大好きな沖田作品。今回は画面に大写しの昆虫がたびたび出現する。主人公モリから見た庭の自然の営みがありのまま映されるのだ。他愛ない映像の連続なんだが、画面から息吹を観客はもらう。映像から自然の恵みをもらうという稀有な作品である。
ラスト、モリ邸をカメラが高みから俯瞰する。人間の営みも全く昆虫のそれと同化し、人間の優位さなんて全くないなあなんて感じさせる。素晴らしい自然賛歌映画であります。その呼吸感 . . . 本文を読む
じっくり映画を見た感があります。演出は当然。そして音楽がすこぶる素晴らしい。ガンガン鳴っている。アンダーソンの本作は、なんと男と女のめくるめく世界を解き明かす。決して新しい素材ではないのに、原点に戻り挑戦しているかのようだ。
いつものむずさが鳴りを潜めている。その分、マザコンで芸術家風だが単なる仕事男に過ぎない男と、いろんな意味で力関係では弱いとされる女との土俵上の闘い、勝負を描く。シンプルであ . . . 本文を読む
この劇団の醸し出す雰囲気が好きだ。どんな劇でもバックに流れているのは人間の孤独、喜び、哀しみ、諦観すなわち人生そのものすなわちポエムである。
ところが今回はウイングフィールドという劇場がそうさせたのかわからないが、劇でもドラマ部分はほとんどなく、詩劇とでもいおうか、まさに全編ポエムである。ポエムを感じさせるというものではなく、ダイレクトにポエムである。
別に、問題があるわけではないが、今回は走 . . . 本文を読む
知念実希人という作家は初めてです。あまり好きでない医療ものでしたが、まあ無理に作った感はあるものの、読んでいる間はミステリー独特の一気感があり、読める小説です。
このミステリーの欠点はいろいろ読者が指摘していらっしゃるが、思いがけない犯人が消去法で行くとある人物しか残らないということではないのか。動機が最後まで分からないが、それでも新犯人は読者に分かってしまうという、このことはミステリーとしてど . . . 本文を読む
20回目の公演だとか。この演劇はもう隙がなく、完璧だと言えるほど。人間にとって記憶とは何なのか、三人三様の視点で進んでゆく。
大道具もすごいし、俳優たちが舞台に出ずっぱりで、それぞれ鏡台を持ち次の役柄に備えるところまで披露する。どこかで見たことがあるが、それでも面白い。大サービスだ。
最初結構ムズイと思っていても、そのうち分かって来るのは演出のせいだろう、全体にど迫力がみなぎっている。「悪い芝 . . . 本文を読む
視覚障害者のための映画音声作成が現場の映画である。稀有な題材で興味深く観る。河瀬の映画だから自己本位というか、独断に満ちている。それでも
今回は光というところに焦点を絞り、人間の営みの原点へといざなおうとしている。その試みが成功したかどうかはどうかは別として、生きてゆくうえで希望というものが、それがささやかなものであるとしても、最低限必要なものであるということは分かる。そこがこの映画のきらりと光 . . . 本文を読む
ベルリン最高賞受賞作。カンヌ、ベルリンと最近の受賞作は期待を裏切るものが多い中、本作はまあまあかなあ。女性監督だからか、実に繊細で流麗な映像に見るべきものが多い。
冒頭は肉牛の処理シーンから始まる。運命を予期しているのか、小さな窓から見える空を肉牛が寂しそうに眺めている。そしてが画面が変わり、雄鹿と女鹿が原野にいる。これが何かそのうち分かってくる。特に難しい映画ではない。
男は左腕が機能不全。 . . . 本文を読む
思いがけない拾い物映画である。2時間、緊張と怒号が鳴りやまぬシーンの連続で、全然飽きさせない。この漫画のような設定もいいね。
全体的に密度の高い演出も大したものだが、この作品の場合、俳優のマ・ドンソク と ユン・ゲサンが超迫力があり、彼らを見るだけでむんむんする男のエネルギーを見る思いがする。2人とも怪演である。
あと、副班長と同僚3人との職場関係もさわやかで素晴らしい。仕事仲間はこ . . . 本文を読む
今回は何とロボット登場。しかも2式。これがどう徳田節とつながるのか、、。
今回は劇団員は何故かおとなしめの役柄。客演者が主要であり、あれっと思う。石田でさえ、単なる警備員。これはどうしたことか。でもなかなか面白い色合いが出ている。
主役の岩本正治でさえ、後半まで静かに舞台の袖で眺めてる感じ。ステタイの谷屋俊輔が男ロボット役で目の動きといい、実にうまい。人形的な雰囲気を的確に醸し出している。
. . . 本文を読む
演技には定評がある劇団の2作目公演だ。みんな若い。だが、年齢にしては深い内容を今回は我々に提示する。家族からも、医師からも見捨てられたアンタッチャブルの存在の患者たちが不毛の夜の向こうに見たものは、、。
最初、患者たちの話かなと思ったが、そのうち家族たち、友人たちから見た弱者へのまなざしの演劇だと気づく。すなわち大多数を占める一般の人々から見た弱者への視点にテーマが向けられる。
家族たちは介護 . . . 本文を読む
江戸時代を舞台に力作を作り続ける真紅組、今回は天文学者麻田剛立と彼を支える大坂の人々。赤い月否赤い糸で結ばれた男と女。だが、武士と商人という身分の違いもあろうが、この恋愛は淡く成就することなく終わる。
そしてラストは何と女が出家してしまうのだ。この出家が何か妙に違和感があり、物語として感動的なものを与えてくれない。別に年の離れた夫を養子にして実家を継いでもよかったのでないかとも思える。その方が耐 . . . 本文を読む
期待以上の作品でした。チェホフの世界と、演劇をすることにより現実の苦悩に立ち向かう若人たち。そのリンクが世代を超えて青春というものを鮮やかに映し出す秀作でした。
24年ほど前の作品らしいが.現代とその本質は変わりはない。考えたら、僕も数十年前の、あの時を思い出しながら見ていた。若い時ほど真剣にヴィヴィットに人生を感じ取るものなのだ。きつかった当時を否が応でも思い出してしまった。
演劇、すなわち . . . 本文を読む
150分、これだけの登場人物を見事消化し、緊密で目を見張る映像群が僕を休めさせてくれない。僕は目を大きく開け、見続けなければならないのだ。ひどく疲れるが、このオールスター映画の前では実は至福の時の連続なのである。
個々の映画では無敵の強いヒーローも、この作品の前ではひとりでは戦えない弱小ヒーローに転身している。歯がゆく苛立ちもするが、実に人間的で、彼らの心がかえって透いたようによく見える。
そ . . . 本文を読む
最近の道尾の作品ではしっとりと35年にも上る歳月をうまく生かし、それぞれの人間模様を複雑に紡ぎ出し、ミステリーの手法も取り入れ、満足のいく作品になったのではないか。
読みやすいのも好評価の一因。よく考え、まとめている。だが、遺影専門の写真館「鏡影館」の道具立てがそれほど効果が発揮せず、いかにもの感もする。
恐らくはと感じていた野方建設の真相はやはりこの話の源でもあり、素直に喜べなかった。という . . . 本文を読む
いいですね。昨年夏に見た公演の再演。え、もう再演? 実は驚いたけどそれが出演者全員男だらけなので、また違ったテイスト感を創造している。ホンも多少変えてある感じ。だから、ほぼ違った作品のようにも思われ、再演は気にならなかった。
なにせ、出演者がみんな達者な人たちばかりなのだ。安心して見られるし、女性がいないせいか、何かホンワカ面白そうで、ゴージャスでいて人生のおかしさまで感じさせるそんな舞台でした . . . 本文を読む