いやあ、面白いんだけどね、頭の整理がつかないままどんどん読まされているといった感じがして、石持氏ってとても頭脳明晰過ぎる人なんでしょうなあ、登場人物をしかとメモでもしておかないとこりゃあ読み切れんわあ、、。
ということでめちゃ面白いんだけど、これはとてもじゃないが現実感がありませんです。頭のなかで考えた頭脳ミステリーというべきか、常に地面から浮遊しておりました。
まあ、小説の中の出来事だから、 . . . 本文を読む
幕が開く。最近はこういう幕がない演劇も多いとふと考える。目の前にあるアパートの2室。シンメトリーの部屋だ。精緻だ。思わずため息がつきそうだ。観客に向かって縁側まで用意してある。これがタニノ演劇なんですね。もう目がきらきら光ります。
2組の部屋の住人の話である。どこにでもころがっているような、けれど真実の日常がとくとくと描かれる。みんなけなげに生きているが、ゆとりはない。普通の人々の日常に潜む喜び . . . 本文を読む
本谷有希子さんの作品は演劇ではすこぶる面白いことで定評があります。常に狂気をはらんでおり、見る者を即ジェットコースターに連れて行ってくれる。そして今回は映画です。実に等距離から寧子を見つめています。
冒頭からのあの僕らを苛立たせる寧子は鬱の症状なんでしょうが、ある程度慣れてくると精一杯の彼女の自分を守る防御なんだということ分かってきます。同棲中の男も実は心に闇を持っている現代人の代表のような男で . . . 本文を読む
「アルファベット・パズラーズ」で度肝を抜いた大山の待ち望んでいた新作だ。
アリバイ崩しを見事言い当てる時計職人が探偵だが、あまりに見事に当て続けるので、いかにもの感もある。でもそんな些細なことよりこの作品って、ちょっとミステリー的には軽いです。
7編の短編なんだが、最後のトリックなんて、僕が分かってしまったぐらいだから、ちょっと鼻白む。こんな素人にも解き明かさられるミステリーって、大山らしくな . . . 本文を読む
今までとは少し趣の違う演劇です。姉の葬儀に東京から戻ってくる妹。彼女が今回の主人公である。けれどこの姉妹には普通の家族では見られない葛藤があった、、。
回想シーンが続く。というか、時間的にはこの回想シーンの方が長く、重要である。みんな子供時代に無理に戻っているが、それなりに見ることはできる。違和感はない。実にいい子供時代だなあなんて、思っている自分がいる。
現代に戻る。なぜ彼女が不幸な存在なの . . . 本文を読む
これは凄い。凄いです。冒頭にあのトリックを見せつけといて、、。
いやあ、こんなにダイナミックなどんでん返し。久々にミステリーファンをうならせます。ページ数も少ないし、完全に一気読みです。ミステリーはこれでないと、ね。
でもいつも思いますが、これほど理知的な御子柴礼司がなぜ猟奇的な少年犯罪を犯したんだろうか、、。これがこのシリーズの一番の謎ではないのか。
久々にミステリー的にすかっとしました。 . . . 本文を読む
高校生学園もの、日常の謎。今流行りです。
このイメージでダントツなのは(僕の好みで)米澤穂信の古典部もの。この作品も設定は似ていなくはない。北海道の自然に恵まれているところ。高校生の男女4人。サークルもバスケ。で、同種の安楽椅子ものである。
でも、全然違うんだよなあ。浅いし、幼稚だし、高校生のほろ苦く甘酸っぱい感覚がない。リアルじゃないのだ。要するに造られた青春がここにあります。ナチュラルじゃ . . . 本文を読む
一見、ミステリー仕立てという触れ込みだが、まったくミステリーではない。設定はとある廃校に偶然集まってきた人たち。みんないわくありげだが、実際そうではなかったり、何でもない風にいて実際は完全に裏があったり、いわば現代風不思議怪談でもある、のかなあ、、。
何かありそうで実際は何もないのだから、劇は最後までストーリーそのものを持たず、そのため通常の演劇のように(?)ラストにドラマチックな何かがあるわけ . . . 本文を読む
還って来たビーン。ようこそ。そしてまたあの変なおじさんが、デジタルの世界に背を向け、完全アナログで007張りの活躍を見せる。よくぞ戻ってくれました。
何か初期の007の雰囲気がわんさかあふれてる。もうそれだけで観客席は感無量。とにかく90分、考え、詰め込み、100%観客に上質のコミカルサービスを提供している。それが嬉しいね。
俳優陣もエマ・トンプソンのような名優をそろえ、贅沢。本人も充分楽しん . . . 本文を読む
78歳の父親が死期を悟る。そして、「解脱の家」に移る。その日常をガンジスの面影に寄せてカメラは寄り添ってゆく、、。
10年以上もその家に住み着いている人もいれば、短く逗留したのちにこの世を去る人もいる。そんな営みをじっくりと時にはユーモラスを交えて描いてゆく。
特に変わったこともなければ、続いてゆく日常。どこにでもあるような家族の姿がそこにある。ガンジスの川の流れのように人の営み、人生は緩やか . . . 本文を読む
500ページ近い長編。登場人物が多く、最初捌き切れない感もするが、警官二人の行動が面白く、読み繋げる原動力となる。
ただミステリーとしてはおおざっぱな感じもしなくはなく、ただの読み物の域を出ないかなあ。作りものじみていて、親近感がない。
それでも冒頭とラストのシチュエイションは読者をハートフルにするテーマで心がほころびる。伊岡の面目は立った。 . . . 本文を読む
いつも見ている伽羅倶梨劇団。もう10年以上?しかし、いつも出し物は人情ものでいて、新鮮。そして心にしなやかに、またずっきりと入り込む。これはもうナオミさんの日頃の精進以外の何物でもない。そんな感じが今回特に思った。
何たって、演技している役者さんたちの観客を思いやる気持ちが動作、特に表情に溢れている。演技をしようと思っていただけではあんなハートフルな情景を創れない。彼らから観客に常にメッセージが . . . 本文を読む
前田アキヒロ氏は翻訳ものがお好きです。これまでの劇はセンスあるコミカルでいて、楽しい。そして深い人生劇もある。今回はミステリーじみた探偵ものだが、僕はまともに犯人当てを推理していたものだから、ちょっと外れてしまいましたが、それでも楽しく明るい劇であります。
いつもながら舞台づくりが豪華で精緻。こんな舞台は終わった後、解体するのが惜しいでしょうなあ、そんなことをまず考えてしまう。贅沢な大道具であり . . . 本文を読む
舞台の奥に大きく掲げられている大坂の808橋地図。ずっと思ってたんだけど、東が上にある。その架空線上には大阪城が。現代の地図とは随分感覚が違うが、当時は大阪城を東西に発展していたせいだろうか。
これに目をつけた林は西方浄土とミックスすることにより、不思議な大阪噺を見せてくれた。
林の作品は能との融合劇でも知られるように、奇想天外な宇宙的な構想に身近な話をくっつける。これがまたたまらないほど面白 . . . 本文を読む
期待して観たせいなのか、随分とのどかで主人公の心象が見えてこない。全体にオブラートをかけた感じで、突っ込まないところが苛立たしい。
サリンジャーも一高校生にサービスし過ぎで、鼻白む。題名が良過ぎたかなあ、、。 . . . 本文を読む