毎年恒例11月に行われる一人芝居フェス。私が見るのは朝11時から夜7時前までの11本。途中2回休憩があるので、実際それほどきつくはない、と思って今年も参加した。
全国からくる精鋭たちの一人芝居。随分と工夫されている。それぞれ個性があり、楽しい。通常の演劇と違い、より寄り添うことができる。
でもその中でも、屈指の演技力を発揮する役者もいて、見てよかったと思う。来年は見られるだろうか、、。
「名 . . . 本文を読む
海の深い底から音に従って人々を思い出す、そんな詩的な小説を読んでいる感のある抒情的な映画です。
主役はチャンソクなんだが、ずっと静かに音色を変え伝わってくる音響こそ主役のような気がしてくる。その音に導かれチャンソクは人々との会話を思い出してゆく。
別れ、出会い、喜び、老い、死、哀しみそして住み慣れた街の光景、、。それはすなわちチャンソクの人生そのものであった。
淡い水彩画のような作品で、少し . . . 本文を読む
3編のオムニバス作品と終章のあっと驚く真実に戦慄する。
道尾の作品に出てくる登場人物はみんな影を帯び、人間が哀しい存在であることをうかがわせる。それは子供でも容赦なく陰影をつけ、描いてゆく。生きることは哀しいことなんだなあとつくづくと考えさせられる。
この視点が道尾の魅力でもある。ミステリーの手法を取ってはいるが、まさに文学であると僕は思う。今、そういう意味で日本に数少ない作家だと思う。
前 . . . 本文を読む
25年ほど前のアイルランドの話です。舞台は田舎の高校。そこで起こる若者たちのセクシアリティに悩む物語です。
設定が偽装恋愛というのがみそかな、、? まあ、無理があるわな。そのおぼつかない進行に観客が気持ちが入ってしまい、こちらもそのうち脳裡で青春しちゃうという構造です。
ラストはちょっと平板かなと思うけれども、こういう終わりでないと映画として成り立たないかな? 盛り上がりはあるけれど、ちょっと . . . 本文を読む
ミステリーファンなら一度は密室の謎解きに憑かれたことがみんなあるに違いない。この本は密室が好きな人にはたまらない本です。目がきりりと大きくなります。とにかくすごいです。
でも肝心の密室のその謎解き訓話に吾輩は疲れ果ててしまいました。密室を解くその分量はこの本の大部分を占めています。でも真犯人が出てはまた出るこの趣向は斬新です。動機はあまりにつまらないものでしたが、、。
でもミステリー好きには絶 . . . 本文を読む
なかなか面白い映画を見る。原作は未読だが、設定が秀逸。最初の安藤サクラの何気ない演技からこの映画に自然と入り込み、石川慶の魔術にかかり、そして映画鑑賞の喜びをしかと感じ取る。
人間、誰かに変わって生きていこうなんて、そういえば子供時代にふと考えたこともあったけな、、。それでも本作に描かれるようなあらゆる差別社会を生き抜く主人公たちは過酷であり、しかし強い。
差別をする方とされる方は人が生きてい . . . 本文を読む
ワクワクさせるような歴史ミステリーで、前半はとても面白い展開でかなりいい。ところが活劇じみたサスペンスを入れる辺りから、普通の冒険小説っぽくなってきた。これはミステリーではなかったの?という不満が徐々に湧き出て、そのままエンドへ。
まあ、前半がそこらの小説では味わえないわくわく感がすごく、最後まで持たなかったのが惜しいが、それでも誰も死ぬことなくまあこういう歴史ミステリーもたまにがいいか、と感じ . . . 本文を読む
いつも大人の人生をしっかり見つめた劇団です。30周年だとか。最近そういう長寿劇団をよく見ています。
今回は少しコメディタッチの清掃員を加え、明るい色彩もあるが最終編はまさにこの劇団のスター俳優であるお二人が老いのもがきを演じている。
ある意味すごい挑戦です。まだまだお若くおきれいなお二人が死を意識した劇に向かうことで、僕たち観客ははっとする。
それは満員の観客に日頃感じさせている老いというも . . . 本文を読む
かなり詳しい法廷叙述とタイムリープの咬合。そのタイムリープが2人もいるというトンデモ設定。斬新だ。
最初は面白く読み続けていたが、そのうちこのタイムリープ自体に慣れて来て、そこにミステリーを入れるのはグッドアイデアなのだが、無理があるし、馬鹿馬鹿しいとも思えるようになる。
ミステリーでは後半がどんどん面白くなるのが常道だが、僕の場合、だんだん垂れてきた。今まで五十嵐の作品はとても面白く読ませて . . . 本文を読む
140分余りの長尺なのに全然それを感じない素敵な作品でした。まるで日本のホン・サンスとでもいうべきタッチと展開が絶妙で酔いしれました。
人と人との関係は何なのか、ということがテーマだと思うのですが、題材が不倫などを堂々と出してきているのに、いやらしさがなくむしろ清潔感さえある。ところどころ聞こえる人生のエスプリもさもありなんとじっくり聴き耳を立てたくなるほど、納得させられる。
そういえば、人を . . . 本文を読む
9人の作家による書かれた脚本を大熊が演出。9編の物語だが、大熊が構成しているので見た目は150分の長編劇ともいえる。配役はそれぞれ一貫して同じだが、ある激安スーパーに行き交う人々の群像劇だ。
これが面白い。9編それぞれ主役が変わるが、脇役は使いたい放題に自由。作者の個性と演出家大熊の才能がぎらぎら光り、緊密な演劇を呈している。
いつものダンスめいた様式美は影を潜めているが、演劇の原点をじっくり . . . 本文を読む
珍しいカナダが舞台の演劇だ。時は第2次大戦末期。残された女たちの戦争の実態が鮮明に描かれる。
今のウクライナ情勢を見るにつけ、どこの世界も戦争が起こっていたらあり得る話だ。女性だけの話だから、男性たる私が聞いていて、前半は少々退屈気味。それでもけっこう美人ぞろいの女優さんたちの演技がすごい。見ていて怖いぐらい。
後半になって、それぞれ人の女性たちの苦悩が浮き彫りにされていく過程は圧巻であった。 . . . 本文を読む
関西きっての人気及び実力劇団だ。今回の出し物は「漂流」。人生はそろそろ終わりに近づいている吾輩も今でも漂流していると言える。相変わらずドタバタ劇からの始まりであるが、時々どすんと居座ったような静かな人生への吐息が感じられる内藤ならではの演劇である。
深い。舞台狭しと溢れている様々なガラクタさえいとおしくなってくるから不思議だ。
出演者の演技の達者感も抜群だが、バックに流れる映画音楽ががぜんいい . . . 本文を読む
題名からして、すぐ読もうと思いました。期待が多少あったんだけど、設定等それ以上の出来。ミステリー的にはそれほどでもないが、全体を包む詩的で小哲学的な内容もなかなかほれぼれする。僕の好みである。
何と言っても、AからFまでの6つの観覧車に当然ながら6つの人生がうごめいている。構成が、観覧車で回っているように短い文章でぐるぐる回る。そしてラス前では、順序が破綻し6つの観覧車が後戻りする。そして文字数 . . . 本文を読む