『めぐりあう時間たち』で本当に作りたい映画を作ってしまった【ダルドリー】の興業的な思惑から『リトル・ダンサー』へと回帰したいわば二匹目のどじょうでしょうか、、。
花瓶から見つけた鍵一つであんな大捜索をするなんてやはりちょっと小説的過ぎるなんて思ってしまうが、それが最後に単なる徒労であることに気づくのはちょっとひねりがあります。
母親も息子も愛する人の最後の声をあのときに、聞いてしまっていたとい . . . 本文を読む
前作『アンチクライスト』の過激な遠吠えに閉口した僕ですが、やはり気になる【トリアー】の新作を恐々見てしまいました。いやあ、さすが大人。持ち直してる。特に前半の「ジャスティン」は一編のドラマとしても秀逸。意外性の展開もよく、さすが【トリアー】だね、と感心。
とにかく1部が絶品。だいたいこの作品、2部に分ける必要もなかったのに何であんな構成にしたんだろう。2部の【シャルロット・ゲンズブール】はそれほ . . . 本文を読む
『CUT』の後見た映画だからか、【西島秀俊】のイメージが良く似ていて、多少混同してしまうぐらいだった。両作とも彼の暗い部分を前面に出し、「人間とは何か」といったドストエフスキー的興味に挑戦しているようである。
でもね、ちょっと映画的に深みが感じられない。テーマは重く深いが、大テーマに突っ込んでいない。悪く言えば表層的。このテーマを描くにはまず監督たる【伊勢谷友介】が人間についての考察について何ら . . . 本文を読む
これが今の地方都市の現実だなんて言われても、特に驚かないが、外国人労働者と不法滞在者たちの渦巻く甲府を見るにつけて、え、いつからこんなことになっていたんだっけとやはり自分の目を疑ってしまう。
駅前商店街のシャッターが締まりまくるというのは全国見飽きているせいか驚かないが、ラッパーホールでのあの人種差別的混乱はちょっときな臭く、でもある意味ここだけが映画的でもある。
その他、下請け土木業者の悲壮 . . . 本文を読む
ある山里にゾンビ映画の撮影隊が駐留する。村にあるのは大木と川とそして人の心。たまたま映画のエキストラに参加することになってしまったことにより村人と撮影隊との今や都会では消滅した心の交流が始まって行く、、。
あらすじと言えばそれだけなんだが、2時間強、映画を持続させる息吹は確かだ。そこには人の呼吸がある。自然の恵みと暖かさがある。何より人として生きてゆく確かな歩みがある。
一本の木が目の前にある . . . 本文を読む
冒頭から【クォン・サンウ】の捨て身の挑戦だと分かる題材であります。 てんで、カッコよくないチンピラ風情の役柄なんです。しかも殴られ役専門で、超ダサいといっても過言ではない出だしです。
これだけのスターがこんなにカッコ悪い役柄を選ぶのは何かあるなあとほくそ笑むと同時に彼の勇気を讃えたい。恐らく今までのイメージを一新したかったんだろうなあ、、。
それは彼の病名が無痛感症であり、しかも交通事故で一人 . . . 本文を読む
昨年の日本映画ベストにも選ばれている「一枚のハガキ」を見てずっと読みたいと思っていた本があるのを思い出した。「遺書配達人」という壮烈な命名の著書である。
一連隊の一員が病気のため内地へ転送される。その連隊は上海へ向かうことになっており、戦地厳しき中、内地へ帰る人間に「もし君が生きていれば」と言い残し家族あての遺書を託すわけである。その数13通。
そして男は戦後8年をかけ、仕事も保険の外交でどう . . . 本文を読む
最近のリメイク映画の、当初上映された時期からのあまりにも短い期間についての上映について、その意味を考えている。リメイク映画とは言わず昔はリバイバルといったものだが、だいたい10年以上は元作品と間隔が開いていたように思う。
昨年上映された「モールス」(10)は何と「ぼくのエリ 200歳の少女」(08)から2年しかたっていない。原作が一緒でも内容を多少変えていればそれなりに見られるが、問題は演出、出 . . . 本文を読む
僕と矢口との相性は今まで見た作品4作がすべて採点4(5段階)ということは悪くないはず。けれど、5もなければ3もないというところに矢口の作品の微妙さが現れていると思う。
そう、この作品もまたまた4点です。ざっと言ってしまえば面白くはないけれども楽しかったという評でしょうか。コメディを描いているつもりなら面白くなければならないはず。楽しいという印象は矢口の突込みどころの鋭さが足りないとも言えますが、 . . . 本文を読む
ピアノの調律師のこだわりがすごい。ここまで来るともう完全に芸術ですね。それにしても名ピアニストがこれほど調律に負っているのかと知ってしまうと、少々これからCDを聴くのも恐くなりますね。
ピアノは名器と調律次第で音はどうにでもなるということにもなる。
完全に僕は演奏技術とは何なのか、彼らの芸術そのものを疑っている自分に気づきます、、。おお恐。
でも、演奏家自身の耳に聞こえている音と観客が聴いて . . . 本文を読む
映像と主役を張る二人、それはそれは美しいデス。しかも女性のファッションはシーンごとに彼女のか細い体の線をアピールし、あの年で本当に努力してるのおと感心したりします。
だいたいあり得ない話を映像化しているものだから、こんなこと実際にはないことは観客も分かっておりまする。段ボール箱で登場する男性ペットシーンなど最たるものだが、それは別にいいのではないか、とも思う。
でもあまりにきれいに描き過ぎてい . . . 本文を読む
秀作「扉は閉ざされたまま」にやはり、当然というべきか似ていますね。石持は最近ちょっとマンネリ気味で心配していたので久しぶりの快作となりました。
やはりこういうフランス風心理的なミステリーはなかなか日本人には書けないです。こういうところが立派です。倒叙ものとしてはこれ以上ない出来です。ほとんど一気読みでした。ただ、ラストのオチはある意味、意外性がなさすぎかも、、。
でもそんなことを補える秀作で石 . . . 本文を読む
人間の、いのちのつながり。それは限りない歴史の悲鳴、喜び、慈しみ、愛を通して現代に至っている。人のあり方を問う強烈な秀作である。
ただ弟を救おうと鍵を掛けてしまった姉は、その行為により結果として自分の命を永らえることになる。鍵を掛けなければ恐らく家族全滅だったろうから、やはり彼女はこの行為を罪と捉えて苦しんだが、いのちの循環は絶えることはなかったのであり、結果としてはよしとしなければいけないので . . . 本文を読む
今や泣かせのミステリーとしての存在感が強い【東野圭吾】の新作。『容疑者Xの献身』では大いに号泣させられたが、今回は静かな涙でありました。
どうもミステリーとしては意外性が全くなく、しかも動機からして家族ものに限定してしまいスケールが小さくなり、社会性が感じられないのである。
伏線としての、水泳シーンがフラッシュバック気味に何回も映像として流れるのはマズイと思う。ミステリーでこういうことをしたら . . . 本文を読む
冒頭での老け顔の【ディカプリオ】にあっと驚くが、まあこの役は役者冥利に尽きるんでしょうなあ。そんな彼の志がひしひしと伝わる映画でもあります。しかしそれはパーマーの君臨したアメリカでは効果あれど、日本ではただの胡散臭い爺のハナシになり下がっていることは否めない。
どのエピソードもイーストウッドは全否定する。政治的手腕さえ認めていない気がする。それほどこのパーマーなる人に全的信頼を置いていないイース . . . 本文を読む