲哀を結びつけたかったからだろうか、、。
能書きが面白いのだ。何かしら神の概念が出て来、この今ある宇宙全体を焼き払うのだと、、。太陽と月を攻撃し、だったか、でも主星たる太陽が消滅すれば惑星である地球なんかは . . . 本文を読む
石持の作品、この作品で今のところ一応全作突破。こういう作家は意外と珍しい。それだけ一点一点がきらりと光る秀作ぞろいだということなのだろう。
本作はさらに極まって何と役員会議室でミステリーが始まる。場面は総務部とそして一部だけ外部の家があっただけ。内容はいわゆる今流行りの内部たれ込みというコンプライアンスものなのだが、、。
会議室で行われていることを推理しながら、少しの情報だけで会社の機構・人物 . . . 本文を読む
成功した文学者が生まれ育った植民地を訪れるという自分探しの映画です。
幼くして戦死した父親の墓。ほとんどだれも訪れなかったかのような荒れ方。優しくほこりを取り除く男。出身大学の特別スピーチをするが、植民地政策の是非と国家とは何か、で逆に論争を呼ぶ羽目になる。
しつけの厳しかった祖母。生活のために学校も行かせてくれそうになかったが、特別に担任の助言で上級できたこと。母親に若い男の影を見、哀しむ子 . . . 本文を読む