最近、童話を30篇ばかり読んだ。
一房の葡萄(有島武郎)、赤い蝋燭と人魚(小川未明)、ごん狐(新美南吉)、よだかの星(宮沢賢治)、片耳の大鹿(椋鳩十)、岡の家(鈴木三重吉)等等。
すでに読んだことがあるのもあれば、初めて読むのもある。
与謝野晶子、菊池寛、川端康成の童話など、こんな人も童話を書いていたのか、というのもあった。
「一房の葡萄」は、友達の絵具を盗み、それが級友にばれて悩む少年を、若い女の先生が優しく、しかも的確に指導する。
窓辺に伸びた葡萄を一房、少年に渡す場面が、この物語を美しく印象深いものにしており、やはり名作童話だと思う。
「赤い蝋燭と人魚」は、人魚が絵を描いた赤い蝋燭がお宮に灯って海の安全を守り、全体が幻想的な童話である。
だが、人間が人魚にひどい仕打ちをしたことから、町はさびれ、やがて消えていくという悲しい結末を迎える。
「片耳の大鹿」は、屋久島の大自然を舞台にして、人間と野生動物の交流が描かれる。
自分も、屋久島を何回となく縦走し、鹿に出会ったことがあるから、より深く心に入ってくる。
人間と動物の交流といえば、宮沢賢治の「なめとこ山の熊」もそうである。
こちらはもっと切実に、猟師の小十郎と熊との、命のやり取りを描いている。
童話は、もとより子供のために書かれた作品であるが、大人が読んでも、子供の頃とは違った感じ方があったり、新しい発見があったりして、たまに読むのもいいものだと思った。