本格時代劇だ。リメイクの元映画は未見だが、冒頭から映像が厳しいほど美しく、脚本もしっかりと丁寧に作られており、あの荒っぽいイメージの【三池崇史】の映画とは思えないほど秀逸な作品となった。
豪華な俳優陣が一人一人最適な演技をしてこの時代劇を盛り上げている。【市村正親】がちょっと年齢的に老けているかなあと思ったが、でも【松方弘樹】なんかは水を得た魚のように、画面では若々しく往年の時代劇の活きのよさを . . . 本文を読む
あの、浜辺で聞こえる波の音。それは不安感を募らせ見ている者の神経を逆撫でする。
見終わってから、僕は2時間ずっと波の音を聞いていたような気がするのだった。単純な話なのである。イランではタブーなんだろう、未婚の男女を家族旅行に誘う。しかも泊まり込みで。それはイランでは宗教的にも許されない行為なのだろう。
だからこそ、婚活サポーターの主人公は家族にも彼らが婚約者同士であるように装う。この常識では考 . . . 本文を読む
韓国映画お得意の迷路的ミステリーだが、ちょっと詰め込み過ぎみたい。確かに見ていてどうなるかはらはらするので、そこらのミステリーの常道をはみ出しており、観客へのサービスも満点である。
しかし、ここまでもつれさせると、少々つじつまの合わない部分も出てくる。だって、あの監視カメラに写っていたフィルムがどうして修正されて、そして外部に持ち出されたのか、映画では説明がなかったのでは。(また、被害者の皮膚か . . . 本文を読む
先日ユトリロ展に行く。美術展は先月神戸まで浮世絵展を見に行ったが、それ以来。
JR京都駅の伊勢丹で催されているので、久々に朝の新快速に乗る。いつも混んでいるのでどうなのかなあと思ったが、何と時間が10時頃だったのでガラスキ。私鉄に較べると料金が少々高い分乗降客も少ないのだろうか。
30分ほどで京都に着く。久しぶりの伊勢丹百貨店。最近あまり百貨店なるものに行かない。本は売っていないし、紳士用品も少 . . . 本文を読む
登場人物が極端に少ない(4人)一応ミステリーもの。話としては結構面白い。伏線も十分だし、あっと驚く解決編もあり、うまく騙される。
俳優も若い人ばかりで、それなりにこなしてはいるが、やはりそれぞれの役柄を十分に掘り下げているとは思えない。セリフも時々噛むし、初日だったせいもあるのだろうが、ちょっと練習不足気味か。
ちょっとひねったつもりのホストクラブのやり取りも思ったほど面白くなく、(どう考えて . . . 本文を読む
3Dにもなったお馴染み人気ハラハラアクション映画だ。題名からすると、ひょっとするといよいよかな、とも思い満員の観客席に座りこむ。最初のメッセージ作りは御愛嬌だけれど、以降のウミザルたちの【加藤雅也】のお付きみたいな振る舞いは、ちょっと違和感があったなあ。
海上保安庁と言えど、船の設計者たるVIPを警護するようなこともあるんだ、と少なからず情けない感じを感ず。そんな設計者でも最後の最後でレガリヤを . . . 本文を読む
読みやすく、クリスティのスリーピングマーダーを誇示したところは、ミステリーとしてのしたたかさを窺えさせるが、どうも自然さというか、リアルさに欠ける。
だいたい病的に虫などを殺す子供を殺害するという動機自体は新しさも感じて、それほど人が言うほど後味も悪くないと思うけれど、それを宮沢賢治の影響というのはちょっとどうなのか、と、、。
本当にそういう動機で人を殺すなら、トリックを使ったり、ましてや犯人 . . . 本文を読む
ようやく今年の猛暑も日本列島から去ろうとしているようだ。何せ110年ぶりの酷暑。今、戸籍上だけの人は除き、ほぼ生きている全員が経験したことのない歴史的な暑さだったと言えるのだろう。
30度は越えていても、太陽を感じる皮膚は柔らかい日差しに感謝する。風も心地よい。これから寒くなる季節までこんないいときを感じることができるのだ。こういう思いも例年は感じることがないので、今年は自分自身本当に季節をその . . . 本文を読む
映像を前面に出した演出方法がいい。前半は特に敢えて説明を省き、ほとんど映像でぐいぐいと引っ張っていく。映画とは小説ではないのだから、なるべく映像で説明すべきと僕は思っている。そんな映画の文法の教科書でもある作品である。
その映像の何とりりしく優雅なことよ。どこのシーンを取っても一流の絵画である。素晴らしい感性を持った作品である。風にそそぐ木々の葉の揺れが命の揺らぎを感じさせる。
画家とは何なの . . . 本文を読む
トルストイが自分の信条を具体的に実践していた、って聞いたことがありました。この作品は世界的作家が自分の想念と、いちばん卑近で身近な現実生活(家庭)との対立で悩むエピソードを映像化したものであります。
日本でも武者小路実篤らが「新しき村」という実践活動をトルストイの影響で行ったというはるか昔の授業を思い出しました。何と博愛主義者と理想主義者の集まりなんだと当時子供心に思ったものです。農奴解放前のロ . . . 本文を読む
最近のCMでしたか、「あなたは国家のために死ねますか?」というインタビューがある。この映画を見ていて常にそのことを考えていました。勿論、CMではほとんど否定するのだが、一人だけ初老の人だが、家族のためならそうするかもしれないと言ってる。
この映画の主人公は息子に明るい国家を見せたいがためにスパイ行為を続けている。だから通常よく行われる金銭の授受は全くない。不思議と思う人もいるかもしれないが、日本 . . . 本文を読む
ミステリーなんだろうけれど、ミステリーの体をなしてはいない。なるほどリスベットのおぞましい過去は開梱されるが、この映画はその説明と最終作へのつなぎとしての構成をしつらっただけだ。少なくとも天才ハッカーとしての見どころは皆無であった。 . . . 本文を読む
今かろうじてその日を耐え、生きている人たち。底辺を支える肉体労働者の若者。叔父の経営する解体作業を黙々とこなす。家に帰れば離れたところにある風呂場へ寒いのに裸のままで移動するしょぼい家屋。そして、祖母との質素な夕食。祖父を想う気持ちも強いいい青年なのだ。
でも彼には空白がある。心はさまよっている。両親がいない。自分を見捨てた母親の存在も後で分かってくる。物心ついて偶然居たところは、経済的にも家族 . . . 本文を読む
これは面白い。2時間強、飽きさせぬ勢いが続く。優柔不断で、いかにもどこにでもいそうなふにゃふにゃ警察官がやるときにはやる、といった感じが色濃く出て、我々の人生観まで親近感を持たせてくれる。
『チェイサー』と主演者といい、話の展開といい、よく似ている。しがない普通の刑事が悪に対してしつこいほど、相手がへとへとになるほど追いかけてゆくといった、ねちねちものだ。その間随分へまばかりしているんだが、追い . . . 本文を読む
普通の人は気付かないかもしれないが、【宮崎あおい】と【大竹しのぶ】の関西弁は本物だ。東京の人だと思うが、この関西弁のごく自然なイントネーションはホント心地よい。無理して使うぐらいなら標準語でしゃべって欲しいという関西弁が氾濫している中、これは実に快挙でさえある。
それほど実はこの映画、リアルさにはかなり凝っている。あの、長屋風情の時代から取り残されたかのような借家と地続きの大家の母屋。あんな、家 . . . 本文を読む