最近ずっと中山の作品を読み続けているが、初めて普通のミステリーだと感じた。今までのあの特有の熱気が感じられない。ミステリーとして凡庸であるというのではない。結構思いがけない真犯人を用意していたり、それなりに優秀ではある。
しかし、我が、ページをめくる熱量が小さいのである。あの今までの重いエネルギーはここにはない。良くも悪くも水準を行くミステリーなのであるが、、。
この小説の謎は、なぜ彼女たちが . . . 本文を読む
余命6か月と宣言された仕事盛りの男の物語であります。子供は今度中学受験。奥さんはまだ若きそれなりの専業主婦。男は死後のことを考え、とんでもないことを考えてゆく、、。
ほんとに宣言通り、病魔はやってくるのだね。治療も何もしないでこんなにゆっくりと死がやって来るのならそれでもいいのかなあと思ってしまう。そうなんだ。抗がん剤やらの治療をするから大変なんだ。健康な部分までも抗がん剤は痛みつける。そりゃあ . . . 本文を読む
14人の男女。みんな若い。けれど明日で世界が終わるという。見た目は日常と変わらない。けれどみんな泣いている。ただ泣いているのだ。哀しいから泣いているのか。怖いから泣いているのか。分からない。
でも明日で世界が終わるからということで泣いているわけでもないようだ。存在の根源的な何かが突き上げてきているようなのだ。分からない。ただただ泣いている。
本編は世界の終わり。そしてそれぞれのエピソードがある . . . 本文を読む
これはまた、凄いミステリーを読んでしまった。中山の作品は4作目だけど、どれも一流。最近のミステリーでは跳びぬけてエンタメ(モステリーとして)の強い小説であります。
読んでいて真犯人はだいたい気づかされるんだけど、それでもこちらの(読者の)心理を窺って、どんでん返しを打ってくるその企みというか、勇気に拍手したい。300ページがあっという間に繰られてしまうその爽快感。これはミステリー好きにしか分から . . . 本文を読む
授業にならない教室。貧民層、さまざまな人種・宗教のもと通ってくる生徒たち。高校生だからもう風貌は大人並み。そんな彼らにも歴史を知る、すなわち人間を知るという重みを分かち合う時が来る、、。
とにかく短いカットが連続した小気味よい映像が続く。26人の生徒をカメラだけで描写する。この映画の場合、セリフはそれほど重要ではなく、主体とされるのは彼らの表情であり、内面である。すなわち人間性である。
2時間 . . . 本文を読む
ロング・トレイルという言葉さえ知らなかった。日本でもあるらしいが、この映画の場合、3500キロをただテントを積んだリュック一つで山道を歩く。当然完歩しようとすれば半年ぐらいはかかるだろうか、、。
珍道中の二人はシニアで性格が正反対の元悪友である。このお二人がいい。映画を見る前は名優二人の演技を観ることになるのかなあと思っていたが、観ているうちにそんな不埒な考えはどこかに吹っ飛んでいた。素直に大自 . . . 本文を読む
最初の方のくだり、御子柴が死体を遺棄するシーンだが、これがどうもそこまでする動機が最後まで不燃気味。結局なぜ罪に問われなかったの?変ですね。
途中で御子柴の少年院シーンが長く続くのだが、はてこれはミステリーだったけ?と思っちゃうところもありました。この少年院シーンは重要なんだけどね。
そして最後の最後のどんでん返しの更なるどんでん返し、これは素直に面白かったと申し上げましょう。真犯 . . . 本文を読む
ファン・ジョンミン主演の作品に愚作はないという思いでこの映画を見ました。なるほどそこそこの映画でしたが、いつものジョンミンらしき、強烈にぐいぐい引っ張ってゆくエネルギーに欠けていたかなあとも思いました。過酷な環境が影響していたのかも、、。
. . . 本文を読む
5話のコント劇である。出演者はほぼ4人。みな若き男性。それぞれ超個性的な人たちであります。BACKという通し眼鏡をかければちょっと前の過去が再現できるというエピソード集である。
コント劇は演劇の中でも一番難しい部類の劇だと思っている。ホンが良くても演技がまずいとそれで終わり。演技も間というものも要求されるので、練習次第でというわけにもいかない。そこにコント劇の難しさがある、と思っている。
いや . . . 本文を読む
映像もダイナミック。話も今リオが開催されていてタイムリー。そして数あるオリンピックでも、ベルリンは前畑でも周知、また芸術映画としても秀逸なフィルムが残されていることもあり、特別なオリンピックだ。けれど、その本当の真実を僕はこの映画で知った。
まだ第二次大戦前だとはいえ、ナチズムの浸透、異常な緊張感の下開催されたベルリンオリンピックのリアリズムがすごいです。特にオーエンスがフィールドに出て金メダル . . . 本文を読む
商業演劇に近くなったキャラメルの新作。僕が見たのは女性バージョンなので、当然客観的に物語を追うことになる。
でも展開が面白い。ストーリーはいつもの成井バージョンなんだが、彼女が彼氏に過去の話をするとき、彼氏の方がその場の片隅で聞いていて、反応を示している。なんだか面白い。
キャラメルだから、練習は十分でいつも見ている小劇場のような危うさはない。けれど、安定してるというのかな、彼らがどうなってゆ . . . 本文を読む
京都もうだるような暑さ。烏丸で「ヒマラヤ」という極寒の映画を見たが、暑さが解消されるわけでもなく、そのまま東山まで歩く。途中で食事をとも思ったが、観光客が多く、そのまま東山青少年センターまでなだれ着く。へとへと。センターはけれど冷房が効いていて極楽。人間に戻る。
演劇で京都にまで繰り出すのはほんと久しぶり。お目当てはつぼさかまりこ出演の「寿歌」。彼女の作品は「さよなら父さん」を見て驚愕して以来ほ . . . 本文を読む
チョン・ジヒョンを初めて見たその時を覚えている。「イレマーレ」という時空を超えた男女の恋愛を描いていた映画で、その美しさに驚いた。その時の相方がイ・ジョンジェで、僕にとってはとても思い入れのある作品であった。
それから早や15年。お二人はあまり容貌も変わらないが、僕はめっきり歳月を経ました。自分の中では韓国映画の見方もかなり変わってきましたね。そんな思いを胸に秘め、この映画を見ました。
考えた . . . 本文を読む
空の驛舎、名前は知っていたが、初めて観る。20回の公演だというから、かなり歴史のある劇団なんでしょう。期待して観る。なるほど、さすがというべきか、現代人の繊細で迷う心の奥脳を夢に託して掘り下げている。
『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』。
有名なゴーギャンの絵の題名である。この演劇のテーマでもある。絵そのものよりも、ずっとこの題名に昔から興味深く思っていた。宇宙の起 . . . 本文を読む
今までほとんどずっと見てきたが、今回はずいぶん変わった気がします。何か吹っ切れた気もしますね。
まず公演名がすごく粋であります。ここも誰かの旅先なんて、まるで俳句の一語であるような洒脱な感じがします。
次に舞台美術。随分と格調があります。びんびん響いて来ます。いつものダンボール箱の群れは今回は全くない。場所も中央にででーんと部屋のたたずまい。いつもの物置だの一時部屋でなくきちんとした母屋だ。
. . . 本文を読む