一応二つの密室解きがこの本のメインテーマであります。肝心の殺人が起こるまで延々と子供たちの話を読まなければいけなく、ちょっと投げそうにもなったが、成長してからの描写はなかなか読める。
そして二つの密室の謎も心地よく読むことができた。ラスト近くの真犯人の行動にふと不信感もあるが、まあなかなか面白かった。ラストでの人物の取り違えもなぜか新鮮な驚きもあり、よかったと思う。
評価では賛否両論らしいが、 . . . 本文を読む
冒頭に大河に一人舟を漕ぐ姿。色はくすみ、たゆとう流れる。静かでしかし何かはらみそうな予感を感じさせるファーストシーン。でも静かなシーンはこれのみ。
それからカップルのセックスシーンが森に。しかしここでカメラは、驚愕しそこを離れるカップルをほほえましく映す。そこから一転し、問題の団地解体闘争シーンとなり、カメラが主役の映画となり、唸り、吠える。2時間強、観客はカメラの蠢き、うねりをずっと感ずること . . . 本文を読む
冒頭からの書き出しはなかなかこれはと思わせる快活な出だしだったが、セキュリティ等の説明が長く、饒舌。それはこの厄介な密室の謎を解くことになるはずだからと、真剣に読んでいたが、この謎はあまりにいい加減過ぎますよね、と言いたい。
この小説の印象的な部分は、冒頭のイラクでのテロ行為シーンです。これがいいだけに少々残念。 . . . 本文を読む
大阪弁が飛び交う人情喜劇だ。一瞬松竹新喜劇かなと思うほど、みんな大阪のそのノリに徹してる。大阪住吉界隈のレトロ商店街のみんなと住民とのその心の通いがミソである。
美味しいタコ焼きの店を守っている女性のもとに10年ぶりに息子が帰ってくる。そして孫まで連れて、、。と、話の芯はきっちりと通っているので、演劇的にも十分鑑賞に値する脚本である。
こんな、気楽な感じで生きて生きていけたらいいなあと思うのは . . . 本文を読む
高校の文化祭。出し物のお化け屋敷の最中で行われた殺人。まあ、犯人を探し当てるまでのプロセスは結構面白かったが、全体の饒舌で吾輩のような年配にはついていけません。
問題は犯人はこの人だと言われても、それまでの書き込みが少ないので果て誰だったかなあ、という程度。そして何より動機がいくらなんでも薄っぺらすぎて、とほほ状態です。
とはいうものの、同級生二人の探偵ぶりはなかなか堂に入ってましたから、加点 . . . 本文を読む
この映画、ポスターが断然よく、気に入った。最近東出主演作品が続いているが、偶然だろうか、、。今回もいい役柄で、彼は役者修行を十分しているように思える。
さてと、話は集中豪雨で車ごと土砂に埋まった妻子の衝撃から日常を取り戻せない男と、派遣切れで島に戻ってくる女、そしてその父親の物語である。
3人はそれぞれ何か喪失感を持っている。男の家のベランダには黄色の飛べない風船が揺らいでおり、それはラストに . . . 本文を読む
劇場に入ると壮大な舞台装置。立派です。この劇場によく来るけど、これだけの大道具は稀有です。すごいですよ。俄然、鑑賞欲がもりもりです。
内容は死刑囚を管理している閉鎖空間。そこでは国家に寄与する人々、国家のために死を運命づけられている死刑囚たちがいる。一人の死刑囚と、その他の同様運命者、死刑囚の両親、被害者たちが蠢き渡っている、、。
ミソはその死刑囚が障害を持って生まれてきたという視点です。鋭い . . . 本文を読む
ミステリーの方も新年早々超驚く秀作に出会う。これは4編の短編集。どれもミステリーオタクにはこの上ない至福を伴う内容となっている。僕は度肝を抜かれたかのようにページを繰る。私の顔はほころんでいる。
この阿津川 辰海 っていう人はどう人なんでしょうかね。まだ30歳にもなっていないのにとんでもない読書量。そして何よりその卓越したミステリー的才能。他の作家とは群を抜いているようだ。
この4編、どれも素 . . . 本文を読む
原作が辻村深月でミステリーでも屈指のストーリーテラーだからか、とても感動できる忘れ得ない作品となりました。
予告編を見ただけの印象とは全く違う作品で、そこには現代に生きる人たちの避けては通れない問題点を中心に据えています。そこがまず立派です。
7人の子供たちの心の闇はしかと分かるし、彼らのそれぞれの葛藤も丁寧に描かれているので共感します。こんなに子供たちが実際悩み生きている、そのことに私ははっ . . . 本文を読む
何気なく見た映画が素晴らしい、こんな映画ファンにとって至極の作品です。
幼馴染のやんちゃ男3人と一人の女の子との40年の人生を135分でまとめ上げている。
私のように歳月をう~~んと経た人間にはどんな些細なこともすぐビビビンと響くし、青年期を過ぎた人たちには今豊穣の毎日が控えているでしょうから、過去にも将来にも幾層にも見える重層的な人生パノラマを思い描くことができるでしょう。なおさらに思春期の . . . 本文を読む
女性がほとんどの演劇である。一人男性がいるが、女性である。女子大の演劇部で合宿しているある島の民宿での話である。何となくうららかな、女性同士の葛藤が見られるのかなあと思っていると、厳しいさめざめしたような女性の心象が全面を覆う。
ある意味ホラーでさえある。人と人との関係を厳しくぶっつけたまさに生の女性たちの遠吠えが聞こえます。土橋さんって、怖い方ですねえ。人間を見るまなざしが厳しすぎます。
そ . . . 本文を読む
久々の有栖川作品を読む。あまり肌が合わないというか、ずっと遠のいていた長編もの。評判作です。
文章が結構い饒舌っぽく、やたら長い。あまり先に進まないなど、他のミステリーとはかなり差がありますね。450ページの長尺だが、殺人といっても1件だけで、これをどう読ませるか、、、がテクなんでしょうね。
ラスト近く瀬戸内海の小島に真相を追って、二人が乗り込むシーンがやはりいい。肝心の究極的謎はちょっと噓ぽ . . . 本文を読む
2022年も鑑賞数少なく48本。演劇鑑賞数を合わせて86本だから、まあまあか、と勝手に思っている。大晦日に見た「柳川」が強烈。しばらくその余韻で生きてゆくだろう。日本映画はあのホン・サンス的タッチが映画を見る喜びを倍加させる。
洋画 1.柳川(チャン・リュル) 2.三姉妹(イ・スンウォン) 3.スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム(ジョン・ワッツ) 4.白い牛のバラッド(マリヤム・モガッダム) . . . 本文を読む