小津の現存するフィルム、ただ一つ見逃していた作品。やっと見ました。購入してから2,3年は経つだろうか、けれどこれが最後だと思うと見るのが勿体なく、大事にしたい気も出てきて、いつまでも残っていた僕の最後の小津作品でした。
冒頭の運動場での先生と学生との何やら古めかしい、それでいてやんちゃな掛け合いはラスト近くでのカレー屋での合唱に結び付くんですな。うーん、やはりなかなか計算しています。
世界的大 . . . 本文を読む
前作「ハート・ロッカー」のあの極度の緊張感を、この作品で何と3時間も続かせるこの演出力は、キャスリンを巨匠と読んでも差支えない出来である。それほどの快作であり、けれど立派な娯楽作でもある。
冒頭の、唐突に死にゆく被害者の声を集めた音声だけの映像。これを聴いてまず最初に10年前の3・11を観客に思い起こさせる。そしてこれだけのことをやってのけた、もしくは非人間的な悪魔の集団に対して、何の遠慮・呵責 . . . 本文を読む
西宮の大きな舞台。横も結構大きいが、縦(奥行)も椅子3席分を削り取って広がり、巨大な空間が出現する。しかも波間を布で表現し、舞台移動も人(黒子)が頻繁に行うという、これは今までの演劇にない革新的なものを岩松が目指しているのが分かる。
冒頭は波間に揺らめく船上生活者である。大地を離れ海を見て生活する。そして大きなガレキがこちらの方に流れてくる。まるで波間を漂流する家族たちとは、、。3.11を意識せ . . . 本文を読む
旬を過ぎた役者二人ととまあ粋の良い若い役者でこのオカルト風映画をどう料理するか。でもやっぱりネームバリューは大きいね。やはり知らず知らずチケットを買ってる自分、、。
話は偽超能力者を血祭りに上げる教授たちと追い込まれるデ・ニーロの心理作戦なのだが、後半に至るまであまりデ・ニーロが出て来ないというのがなかなかうまい展開。でも、ウイーバーも途中で出て来なくなるし、そうなると一挙B級映画に邁進するあり . . . 本文を読む
お気に入りの中村義洋作品。そして想像通りのいい出来で、感動。中村は健在。こんなにいいことはない。
題名と予告編から引きこもり少年の陰鬱な話かなあと思ったが、とんでもない、題名から印象付けられる遺書的なものは全くなく、あれは授業の最後で生徒が会釈しながら言い合う「先生さようなら、みなさんさようなら」の一フレーズなのだ。(ぼくはそんなことしなかったけれど、、)
そしてこの少年は小学校の卒業式を境に . . . 本文を読む
ニーナ・ホス の冷たい美貌が画面を震わせる。年の頃は30半ばぐらいか、でも強い化粧とうらはらに疲れを感じさせる皺さえ彼女の凛々しさを伝える。細く長い脚、ぶらぶらと華奢な腕、指。そして彼女がこぐ自転車。美しい。田園風景に溶けてとても美しい。
彼女のぶっきらぼうでかたくなな口のきき方。心を閉ざす女の生きざま。まさにそれは氷の世界だ。タバコをぷかぷかふかす。しかし心は報われない。セリフは時々発せられる . . . 本文を読む
いろいろ宗教的な話も出てくるけれど思ったほど宗教色は薄くそれほど哲学的でもない。勿論ベンガルとの227日は映像がすごく、だんだん痩せて来るベンガルの様子などはリアルで映像史に記憶されるべき作品でもある。
敢えて考えるに、あのボートと動物との同乗はキリスト教のノアの箱舟を連想させるし、ラストでほのめかす幻想話からはオランウータン以下が家族でベンガルは自分の分身だとも認識される。
でも映像はものす . . . 本文を読む
トムも50歳って?フェイスはさすがぶ厚くなってきた感じで寄る年波を感じますなア。でも彼の神髄からほとばしる精気が彼の映画を形作る。いわゆるトム’ズ映画でなんです。
冒頭は結構面白いです。無差別殺人が起こり、犯人が逮捕されリーチャーを呼んでくれという。リーチャーって誰だ。そこにトムが来る。快活な映像シーン。手際良い。
でも意外とここから通常のミステリーが始まる。5人の被害者をよく調べ . . . 本文を読む
長く埋もれていたDVD、このたびやっと見ました。実にじわっと来る秀作でした。父親が75歳でカミングアウト、というのが通常からは衝撃の事実なんですが、それ以降彼は人生を取り戻したかのように楽しんでる、、。
何か、すっきりしないんだよね。主人公の息子と同じように、それじゃあ、あの云十年の結婚生活は何だったの?結婚生活で生まれ出た息子は一体全体何だったの?母親の気持ちは一体どうだったんだろう、とか疑念 . . . 本文を読む
観客の年齢層がいつもよりかなり高いかなあと思っていた。こういう場合、劇団員の家族が見に来ているっていうこと多いんだけれど、劇が開いてから何故だかすぐ分かった。
出演者の平均年齢、恐らく60代後半。これは僕の劇鑑賞歴でもかなり異例の体験。ちょっとびっくりする。セリフも少々慣れていない人も居り、初めて演劇を始めた人もいる模様。
話は日本の、そして日本人の、昭和を生きた人たちに突き付けられた迷路ゲー . . . 本文を読む
イタリア映画でこんなにTVムービー風でやたら出演者多いけどひっついたり離れたり、しかもこれだけ中味のないのもまた珍しい。少なくとも映画料金を出して映画館で見る作品ではないなあ。窓口でもらったパスタがやけに重い。 . . . 本文を読む
なるほど。グレン・クローズがこの映画に惚れている様子は分かった。そりゃあ、女優冥利に尽きる役柄だね。女性が男性として生きる一生。眠っていても心の鎧が溶けることはない。そんな人生。けれどもそれも人生、、。
19世紀のダブリン。身分の差が激しく、庶民は重労働が主で、ましてや女性一人で生きることは困難な時代だ。若い男たちはアメリカを求めて旅立っていく。そういえば現代のアメリカで重要な地位についている人 . . . 本文を読む
久々のタヴィアーニ作品。そしてベルリングランプリ作品と来ればいそいそ映画館にも出かけたくなる。館内は年齢もさまざまな映画ファンが今かとその時を待っている風だ。
冒頭、(演劇の)ラストシーンからスタンディングオベーションに始まるスタッフと観客との感激シーンなど、盛り上がるシーンが映像に流れる。そして突如暗転しモノクロのオーディション風景が映される。それは6か月前のことであった。
俳優陣が決まる。 . . . 本文を読む
時代設定が最初よく分からず戦後(どの戦争?)のどさくさかなあとも思ったが、出て来る調度品から現代であることを知る。旧ソ連からポーランドへの逃避行なんだよね。逆だったら分かるような気もしたけれど、旧ソ連がこんなにひどい状況とは、、。
この映画にあまり関係ないんだけれど、駅構内にこれほど浮浪者がはびこる国があるっというのも驚くね。地域的にはベルラーシ辺りか。老人の誘いを振り切り、また若き新婚者から施 . . . 本文を読む