1968年初版 瀬田貞二/訳 堀内誠一/挿絵
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
ハズレのない「少年少女新しい世界の文学」シリーズ
このタイトルだけでもとても魅力的で惹かれる
SFなのかファンタジーなのか、ワクワクして読み始めたら、オカルト???
子どもの“想像の友だち”ではなく、大人にも見える先祖の霊との交流の話
と聞くと、ホラーにも見えるけれども、孤独に育った少年にとって
彼らは大事な友だちとして描かれている
立川図書館からはるばるやってきた
読み終わるのが淋しくなる素晴らしい物語り
続編が5作まであるのが嬉しいけれども
300年前の子どもたちとの交流は、本書だけではないだろうか?
生きた友人と犬をようやく得た少年は
大人になるにつれて、まぼろしを見なくなるだろう
大おばさまは、絵の中にはいないのよね?
1、2代前の話だと思って読んでいたけれども
まさか17世紀だったとは!
ちょうど秋から冬、クリスマスの時季が描かれて、読んでいる今とリンクした
クリスマスツリーをプラスチックや豆電球で飾る今と違って
昔からたいせつに受け継がれた飾りを
包みから丁寧に取り出して、ひとつずつ枝にかけていく様子や
それぞれを想った心のこもったささやかな贈り物の交換などにじんわり心が温まる
【内容抜粋メモ】
登場人物
トーズランド トリー 母は亡く、父は再婚してビルマに住む
オールドノウ大おばあさま グリン・ノアに住む
ボギス
オールドノウ一家
父 船長 各国を巡り、家族にお土産を買って帰る
母リネット
長男 オーブリー 父の船の見習い士官
次男 アレクサンダー 笛が上手い
三男 トビー 馬フェストを持つ
長女 リネット 愛犬オーランド
●グリン・ノア
トリーは学校の寄宿舎にいたが、オールドノウ大おばあさまから誘いの手紙をもらって
雨の中、汽車で行く
グリン・ノアと呼ばれる屋敷は出水の真ん中で
タクシー運転手に背負われて、ボギスのボートに乗る
大おばあさまに会うとすぐに親しみを感じる
自分の部屋には美しい揺り木馬があり、たてがみも尾も本物の馬の毛
反対側には人形の家や鳥かごがある
日本土産のトビーのネズミが気に入り、ベッドに入れて一緒に眠る
トリーはなにもかも初めてのような気がしない
夜中に木馬をキイキイ揺らす音がする
●家族の肖像画
翌朝、雨は止むが、屋敷は水に囲まれてノアの箱舟のよう
大おばあさまは小鳥にパンくずをあげて
トリーの指にマーガリンを塗ると舐めに来て、仲良くなる(!
暖炉の上に一家そろった大きな家族の油絵が飾ってある
3人の子どもと2人の女性
鹿を連れているのがトビー
笛を持っているのがアレクサンダー
子犬を連れているのがリネット 6歳
バラのかごをさげているのは3人の母リネット
一番後ろがオールドノウ大おばあさま
●1羽のヒワ(雛じゃなくてヒワなんだな
窓をコツコツ叩いて、部屋に入り、ひと通り見てから去ってしまう
ボギスとボートのリネット号に乗り、小屋に行く
ボギスは12歳で屋敷に奉公に来て55年目
その前は父が勤めていたが、とても大酒飲みで有名だった
馬小屋を見つけて、トビーの馬フェストが見事だった話を聞いて夢中になり
仲良くなりたくて角砂糖を置いて、あとで見るとなくなっている
玄関の間にある木彫りの子どもたちは、昔の大おばあさまが買ったもので
“お守りの天使”と呼んでいた
その夜は小さな足で走り回り、笑う声が響く
●クリストファ上人さま
大水がすっかりひいて、広い庭を見に行く
堀にはトビーの鯉が大水で流されていて、池に戻してあげる
名前は海の神と同じネプチューン
鯉を呼ぶための台もあるが、トリーはなんだか怖いと思う
庭には大きな石像のクリストファ上人さまが建っている
幼子イエスをおぶって、嵐の中、川を渡ったという逸話がある
植木でできた鹿、クジャク、ウサギ、リス、雄鶏、雌鶏に驚く
子どもたちがノアの箱舟ごっこをした時、ボギスの祖父が作ってあげた
子どもたちがかくれんぼする声を聞き、T字の枝を見つける
●トビーの話
大おばあさまは暖炉で肖像画の家族の話をしてくれる
昔、大水が出た時、リネットが高熱を出して瀕死になった
トビーはフェストに乗り、医者を呼びに行く
いつもは従順なのに、どうしても橋を渡ろうとしないので、鞭で打つと
川から頭だけ出して泳いで渡る
その直後に橋が割けて川に飲まれるのを見る
フェストは危険を避けてくれたのだと分かる
医者は泊っていけと言って、リネットを診に行く
トビーは自らフェストをわらで拭き、温めて、そばで眠ってしまう
トリーはベッドの中にパイの皮を見つける
ベッドに入れたネズミがわるさをしたと思う
いつも子どもたちの気配を感じるのに見えないため、頭に来ているトリーに
ようやくリネットとアレクサンダーがチラっと見えたと思い、追うと消えてしまう
●雪
大おばあさまに角砂糖の話をすると、ボギスがお茶に入れたんだろうと言う
戸口でクリスマスキャロルを歌う声がして、大おばあさまが中に入れてあげるが
トリーには見えずに泣き出す
人見知りなんだと慰め、馬小屋からいななきが聞こえると教える
トビーはいつもフェストの所にいる
●アレクサンダーの笛
カギを見つけて、箱を開けてみると、アレクサンダーの笛が見つかる
お祝いに小鳥のパーティーを開く
ヒワ、コガラ、シジュウカラ、オナガ、
コマドリ、ミソサザイ、イワヒバリたちが部屋に入って来る
箱にはリネットの好きな『イソップ物語』などの本や
トビーの鹿の首輪、ロシア土産のマトリョーシカも出てくる
人形の家で遊ぶ用の、象牙でできた食器が出てきて
昔はみんな指で上品に食べたものだと話す
●トビーの剣
トビーの剣も出てくる
トリー:どうしてトビーは今、剣がいらないんでしょう?
大おばあさま:死んでしまったからさ
肖像画の一家が何百年も生きているはずがないのに
信じられないトリー
大おばあさま:
農地頭のボギスがロンドンに行き、病気が伝染り
トビー、アレクサンダー、リネット、母は数時間で死んでしまった(!
ボギスの子も一緒に
あまりの不幸に涙も出なかった・・・
でも、実際は大した違いはなかったのさ
間もなく、この屋敷にいるのを見つけたから
箱にあったドミノが勝手に倒れていって、トリーは笑い出す
2人で一緒にトビーの剣の手入れをするとピカピカになる
●くらやみファーディの話
祖父サー・トーズランド・オールドノウが主人だった頃
3人の息子がいて、末子のアレクサンダー(大おばあさまの父)は
競馬用の名高い黒馬を持っていた
祖父が判官になった年、ジプシーのペトロネラと息子ファーディが来た
ファーディは馬どろぼうで、黒馬に目をつけ、下働きのアイビーに言い寄り
いとこと偽って庭師として働きだす
ある夜中、ボギスに酒をやって眠らせ、馬小屋に忍び込むと
さらに見事な栗毛の馬を見つけて盗もうとすると歯をむき出しにして怒り
恐ろしくなって逃げる時、ヒザをくじいた
旦那方が騒ぎを聞いて駆けつけると、泥棒が栗毛に乗って逃げたとウソをつく
その外套に2丁のピストルを見つけ、馬どろぼうのファーディとバレて
オーストラリアに島流しとなった
●大雪
トリーは雪を見るのが初めてで、興奮して庭に出ると、うっとりする笛の音を聞く
雪のほらの中でトビーは鹿にエサをやり、リネットの子犬はじゃれている
クジャクがぎゃあぎゃあ鳴くと子どもたちは消える
めくらのモグラ“正直正太夫”だけがまごついていて、土に戻してあげる
ようやく3人に会えたと大おばあさまに話す
大おばあさまから笛を習おうとすると、勝手に指が動いてメロディーが出る
さっきアレクサンダーが吹いていた曲
●リネットの話
クリスマスの前の番、大寺の真夜中ミサに出かけた一家
リネットは遠くまで歩けないため、屋敷に1人残ると
月光の中でクリストファ上人さまが、肩に幼子をかついで川を渡り
ミサに行く様子を見る
幼子は明るく歌う
明日は 私のダンスの日
いとしい人が もしかして
私の演ずるお芝居を見に来て 踊ってくれまいか
歌えよ いとしい いとしい人よ
これが真実 いとしい人への歌よ
アレクサンダーもクリストファ上人さまが
大きな糸杉の下にある墓石に跪いている姿を見たと話す
●グリン・ノア
案内するウサギを追って行くと、ふたたびほらの中の3人と会う
母も天国にいて、ペスト騒ぎはなにも知らず、覚えていないと言うリネット
トビー:グリン・ノアには近寄るな
アレクサンダー:
忌々しいクジャクが役に立つのは
グリン・ノアが動きだすと怒鳴ることだけだ
3人が消えて、あとには腕輪が残る
リネットの7歳の誕生日におばあさまがくれたもので肖像画でも着けている
外が氷りつくと、小鳥は足がくっついてしまうため
ボギスに何本か枝を切ってもらい、部屋に立てると
たくさんの小鳥たちがやって来て、寝場所を取り合う
●アレクサンダーの話
子どもたちはとてもいい声で、聖歌隊に入っていた
大寺に国王が来て、夜に余興が行われる話で皆持ち切りになる
一家で大寺に行くと、いつも通う小さなボロい教会と違い
とてつもない大きさと、豪華なステンドグラス、天井にあっけにとられる
アレクサンダーは急に歌いたくなる
呼ぶよ 呼ぶよ 声あげて
ガブリエル ガブリエル 天使の長よ!
歌声を聞いた男が慌てて呼び止めて父が誰かと聞く
ガブリエル:
まこと天使の声だ
御前演奏に『愛の天使と死神』という仮面劇を演出するが
一番上手い少年が声変わりし、次の少年は病気で絶望していた
アレクサンダーを劇に出し、一家は土地の貴族と一緒に馬車に乗り
近い席に座って観劇する
愛の天使と死神が同じ宿屋に泊まり、眠る間に矢筒の矢が入れ替わり
死神に射られた者は愛し合い、天使に射られた者は死んでしまうドタバタ劇
アレクサンダーは見事に演じ、リネットは思わず「天使、バンザイ!」と叫んだため
国王はアレクサンダーをそばに召され、なんでも望みの褒美をとらせると言ったため
アレクサンダーは笛をもらった
●ウズラ
大おばあさまはクリスマスの支度を始める
小鳥に贈るプレゼントは
クリスマスのはじめの日
わがいとしき人が贈りくれしは
ナシの木にとまりたるウズラ一羽
という歌になぞって、新聞広告を出してウズラのメスを探し
園芸カタログでナシの木を選ぶ
大おばあさまは隣りの奥さんの自動車で街に買い出しに出かけ
トリーは屋敷に1人になり、グリン・ノアの木を庭で見つける
化け物のようにすっかり伸びて怖くなる
ボギスの家族について聞くと
ボギス:
息子たちは第一次世界大戦
孫は第二次世界大戦で戦死した
孫娘の亭主にボギスを名乗って欲しいが
世間で『ヘビの指』と呼ばれるスリで嫌っている
退屈で、雑誌の『十字軍なごりの家々』という記事に
グリン・ノアと呼ばれるようになったいきさつが書かれていて読む
馬どろぼうのファーディが島流しにされたことを恨んだ魔女の母ペトロネラは
庭に忍び込み、ノアの木に呪いをかけた
木が大きくなると、屋敷の人々に不幸が続いたため
屋敷をグリン・ノアと呼びはじめた
大おばあさまが帰り、記事を読んだことを話す
●ナシの木
翌日、大おばあさまとトリーは苗木屋でナシの木を買う
トリーは大おばあさまに内緒で豆バラの鉢を買う
ビルマにいる父から手紙が来て「母様から、トトへ、よろしく」とだけ書いてある
トリーは手紙を焼いてしまう
ボギスが買ったクリスマスツリーは音楽室に飾る
イギリスでは昔、クリスマスツリーを飾る習慣はなかった
ピカピカ光る豆電球もつけず、箱から1つ1つ包みにくるんだガラス玉や星を出して
黒い木綿の糸で枝に2人でつるしていくと
ロウソクの光がうつって輝き、あまりの美しさに言葉が出ないトリー
おばあさまの部屋から子守唄が聞こえてくる
ゆーらり ゆーら ちいちゃい子
ねんね おねんね ゆらゆらり
大おばあさまはそれを聞いて目をうるませる
大おばあさま:
この歌の人は、リネットたちより、ずっと昔で誰だか分からないが
クリスマスの前に聴いたことがあった
大おばあさまがスピネットを弾き、トリーが歌うと
400年前の赤ちゃんはすやすやと眠る
●雷
トリーが1人で庭に出ると、雷が轟いて
芝生の真ん中にグリン・ノアの木が現れる!
リネット:クリストファ上人さま! 早く来て!
トリーは「グリン・ノアがいなくなった」と大おばあさまに告げて気を失う
トビー:フェストが君を呼んでるよ
アレクサンダー:君はトビーの服を着てみるんだね
ボギスが見に行くと、グリン・ノアが雷に打たれて黒こげになり
60年前に死んだ祖父が酔っぱらって全能の神の歌を歌っているのを見たと話す
大おばあさま:
私はあの木が好きになってきたよ
水門の脇に1本ずつ植えて、ノアとノア奥さんにしよう
焦げたグリン・ノアは薪にして暖炉にくべて
ナシの木を昔の礼拝堂の前に植えて、送られてきたウズラのつがいを置く
“TALへ まごころこめて T”
●真夜中のミサ
教会に初めて行くトリー
1時間も歩いて行くと、大寺のようでなく、古く陰気な教会で
トリーは歌の途中で眠ってしまう
夢の中で、オールドノウ一家が来て
聖歌隊には男の子の服を着たリネットも歌っている
合唱は胸が痛むほど素晴らしく、泣きそうになるが
アレクサンダーのズボンが大きすぎて引っ張り上げるリネットに笑う
クリストファ上人さま、リネットの子犬オーランドもいる
大おばあさま:クリスマスおめでとう ステキな夢を見たのかい?
トリー:ええ、おばあさまも眠りましたか?
大おばあさま:きっと寝たろうよ よく分からないけど
●クリスマスの朝
ボギスからは懐中電灯のかえ電池、靴下にはビスケットや
ベンガル・マッチ、犬の絵があるクリスマスカードが入っている
「犬の名はマテとミヨ」(日本語?
トビーの服があり、着て、馬小屋に目をつぶったまま入ると
フェストのたてがみが触れ、ポケットに入れたリンゴをかじる
庭のほらではリネットがウズラをヒザに乗せている
2人が用意したご馳走を動物たちが食べて
ステキなパーティーだったとトビーが話す
トリーはもうみんなすぐ消えず、自由に会えるきょうだいと感じる
●パーシー・ボギス
トリーは大おばあさまにバラの鉢をプレゼントする
大おばあさまはトリーにオーランドと同じ子犬をプレゼントする
毎年、クリスマス当日に来るパーシーは
サーカスのマネをして見せると興奮するトリー
2人はすっかり友だちになる
大おばあさま:
次の学期には大寺の聖歌隊学校に行くことになる
父からはトリーに馬を習わせてやってほしいと手紙が来たよ
訳注:
大疫病の年
ロンドンの黒死病の年と言われる
1664~1666年、ロンドンで700万人もがペストで死んだ
国王
この時の王はチャールズ2世 父が死刑になった後、フランスに逃げていたが
王政になり、イギリスの王位についた
贅沢で遊び好き、治世中にオランダ戦争、大疫病、大火が起きた
■訳者あとがき
1950年代を生きる少年が、1660年代に死んだ子どもたちと遊ぶ話
明るさの中にどこか寂しさを感じ、傑作と呼ばれる
作者は本書の成功後、続編を書いた
『グリン・ノウやかたの煙出し』
『グリン・ノウの川』
『グリン・ノウのお客さま』イギリス最高の児童文学賞 カーネギー賞を受賞
『グリン・ノウの敵』
シリーズにはどれも、作者の息子ピーター・ボストンの挿絵がついている
本書の原本にはスクラッチボードで描いた簡単な挿絵が4、5点あるのみで
堀内誠一さんが屋敷の写真を手本にしたりして描いた挿絵を入れた
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
ハズレのない「少年少女新しい世界の文学」シリーズ
このタイトルだけでもとても魅力的で惹かれる
SFなのかファンタジーなのか、ワクワクして読み始めたら、オカルト???
子どもの“想像の友だち”ではなく、大人にも見える先祖の霊との交流の話
と聞くと、ホラーにも見えるけれども、孤独に育った少年にとって
彼らは大事な友だちとして描かれている
立川図書館からはるばるやってきた
読み終わるのが淋しくなる素晴らしい物語り
続編が5作まであるのが嬉しいけれども
300年前の子どもたちとの交流は、本書だけではないだろうか?
生きた友人と犬をようやく得た少年は
大人になるにつれて、まぼろしを見なくなるだろう
大おばさまは、絵の中にはいないのよね?
1、2代前の話だと思って読んでいたけれども
まさか17世紀だったとは!
ちょうど秋から冬、クリスマスの時季が描かれて、読んでいる今とリンクした
クリスマスツリーをプラスチックや豆電球で飾る今と違って
昔からたいせつに受け継がれた飾りを
包みから丁寧に取り出して、ひとつずつ枝にかけていく様子や
それぞれを想った心のこもったささやかな贈り物の交換などにじんわり心が温まる
【内容抜粋メモ】
登場人物
トーズランド トリー 母は亡く、父は再婚してビルマに住む
オールドノウ大おばあさま グリン・ノアに住む
ボギス
オールドノウ一家
父 船長 各国を巡り、家族にお土産を買って帰る
母リネット
長男 オーブリー 父の船の見習い士官
次男 アレクサンダー 笛が上手い
三男 トビー 馬フェストを持つ
長女 リネット 愛犬オーランド
●グリン・ノア
トリーは学校の寄宿舎にいたが、オールドノウ大おばあさまから誘いの手紙をもらって
雨の中、汽車で行く
グリン・ノアと呼ばれる屋敷は出水の真ん中で
タクシー運転手に背負われて、ボギスのボートに乗る
大おばあさまに会うとすぐに親しみを感じる
自分の部屋には美しい揺り木馬があり、たてがみも尾も本物の馬の毛
反対側には人形の家や鳥かごがある
日本土産のトビーのネズミが気に入り、ベッドに入れて一緒に眠る
トリーはなにもかも初めてのような気がしない
夜中に木馬をキイキイ揺らす音がする
●家族の肖像画
翌朝、雨は止むが、屋敷は水に囲まれてノアの箱舟のよう
大おばあさまは小鳥にパンくずをあげて
トリーの指にマーガリンを塗ると舐めに来て、仲良くなる(!
暖炉の上に一家そろった大きな家族の油絵が飾ってある
3人の子どもと2人の女性
鹿を連れているのがトビー
笛を持っているのがアレクサンダー
子犬を連れているのがリネット 6歳
バラのかごをさげているのは3人の母リネット
一番後ろがオールドノウ大おばあさま
●1羽のヒワ(雛じゃなくてヒワなんだな
窓をコツコツ叩いて、部屋に入り、ひと通り見てから去ってしまう
ボギスとボートのリネット号に乗り、小屋に行く
ボギスは12歳で屋敷に奉公に来て55年目
その前は父が勤めていたが、とても大酒飲みで有名だった
馬小屋を見つけて、トビーの馬フェストが見事だった話を聞いて夢中になり
仲良くなりたくて角砂糖を置いて、あとで見るとなくなっている
玄関の間にある木彫りの子どもたちは、昔の大おばあさまが買ったもので
“お守りの天使”と呼んでいた
その夜は小さな足で走り回り、笑う声が響く
●クリストファ上人さま
大水がすっかりひいて、広い庭を見に行く
堀にはトビーの鯉が大水で流されていて、池に戻してあげる
名前は海の神と同じネプチューン
鯉を呼ぶための台もあるが、トリーはなんだか怖いと思う
庭には大きな石像のクリストファ上人さまが建っている
幼子イエスをおぶって、嵐の中、川を渡ったという逸話がある
植木でできた鹿、クジャク、ウサギ、リス、雄鶏、雌鶏に驚く
子どもたちがノアの箱舟ごっこをした時、ボギスの祖父が作ってあげた
子どもたちがかくれんぼする声を聞き、T字の枝を見つける
●トビーの話
大おばあさまは暖炉で肖像画の家族の話をしてくれる
昔、大水が出た時、リネットが高熱を出して瀕死になった
トビーはフェストに乗り、医者を呼びに行く
いつもは従順なのに、どうしても橋を渡ろうとしないので、鞭で打つと
川から頭だけ出して泳いで渡る
その直後に橋が割けて川に飲まれるのを見る
フェストは危険を避けてくれたのだと分かる
医者は泊っていけと言って、リネットを診に行く
トビーは自らフェストをわらで拭き、温めて、そばで眠ってしまう
トリーはベッドの中にパイの皮を見つける
ベッドに入れたネズミがわるさをしたと思う
いつも子どもたちの気配を感じるのに見えないため、頭に来ているトリーに
ようやくリネットとアレクサンダーがチラっと見えたと思い、追うと消えてしまう
●雪
大おばあさまに角砂糖の話をすると、ボギスがお茶に入れたんだろうと言う
戸口でクリスマスキャロルを歌う声がして、大おばあさまが中に入れてあげるが
トリーには見えずに泣き出す
人見知りなんだと慰め、馬小屋からいななきが聞こえると教える
トビーはいつもフェストの所にいる
●アレクサンダーの笛
カギを見つけて、箱を開けてみると、アレクサンダーの笛が見つかる
お祝いに小鳥のパーティーを開く
ヒワ、コガラ、シジュウカラ、オナガ、
コマドリ、ミソサザイ、イワヒバリたちが部屋に入って来る
箱にはリネットの好きな『イソップ物語』などの本や
トビーの鹿の首輪、ロシア土産のマトリョーシカも出てくる
人形の家で遊ぶ用の、象牙でできた食器が出てきて
昔はみんな指で上品に食べたものだと話す
●トビーの剣
トビーの剣も出てくる
トリー:どうしてトビーは今、剣がいらないんでしょう?
大おばあさま:死んでしまったからさ
肖像画の一家が何百年も生きているはずがないのに
信じられないトリー
大おばあさま:
農地頭のボギスがロンドンに行き、病気が伝染り
トビー、アレクサンダー、リネット、母は数時間で死んでしまった(!
ボギスの子も一緒に
あまりの不幸に涙も出なかった・・・
でも、実際は大した違いはなかったのさ
間もなく、この屋敷にいるのを見つけたから
箱にあったドミノが勝手に倒れていって、トリーは笑い出す
2人で一緒にトビーの剣の手入れをするとピカピカになる
●くらやみファーディの話
祖父サー・トーズランド・オールドノウが主人だった頃
3人の息子がいて、末子のアレクサンダー(大おばあさまの父)は
競馬用の名高い黒馬を持っていた
祖父が判官になった年、ジプシーのペトロネラと息子ファーディが来た
ファーディは馬どろぼうで、黒馬に目をつけ、下働きのアイビーに言い寄り
いとこと偽って庭師として働きだす
ある夜中、ボギスに酒をやって眠らせ、馬小屋に忍び込むと
さらに見事な栗毛の馬を見つけて盗もうとすると歯をむき出しにして怒り
恐ろしくなって逃げる時、ヒザをくじいた
旦那方が騒ぎを聞いて駆けつけると、泥棒が栗毛に乗って逃げたとウソをつく
その外套に2丁のピストルを見つけ、馬どろぼうのファーディとバレて
オーストラリアに島流しとなった
●大雪
トリーは雪を見るのが初めてで、興奮して庭に出ると、うっとりする笛の音を聞く
雪のほらの中でトビーは鹿にエサをやり、リネットの子犬はじゃれている
クジャクがぎゃあぎゃあ鳴くと子どもたちは消える
めくらのモグラ“正直正太夫”だけがまごついていて、土に戻してあげる
ようやく3人に会えたと大おばあさまに話す
大おばあさまから笛を習おうとすると、勝手に指が動いてメロディーが出る
さっきアレクサンダーが吹いていた曲
●リネットの話
クリスマスの前の番、大寺の真夜中ミサに出かけた一家
リネットは遠くまで歩けないため、屋敷に1人残ると
月光の中でクリストファ上人さまが、肩に幼子をかついで川を渡り
ミサに行く様子を見る
幼子は明るく歌う
明日は 私のダンスの日
いとしい人が もしかして
私の演ずるお芝居を見に来て 踊ってくれまいか
歌えよ いとしい いとしい人よ
これが真実 いとしい人への歌よ
アレクサンダーもクリストファ上人さまが
大きな糸杉の下にある墓石に跪いている姿を見たと話す
●グリン・ノア
案内するウサギを追って行くと、ふたたびほらの中の3人と会う
母も天国にいて、ペスト騒ぎはなにも知らず、覚えていないと言うリネット
トビー:グリン・ノアには近寄るな
アレクサンダー:
忌々しいクジャクが役に立つのは
グリン・ノアが動きだすと怒鳴ることだけだ
3人が消えて、あとには腕輪が残る
リネットの7歳の誕生日におばあさまがくれたもので肖像画でも着けている
外が氷りつくと、小鳥は足がくっついてしまうため
ボギスに何本か枝を切ってもらい、部屋に立てると
たくさんの小鳥たちがやって来て、寝場所を取り合う
●アレクサンダーの話
子どもたちはとてもいい声で、聖歌隊に入っていた
大寺に国王が来て、夜に余興が行われる話で皆持ち切りになる
一家で大寺に行くと、いつも通う小さなボロい教会と違い
とてつもない大きさと、豪華なステンドグラス、天井にあっけにとられる
アレクサンダーは急に歌いたくなる
呼ぶよ 呼ぶよ 声あげて
ガブリエル ガブリエル 天使の長よ!
歌声を聞いた男が慌てて呼び止めて父が誰かと聞く
ガブリエル:
まこと天使の声だ
御前演奏に『愛の天使と死神』という仮面劇を演出するが
一番上手い少年が声変わりし、次の少年は病気で絶望していた
アレクサンダーを劇に出し、一家は土地の貴族と一緒に馬車に乗り
近い席に座って観劇する
愛の天使と死神が同じ宿屋に泊まり、眠る間に矢筒の矢が入れ替わり
死神に射られた者は愛し合い、天使に射られた者は死んでしまうドタバタ劇
アレクサンダーは見事に演じ、リネットは思わず「天使、バンザイ!」と叫んだため
国王はアレクサンダーをそばに召され、なんでも望みの褒美をとらせると言ったため
アレクサンダーは笛をもらった
●ウズラ
大おばあさまはクリスマスの支度を始める
小鳥に贈るプレゼントは
クリスマスのはじめの日
わがいとしき人が贈りくれしは
ナシの木にとまりたるウズラ一羽
という歌になぞって、新聞広告を出してウズラのメスを探し
園芸カタログでナシの木を選ぶ
大おばあさまは隣りの奥さんの自動車で街に買い出しに出かけ
トリーは屋敷に1人になり、グリン・ノアの木を庭で見つける
化け物のようにすっかり伸びて怖くなる
ボギスの家族について聞くと
ボギス:
息子たちは第一次世界大戦
孫は第二次世界大戦で戦死した
孫娘の亭主にボギスを名乗って欲しいが
世間で『ヘビの指』と呼ばれるスリで嫌っている
退屈で、雑誌の『十字軍なごりの家々』という記事に
グリン・ノアと呼ばれるようになったいきさつが書かれていて読む
馬どろぼうのファーディが島流しにされたことを恨んだ魔女の母ペトロネラは
庭に忍び込み、ノアの木に呪いをかけた
木が大きくなると、屋敷の人々に不幸が続いたため
屋敷をグリン・ノアと呼びはじめた
大おばあさまが帰り、記事を読んだことを話す
●ナシの木
翌日、大おばあさまとトリーは苗木屋でナシの木を買う
トリーは大おばあさまに内緒で豆バラの鉢を買う
ビルマにいる父から手紙が来て「母様から、トトへ、よろしく」とだけ書いてある
トリーは手紙を焼いてしまう
ボギスが買ったクリスマスツリーは音楽室に飾る
イギリスでは昔、クリスマスツリーを飾る習慣はなかった
ピカピカ光る豆電球もつけず、箱から1つ1つ包みにくるんだガラス玉や星を出して
黒い木綿の糸で枝に2人でつるしていくと
ロウソクの光がうつって輝き、あまりの美しさに言葉が出ないトリー
おばあさまの部屋から子守唄が聞こえてくる
ゆーらり ゆーら ちいちゃい子
ねんね おねんね ゆらゆらり
大おばあさまはそれを聞いて目をうるませる
大おばあさま:
この歌の人は、リネットたちより、ずっと昔で誰だか分からないが
クリスマスの前に聴いたことがあった
大おばあさまがスピネットを弾き、トリーが歌うと
400年前の赤ちゃんはすやすやと眠る
●雷
トリーが1人で庭に出ると、雷が轟いて
芝生の真ん中にグリン・ノアの木が現れる!
リネット:クリストファ上人さま! 早く来て!
トリーは「グリン・ノアがいなくなった」と大おばあさまに告げて気を失う
トビー:フェストが君を呼んでるよ
アレクサンダー:君はトビーの服を着てみるんだね
ボギスが見に行くと、グリン・ノアが雷に打たれて黒こげになり
60年前に死んだ祖父が酔っぱらって全能の神の歌を歌っているのを見たと話す
大おばあさま:
私はあの木が好きになってきたよ
水門の脇に1本ずつ植えて、ノアとノア奥さんにしよう
焦げたグリン・ノアは薪にして暖炉にくべて
ナシの木を昔の礼拝堂の前に植えて、送られてきたウズラのつがいを置く
“TALへ まごころこめて T”
●真夜中のミサ
教会に初めて行くトリー
1時間も歩いて行くと、大寺のようでなく、古く陰気な教会で
トリーは歌の途中で眠ってしまう
夢の中で、オールドノウ一家が来て
聖歌隊には男の子の服を着たリネットも歌っている
合唱は胸が痛むほど素晴らしく、泣きそうになるが
アレクサンダーのズボンが大きすぎて引っ張り上げるリネットに笑う
クリストファ上人さま、リネットの子犬オーランドもいる
大おばあさま:クリスマスおめでとう ステキな夢を見たのかい?
トリー:ええ、おばあさまも眠りましたか?
大おばあさま:きっと寝たろうよ よく分からないけど
●クリスマスの朝
ボギスからは懐中電灯のかえ電池、靴下にはビスケットや
ベンガル・マッチ、犬の絵があるクリスマスカードが入っている
「犬の名はマテとミヨ」(日本語?
トビーの服があり、着て、馬小屋に目をつぶったまま入ると
フェストのたてがみが触れ、ポケットに入れたリンゴをかじる
庭のほらではリネットがウズラをヒザに乗せている
2人が用意したご馳走を動物たちが食べて
ステキなパーティーだったとトビーが話す
トリーはもうみんなすぐ消えず、自由に会えるきょうだいと感じる
●パーシー・ボギス
トリーは大おばあさまにバラの鉢をプレゼントする
大おばあさまはトリーにオーランドと同じ子犬をプレゼントする
毎年、クリスマス当日に来るパーシーは
サーカスのマネをして見せると興奮するトリー
2人はすっかり友だちになる
大おばあさま:
次の学期には大寺の聖歌隊学校に行くことになる
父からはトリーに馬を習わせてやってほしいと手紙が来たよ
訳注:
大疫病の年
ロンドンの黒死病の年と言われる
1664~1666年、ロンドンで700万人もがペストで死んだ
国王
この時の王はチャールズ2世 父が死刑になった後、フランスに逃げていたが
王政になり、イギリスの王位についた
贅沢で遊び好き、治世中にオランダ戦争、大疫病、大火が起きた
■訳者あとがき
1950年代を生きる少年が、1660年代に死んだ子どもたちと遊ぶ話
明るさの中にどこか寂しさを感じ、傑作と呼ばれる
作者は本書の成功後、続編を書いた
『グリン・ノウやかたの煙出し』
『グリン・ノウの川』
『グリン・ノウのお客さま』イギリス最高の児童文学賞 カーネギー賞を受賞
『グリン・ノウの敵』
シリーズにはどれも、作者の息子ピーター・ボストンの挿絵がついている
本書の原本にはスクラッチボードで描いた簡単な挿絵が4、5点あるのみで
堀内誠一さんが屋敷の写真を手本にしたりして描いた挿絵を入れた