井上光晴の名作「明日 一九四五年八月八日・長崎」の演劇です。観客たる我々は長崎に原爆が落ちたことを知っている。そして舞台に登場する人物たちはそれを知らない。健気に戦争末期の日本を生きている。少しでも明日を信じてみんな生きている、、。
一つ一つのシーンがすべて真実で、清らかで、今当たり前のように平和を生きている我々は彼らから一番幸せの輝きをもらう。ラストは泣けて席を立てず。
俳優陣、すべて完璧の . . . 本文を読む
卒業公演で、こんな実験的な地球的SFを素材に公演を行うって、勇気がいることだと思う。何か内容が福島原子力問題をベースにしている感があり、興味深いが、ムズイ。舞台は集団のダンス的演技から始まり、いよよ人間の深源に入ってゆく、、。
セリフ等俳優たちの演技は完ぺきに近いと思う。ミステリー的にテーマを描いて入りやすくはしているが、人間とは何か、を本追求しているので、正直見ていて疲れる感も無きにしも非ず。 . . . 本文を読む
ワイルダー作「わが町」は今まで何本も見てきたが、別役実がそれを基に神戸の大地震をミックスさせた劇だと言える。そしてこれが思いがけない相違を見せつける。
神戸が後半、クローズアップされるので、何か今までのワイルダー劇からイメージが浮遊されているかのようである。ワイルダーと別役とでは見続けるまなざしが違うのだろう、少し違和感を感じる。ワイルダーからは人生の営みの普通のことが生きる源泉となっていること . . . 本文を読む
土田英生は正統派演劇者である。個性的である。ユニークすぎます。面白い。独自のお話を築いている。ほかの劇団にはない地味目だが何より孤高路線を走っている。
これらが僕の土田論であります。なんといっても、今回、明治初期と現代とを血縁だけで辿るその見事さ。いやあ、感心いたしました。これぞ土田の魅力なんですね。こんな変な、不思議なことを考え、それを脚本にする作家は他にはおらんだろうと思います。すごいです。 . . . 本文を読む
二人芝居だが、それぞれ面白い仕掛けも用意し、シンプルだが重奏な響きを持つ素晴らしい演劇に仕上がっていて、もう感激。ラスト近くから涙が止まらず席を立てない状態に。
なんといってもお二人のいつもの役柄からは考えられない熱い素晴らしい演技にびっくり。もう見違えるほど素敵でした。役者って途方もない引き出しをもっているんだなあと感心する。あの中央の奥の壁で瞬時に衣装を変える見事さ。いやあ、何を言っても今は . . . 本文を読む
不条理ミステリーという触れ込みは全然ちんぷんかんぷんだったけど、7人の俳優たちの若い世代の想いは十分伝わったと思う。
2時間全編のシュプレイコール絶叫、ダンシング、途中で水飲みタイム、さらに台本ありの朗読があったりなど、面白い展開だったが、最後には収束させた終わりで、なかなかのもの。彼ら、かなり体力を消耗したのではなかったか。一日2本はきつそう。 . . . 本文を読む
6年ぶり、大阪公演。東京にいたときは毎年この演劇を見て年を越すといったいわば年越しそばのような演劇でした。そしてこの演劇ももう36年経過しているという。僕は見始めてまだ15年ほど。でも結構館内は若人から実年まで様々な年齢構成。高泉淳子さんのキュートな年齢不明がそうさせているのだろう。
さて、今回もロニーが客演。前半がロニーとのレストランでの会話が主体。公判が二人のライブショーとなっている。
大 . . . 本文を読む
さすが年季の入った演劇集団。多数の出演者。十分言いなれたセリフの言い回し。何より、奈良時代、天武系一族の女帝時代の歴史絵巻が楽しく面白い。あの怪しげな鶴の張本人、与兵衛が道鏡になっていくのはとてもユニークで面白かった。
きらめきの奈良時代絵巻を堪能できたのは、脚本がかなり一を占めている。古代史を知っている人はなお楽しく、歴史がまったくの人はそれなりに楽しい秀逸演劇ドラマであります。
八嶋智人は . . . 本文を読む
コトリ会議、久々の新作。若旦那家康さんの配慮で、かなりの時間前に劇場に到着するも、ロビーにはコーヒーが用意されていたり、過去の演劇がモニターに上映されていたりと、とてもアットホームなくつろぎの空間が用意されていて、いい気分のまま演劇に入る。
そして劇は、これがなんと100年後の地球の姿で、大戦に明け暮れる人類はもう8次大戦のさなかである。人間はつばめと混血し、人間部分の意識は30%に成り果てる。 . . . 本文を読む
学生演劇で3時間もの長丁場。しかも自ら書き上げたという労作。これがまた面白い。若いっていいなあと、舞台を見ていて思う。みんな溌溂。ダンスあり、アクション有り。精一杯飛んでいる。
他の演劇とは一線を画すように、セリフのしゃべりも明確。トチリもなし。すごい練習量だと思う。みんなよくやった。
前半後半と分かれるが、長くは官にないまま、余裕を残してジエンド。最後もどんでん返し風で面白かった。
28期 . . . 本文を読む
今日一日、しかも一回だけの演劇公演、というのはおそらく僕の長い演劇経験でも初めてのこと。人気俳優、南野陽子さん、大谷亨介さんが夫婦役で、最初と最後をきりりと締める。その他、関西在住の演技派どころ18名も参加して、いぶし銀で、ポエムのようないとおしい劇を奏でてくれる。
1000年の時代をつなぐ神戸。そこに生きていた人たち、その営みをまるで人生の最後に垣間見る走馬灯のように映し出す。
時間は80分 . . . 本文を読む
スタジオ公演だが、実に広い舞台。この空間であれば殺陣が自由自在に行うことができる。俳優陣は10人ほど。みんなよく練習していて、セリフのとちりはない。
この舞台、壁中劇が通常のイメージではなく、実に現代と同程度に重要視して描かれている。その内容も著名な信長、お市の方、浅井長政、秀吉そしてクライマックス本能寺の変と辿ってゆくので、本篇より実際濃いぐらい劇中劇が強く際立つ。
本篇も、 . . . 本文を読む
この時期になると7時間の一人芝居フェスが来る。もう高齢者もいいところなのだが、このフェスが好きで、体がまだ続くかどうかも確かめて毎年見ている。いやあ、ほんと全国津々浦々いろんな方言が飛び交い、趣向もピンキリ。選び抜かれた芝居だから、どれも一筋光っている。
7時間といえど、11芝居、人生を凝縮した芝居が続き、貴重な一日であります。その中でもお気に入り、「ケンジとトシ」、「やじうま」、「コレカラノブ . . . 本文を読む
旗揚げ公演でしょうか、なのでこういう公演は私は見に行くことにしている。映画と同じく処女作にはその作家の想いが詰められているからだ。
さて、この公演、冒頭からがなぜか取っつきにくく、一部の俳優たちのセリフ発声も気になったこともあり、僕はちょっと気がそれてしまう。
でも、ポエムを意識しているんだろう、柔らかな美しい世界を追う心情などがそのうち見え始め、気持ちが180度変化していることに気づく。なか . . . 本文を読む
マイム舞台はここまで完全版なのはひょっとして初めてかもしれない。とにかくセリフがないので、彼らの動き、つながり、表情から何かを得る体験をさせられる。
表現が受身形なので、当然自分自身に犠牲を強いる何かを当初感じていた。でも目と耳が音楽と相乗効果でなり始めてから、とても楽しみに変化したことを告白する。
そのうち音楽がかなり影響力を示していることに気づく。これはほかの演劇では考えられないことだ。当 . . . 本文を読む