1973年初版 1986年 第13刷 宮脇紀雄/訳 山中冬児/装幀・口絵 武部本一郎/挿絵
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「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
『美しいポリー』の続編で、ファンから熱烈な要望があって書いただけあって
こちらもホロリとする感動作
オルコットの日本語訳されている書籍を全部読んでみたくなったが
ジュブナイルのほかには、あまりないんだな 残念
外見も美しい少女だけれども、ココロの美しさもちゃんと説いている
【内容抜粋メモ】
登場人物
ポリー・ミルトン 地方の質素な牧師の娘
ウイル 弟 大学進学を目指す勉強家
キティ 妹
ミス・ミルス 慈善活動に熱心な家主
ジェーン 母を亡くし、生活に困り自死をはかった
ショー一家
父 実業家
母 体が弱い
祖母は亡くなった
ファニー ポリーの親友 シドニー氏と付き合っている
トム トリックスと付き合っている
モード 末娘 11歳
●音楽教師
ポリーは家計を助け、きょうだいらに仕送りをするため
得意なピアノと歌を教えて、街で働く決心をする
知人のミス・ミルス宅に間借りして、11月のある日、ファニーに会いに来る
黒絹の一張羅以外にドレスはないが、それに気づかないほど明るく
誰にも親切で優しい性格
“健やかな身体に、賢い魂が宿っているということは、大きな美しさなのでした”
すでにお弟子を数人紹介してもらっている
名家の婦人と母が親戚なことは、前回まったく話さなかったこと
祖母は亡くなり、トムはつききりで看病し
亡き後もとても沈んでいたトムを見て
意地悪な悪口の奥底に優しい心が隠れていることに気づいたファニー
トムはトリックスと付き合っているが、父はあまり好きじゃない
●ポリーの王国
ファニーとモードはポリーの部屋に案内される
子猫と小鳥がいて、シンプルながら、とても家庭的な安心感のある様子が
すっかり気に入るモード
ファニー:私は何もかも飽き飽きして、退屈で死んでしまいたいことがあるわ
ポリー:あなたも働く面白味が分かれば、不平はなくなると思うわ
最初は慣れない教師として大変だったが、慣れてくると
幼い弟子たちを教えるのが退屈になるポリー
思春期に趣味、娯楽を毎日ガマンするのは大変なことと分かる
朝から晩まで教えて、夜は1人で寝るしかない生活をして初めて
これまで温かい家族に囲まれていた幸せに気づく
名家のお嬢さんたちは、音楽教師を家に招いたりしない
ポリー:故郷では、働いていることは尊敬されるのに・・・
●やさしい紳士
ファニーはいろんな会に誘ってくれるが、みな着飾るのが好きで
いつも黒いドレスを着ているポリーを“ツグミちゃん”と呼び
ポリーは寂しい思いを隠している
お弟子のきょうだいが引っ越すことで収入にも響く
トムとトリックスがそばを通りかかったのに
トリックスは無視、トムはポリーに気づかない
トリックスは、ポリーが貧しいのに、頭が良くて、なんでもできることを羨み
トムが時々ポリーを褒めることでさらに憎んでいた
ファニーのBFシドニー氏が泣いているポリーに気づいて
荷物を持ってあげ、姪にピアノを教えてあげてほしいと言ってくれる
●哀れな娘
ミス・ミルスが気の毒なジェーンのために縫物をしていると話したので
手伝うと、母を亡くした病気のジェーンは、働かなくては生きていけないのに
病気で働けず、“この世に自分の居場所はない”と悲観して
睡眠薬を飲んで自死しようとして、ミス・ミルスが助けて
寝室に寝かしている、と話す
自分の不幸を嘆いていたポリーは
もっと貧しく、苦しい思いをしている少女がいると知り
部屋に誘い、自分のできることならなんでもすると約束する
ポリー:
人の気持ちは考え方ひとつで変わるものだ
背負いきれないほどの幸福を持ちながら、半分もお礼の心を持たなかった
自分はこれまで何をしてきて、これから何ができるのだろう
ジェーンがポリーのことを“元気で、美しく、いつも音楽を奏でている”と言ったことを思い出し
それこそ、自分のやるべきことで、いつも人の助けになれるよう神に祈る
ジェーンもポリーの望みがすべて叶うようにと祈る
●姉と弟
毎週、日曜日はウイルが遊びに来るので、一番の楽しみにしている
寂しがりやのモードも加わる
猫背になりかかっているから、親の言いつけで学校より医者と仲良くしている
モードは兄のトムを心から尊敬している
日曜に雪が降り、ポリーの部屋に遊びに行けないとこぼす
ポリーは弟ウイルの頭をひざに乗せて
額を撫でてあげることで休ませるのだと話す
ポリーがシドニーよりトムの顔のほうが好きだと言っていたこともしゃべってしまう
シドニーは時々、ポリーの部屋を訪ねているのを気にするファニー
ウイルが迎えに来て、大喜びのモード
トムも訪ねていき、家庭的な様子に親しみを感じる
ポリーとウイルの仲の良さを見て
ファニーの話を親身に聞く者がいないと気づくトム
●裁縫の会
ファニーから裁縫の会に誘われても、行く気がしないとこぼすポリーに
ミス・ミルスは、お嬢さん方にジェーンのことを話せば
裁縫の仕事をくれるかもしれないと助言
ミス・ミルス:なんでもぶつかった時に出来るだけのことをすればいいのですよ
ポリー:でも、私の気持ちを分かってもらえない人に間違った目で見られたくない
ミス・ミルス:
人がどう思うだとうと気にすることをやめて
自分や友だちが神さまの心にそむかない生き方ができるようになれば
世の中はどんなに明るくなるでしょう
ミス・ミルスは、ポリーには人を動かす力があると見抜いていた
ポリーにとっても、どんな立派な言葉より
生きたお手本ほど強い感化力を持つものはない
会に行くと、お嬢さんたちは噂話に夢中で裁縫は全然進まない
この冬はひどい不景気で、貧しい人が仕事を欲しがっているという話になると
トリックス:
貧乏人の話を聞くのはうんざり あんなのペテン師みたいなものよ
お金持ちを騙して儲けようとばかりするんだもの
ポリーはそれを聞いて憤慨し、ケンカのようになるが
場を静めるために歌ってくれと頼まれると素直に歌う
“音楽は美しい魔術師です”
誰もその力に逆らえず、少女たちは歌に心を奪われる
●真実の物語
ポリーはジェーンの話をすると、ファニーが皿に寄付の紙幣を入れる
お嬢さんたちも次々と入れる
ジェーンは施しより、仕事が欲しいと伝えると
なんでも一番じゃないと気が済まないトリックスが率先して裁縫の仕事を与える
ポリー:ミス・ミルスさんは、人を愛するということはどういうことかを教えてくださる
人を助けるということは、大きな喜びでもあると気づく少女たち
ジェーンは次々仕事をもらい、この世に自分の席がちゃんとあり、親切な人も大勢いると知る
●オペラの夜
ポリー:
なにか、うんと面白い目にあいたいわ
音楽が好きなポリーはオペラを観ようとするが、切符売場は満員で売り切れ
ファニーを訪ねると、ちょうどトムがオペラに誘ってくれて大喜び
トリックスはNYに出かけている
街で上等の絹の手袋などを買って散財する
ショー家に着くと、飼い犬が新しい帽子と手袋をぐちゃぐちゃにしてしまい
バチが当たったと思うポリー
ファニーにドレスを借りて劇場に行くと
シドニーとファニーの昔のBFのフランク・モーアもいる
ファニー:こんなところ、トリックスが見たら何て言うかしら
トムが優しくしてくれるのは、ほんの気まぐれだと思うと沈むポリー
●新たな出会い
トムはファニーにポリーとシドニーが一緒に歩いているところを見たと話す
トム:
ポリーに対しては兄のような気持ちだ
牧師さんとでも結婚して仰がれるんだね
貴婦人になるのは似合わないよ
ファニーがポリーを訪ねて、いつも花を持ってきてくれるのがウイルだと分かるとホッとする
ポリー:
どんなことにも明るい面と暗い面がある
私はなんでも明るい半面を見るようにしてるの
ポリーはファニーにジェーンと、2人の女性美術家を紹介する
ポリー:
2人は一緒に助けあって暮らしてるの
2人とも身寄りはないけど、小鳥のように幸福で自由なの
ベッキーのつくる女性の像の手に何を持たせるかで議論する
ベッキー:
これからの女性は1人で自分を助けていかなくちゃ
強い意志、愛情、精神と肉体を持たねば
力と美がともに備わっていなければならないのです
みんなで持ち寄った食べ物でランチにする様子を見て
新鮮な感動を覚えるファニー
●シドニー
ポリーはファニーを悲しませないように
もうシドニーと会うのは止めようと決心するが
シドニーがファニーの家を訪ねていると知ると、なぜか涙が出そうになる
裏道を歩いていると、シドニーが追って来る
シドニーがファニーを少しワガママだというと
ポリー:あの人は自分の欠点を直そうとしてるのです
シドニーは数週間旅行するために会えないことを告げる
ファニーは不安でポリーに確かめると、ポリーは否定する
ファニー:私たちの友情はいつまでも変わらないのね
●破産
数日後、ショー家を訪ねると、モードが1人のけ者にされて泣いている
トムに聞くと、礼拝堂の番人とケンカして退校にされた上
父に内緒で多額の借金をしてしまったと打ち明ける
それよりひどいのは、父の事業が失敗して、一家が破産したこと
ショー氏は一人で奮闘したが、潔く身を引いたため、債権者は逆に同情した
母の財産だけは手をつけまいと約束し
一家は祖母の小さな家に引っ越すことになる
●ほんとうの友だち
ファニーはなにか仕事をしたいと言う
ファニー:
母は貧乏を怖がり、泣いてばかりいる
私が家のことをしなくちゃ やり方を教えてくれる?
ポリー:
ほんとうの友だちはあなたを見捨てないわ
モードはポリーのことだと思うが、シドニー氏のことを言ったのだった
急に老け込んだ父の部屋に行き
ファニー:ご心配なことを分けていただきに来ました
ショー氏が姉妹を抱きしめる様子を見て
家族がどんなに愛し合っていたかを悟り
トムとも互いに思っていることを打ち明けることで
ショー氏は力強さを覚える
ショー氏:
みんなが貧乏なんて恥ずかしいことではない
正しくないことこそ恥ずかしいと知ってくれればうれしい
ポリー:
今度のことは不幸には違いないけれども
この一家にひとつの幸福を持ってきたのかもしれない
●小さい家
ショー一家が引っ越すと、家具は一そろいあり
知人が見舞いに来てくれたがゴシップの種になる
母は寝込み、泣いてばかりで、一家の重い責任が一気にファニーにかかると
今までどこに隠れているかと思うほど、勇気と活動力に満ちる
料理や裁縫が大好きなモードは、まるでポリーの部屋と同じだと喜ぶ
今度は、ポリーが与え、ファニーがもらう立場となる
●古いドレス
ファニーは何も着るものがないと嘆くが、“古いデザインのドレス”が山ほどあり
裏返しにした生地を使って、新しいドレスも帽子も作れると言うポリー
ファニー:貧乏や倹約が恥だと思う気持ちをなくさなきゃダメね
友だちのベルが緑の服を欲しがっているから
売ったお金で新しいドレスが買えると提案すると
ファニー:その気持ちに対して感謝の印にドレスをあげたい
ポリー:私たちはあなたに借りがあるから、お払いする光栄を持っているのよ
ファニー:
自分でしたことが何倍にもなって返ってくるのね
モード:
私が姉さんみたいにいろいろ持ってたら、競売をして
その金で欲しいものを買うわ
●トムのなやみ
“金遣いの荒いどら息子”と呼ばれて、トムは激しい後悔に襲われ
居場所もなく、人目も気になり“トムの巣”に引きこもり、同情も耐えられない
ただ一人、母だけが自分を頼り、無限の愛に大きな力を与えられた
晴れやかだった父はすっかりやつれ、機械のように毎日会社へ出かける
トム:
僕は本当の自分を知らなかった
これまでの力や楽しみは、父の財産のお陰だったんだ
トムは父に腕を貸すと、ショー氏は喜ぶが
その様子を見て、ヒソヒソとささやく声に悔しさがつのる
トム:人が転んでいる時、その上ぶつようなことをするなんて、ひどい世の中だ
ポリーたちが楽しそうにお菓子づくりをしている声につられて台所に来て
シドニーが帰ってきたことを伝える
●トムは西部へ
いつも大事なことは祖母に相談していたトムは
ポリーに1通の手紙を見せて、判断をあおる
1通はトリックスが絶交状をつきつけた手紙
もう1通はシドニーがトムの借金を全額返してくれたという手紙
早くに父を失った友人のネッドが西部で成功しているため
自分も行って一旗揚げたい思いを話すと
早速、心をこめた手紙を出すポリー
その後、トムは慌ただしく西部へ発つ
●西部からの写真
トムからの手紙に、若い娘と写った写真を見て
ファニーがトムとポリーが結婚すればいいと言っても
ポリー:
トムの気持ちはもう離れているかもしれない
私がトムをどんなに好きでも、それを知らせて迷わせたくない
トムが1年後、すっかり日焼けして、ヒゲを生やして突然帰って来た
ネッドの協力で仕事も順調
ファニーはシドニーと婚約し、トムはポリーと婚約
トム:
3年待ってくれ そしたら、シドニーの借金も返して
君に恥ずかしくない人間になってくるからね
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解説
ルイザ・メイ・オルコット
1832年 ペンシルベニア州生まれ 父と同じ誕生日
4人姉妹の次女で、少女時代から文筆に親しむ
1862年 南北戦争の際は特志看護婦として尽くす
1865年 戦後、ヨーロッパで遊び、豊かな感性を磨く
晩年はボストン郊外にひきこもって暮らし
ひどい不眠、食欲不振に悩んだ
1888年 56歳で死去 父の死後2日目
2の墓は並べて葬られた
本書の原題は『昔気質の一少女』
ポリーの率直、正直、ユーモア、明るさはそのまま作者の性格
清らかで楽しい“家庭愛”が根底に流れている