昭和51年初版 安東次男/訳 坂川知秋/絵
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
戦時中のスパイ活動ものは、胃が痛くなって、退屈してくる・・・
少年がまるで冒険のように闇夜で暗躍して、叔父や異国の軍人を見て
ヒーローのように尊敬して、あんな大人になりたいと思う様はとても複雑
【内容抜粋メモ】
登場人物
フランソワ 抵抗派の秘密連絡員としてはたらく15歳の少年
マリア 母
モレル フランソワの叔父 地下組織の隊長 377号 機関車“ヤギ”を愛する
レオナール モレルとともに12年間“ヤギ”に乗る 機関助手
パスカル ダンケルクの戦闘で行方不明になったフランソワの叔父
カトリーヌ パスカルの婚約者
テシエ もと森の番人
<ドイツ軍>
ヘルマン “駅”のあだ名 機関車庫のサボタージュを防ぐ見張り人
●「ジュールの誕生日にろうそくを21本」
15歳のフランソワは「抵抗派」の秘密連絡員であることにとても誇りを持っていた
フランソワの父は戦争開始直後に負傷してドイツの病院で死んだ
「ジュールの誕生日にろうそくを21本 ありがとう アンヌ・マリ」
という伝達を嵐の中、自転車で運ぶ
●230G 377号機関車
フランソワの叔父モレル機関士と助手レオナールは
自分たちの機関車を“ヤギ”と呼び
強い愛情をもって運転し、修理し、磨いてきた
その精巧な小型模型を造り、傑作だった
アンヌ・マリは組織の呼び出し符号
シャントリューの森にひそむ地下組織「マキ」たちと連絡を取り合っている
組織の活動を阻止しようと見張るヘルマンもまた元機関士で
機関車を愛する気持ちでモレルと通じ合う気持ちがある
●ルノディエールの森
今夜、ロンドンから派遣された機関員が森の上からやって来る
フランソワは勾配で機関車を降りて、非常着陸場で彼を見つけて
母がソブクラールで旅館をしている自宅に連れて来る任務をいいつかる
機関員パスカルはドイツ兵のパトロールに射撃され、足を負傷し隠れている
森を知り尽くしているフランソワがソブクラールに行くというと
パスカル:Every dog has his day!(だれにでも運はある)とつぶやく
●パスカル
フランソワの叔父パスカルは、ダンケルクの戦闘で行方不明になったが
片足が不自由になり、頬は榴弾でえぐられた姿で戻ってきて
母は驚き、婚約者カトリーヌを呼ぶ
だが、カトリーヌは一目で本人ではないと見抜く
彼はイギリス人で、ダンケルクの戦闘で負傷し
フランス人軍曹の外套を着て、助けられた
紙入れには身分証明書とカトリーヌの写真があり
パスカルと自分がよく似ていることから、整形手術を受けてなりすまし
ブールジュ機関区のサボタージュを組織するために来た
その間、持病のぜんそくが悪化した
●白い杖
ニセのパスカルは、目が見えないフリをして、黒いメガネをかけ
白い杖をついて、フランソワに付き添ってもらうことで村人の同情心を買う
パスカルと仲が良かったフェリシャンは、小児麻痺で車いすに乗っているが
今ではこの世でいちばん不幸な人間は自分ではないと思い、親友を労わる
パスカルの愛犬ディックだけは、主人ではない男に懐かない
●プラスチック爆弾
パスカルは、フランソワを見張りにつけて
機関車にプラスチック爆弾を仕掛ける
ドイツ兵に見つかるとフランソワが囮になって引き付ける間に
足の悪いパスカルが逃げる
ドイツ軍から派遣された機械化部隊が移動するというしらせが入り
輸送列車を脱線させる計画を立てるが
命令変更で、モレルとレオナールが377号でやることになり怒り心頭となる
モレル:オレの機関車をぶっ壊してたまるか!
代わりにヴィランが運転する230号が衝突してぺしゃんこになった
●闇に紛れて
パスカルがまたレールに爆薬を仕掛けている間、フランソワが見張りをしていたが
ドイツ兵に見つかり、装置は取り外され、パスカルは重症を負う
医者を呼び、弾は胸を貫いたが、命は助かり
村人には肺病が悪化したと思わせる
1人の少年が青年時代を一足飛びに飛び越えて
実際の年齢より早く、一人前の男になるためには、特別な事情がいる
●ネコはどの方向にとぶか
1週間後、フランソワの誕生日を祝うために
もと森番だったテシエじいさんが来る
そこに本物のパスカルが帰ってきた
テシエじいさんには、誰にも言わないように言って帰る
イギリス人:
僕のことはこれまで通りパスカルと呼んでくれなきゃダメだよ
なりゆき次第さ ぼくの国では
“ネコはどの方向にとぶか見定めろ”という
パスカルはダンケルクの戦闘で負傷し、ドイツの病院で一命をとりとめた後
捕虜収容所を転々として、脱走をはかり、スイスを経由して戻った
パスカル:
僕らのうちどちらかがこの土地を去ることだ
そして去るのは、僕のほうだ
僕はその任務に向いていない
体が回復したら隊列に復帰しよう
「自由フランス」に加わる手段はあるだろう
戦争が始まった時と同じように、カトリーヌと森を抜け
小型偵察機に乗って去った
イギリス人:パスカルはついてる 運がいいよ
●“ヤギ”をすくえ
軍隊と物資を運ぶ列車が数時間おきに5本通過し、あわただしくなる
見張りも一層厳しくなる中、再び爆破の計画を立てる
とうとう377号の出番となり、モレルはまた代わりの機関車に細工しようとするが
ヘルマンの親切で377号が行くことになる
パスカルはテシエじいさんをマキに送り、若い仲間の手助けがいると伝える
パスカル:
今夜こそ僕は君を辛い試練にあわせることになるだろう
高架橋の前の盛り土に爆弾を置いて逃げ出すんだ
つまり377号に乗ったモレルとレオナールが何も知らずに
機関車とともに粉微塵になってしまう
(モレルたちとも親密なはずなのに、なぜこんな計画にして
わざわざフランソワをその役目にしたのかが分からない・・・
フランソワは恐怖のあまり体が硬直して
爆弾を置いた線路ぎわから動けなくなる
モレルとレオナールは最初の計画通り
10分後に機関車から降りようとしていたが
爆破された機関車が横転して投げ出される
フランソワはすぐに駆け付けた時には、モレルはひどい火傷を負って倒れていた
一方、敵を引きつけて発砲したマキの仲間も撃たれて重傷を負う
●たったひとりの男
ブールジュの病院のベッドに寝かされたモレルは輸血が必要だが
戦時中、血液型を調べる道具すらないため
フランソワとレオナールの血をとって
モレルの血と混ぜると凝結して使えないと分かる
ヘルマンは医師に「仲間です」と言って、血をとってもらうと適合したため採血してもらう
いつも同志に対するように「駅」と声をかけてくれる鉄道仲間にささやかな恩返しをしていた
フランソワはパスカルの死を翌日聞く
テシエじいさん:
いいかね、ぼうず
明日の葬式には、女たちの前に立って、お前が先頭を歩くんだぞ
お前がこの家のたったひとりの男なんだから・・・
■あとがき
ルネ・ギヨ
1900年 フランス生まれ
高等学校の数学教師をしている間も、暇があればアフリカの自然と動物と触れ合っていた
フランスで教師をするかたわら、アフリカ時代の経験をいかした動物物語、冒険小説を書いて
国際アンデルセン大賞も受賞した
本書は、第二次世界大戦の際、ナチス・ドイツに抵抗したフランス人の話
フランスが正式に降伏し、休戦条約でフランスの中央以北、西部がドイツ軍の占領地になったが
南部地方だけ自由にできる地域として残った
「レジスタンス」と呼ばれる抵抗運動はここから始まった
ロンドンから秘密連絡員が来る場面があるが
本拠がロンドンに置かれていたという意味
当時、フランスは、ヴィシーの政府(ナチスに協力する政府)と
ロンドンの「自由なフランス」の2つに割れていた
1944年、ついにパリをドイツ軍から取り戻すことに成功した
ドイツ人の中にもナチスに反対する人たちもいて
抵抗派に便宜をはかってくれた
第二次世界大戦は、うわべはドイツ、イタリアとフランス、イギリス間の戦争のように見えて
実際は、ファシズムに対する平和を愛する人たちとの戦いだったことを
よく覚えていてください
自分の中の弱さ、卑屈さをまず克服することが
敵に勝つことだ、ともギヨは言っているのでしょう
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
戦時中のスパイ活動ものは、胃が痛くなって、退屈してくる・・・
少年がまるで冒険のように闇夜で暗躍して、叔父や異国の軍人を見て
ヒーローのように尊敬して、あんな大人になりたいと思う様はとても複雑
【内容抜粋メモ】
登場人物
フランソワ 抵抗派の秘密連絡員としてはたらく15歳の少年
マリア 母
モレル フランソワの叔父 地下組織の隊長 377号 機関車“ヤギ”を愛する
レオナール モレルとともに12年間“ヤギ”に乗る 機関助手
パスカル ダンケルクの戦闘で行方不明になったフランソワの叔父
カトリーヌ パスカルの婚約者
テシエ もと森の番人
<ドイツ軍>
ヘルマン “駅”のあだ名 機関車庫のサボタージュを防ぐ見張り人
●「ジュールの誕生日にろうそくを21本」
15歳のフランソワは「抵抗派」の秘密連絡員であることにとても誇りを持っていた
フランソワの父は戦争開始直後に負傷してドイツの病院で死んだ
「ジュールの誕生日にろうそくを21本 ありがとう アンヌ・マリ」
という伝達を嵐の中、自転車で運ぶ
●230G 377号機関車
フランソワの叔父モレル機関士と助手レオナールは
自分たちの機関車を“ヤギ”と呼び
強い愛情をもって運転し、修理し、磨いてきた
その精巧な小型模型を造り、傑作だった
アンヌ・マリは組織の呼び出し符号
シャントリューの森にひそむ地下組織「マキ」たちと連絡を取り合っている
組織の活動を阻止しようと見張るヘルマンもまた元機関士で
機関車を愛する気持ちでモレルと通じ合う気持ちがある
●ルノディエールの森
今夜、ロンドンから派遣された機関員が森の上からやって来る
フランソワは勾配で機関車を降りて、非常着陸場で彼を見つけて
母がソブクラールで旅館をしている自宅に連れて来る任務をいいつかる
機関員パスカルはドイツ兵のパトロールに射撃され、足を負傷し隠れている
森を知り尽くしているフランソワがソブクラールに行くというと
パスカル:Every dog has his day!(だれにでも運はある)とつぶやく
●パスカル
フランソワの叔父パスカルは、ダンケルクの戦闘で行方不明になったが
片足が不自由になり、頬は榴弾でえぐられた姿で戻ってきて
母は驚き、婚約者カトリーヌを呼ぶ
だが、カトリーヌは一目で本人ではないと見抜く
彼はイギリス人で、ダンケルクの戦闘で負傷し
フランス人軍曹の外套を着て、助けられた
紙入れには身分証明書とカトリーヌの写真があり
パスカルと自分がよく似ていることから、整形手術を受けてなりすまし
ブールジュ機関区のサボタージュを組織するために来た
その間、持病のぜんそくが悪化した
●白い杖
ニセのパスカルは、目が見えないフリをして、黒いメガネをかけ
白い杖をついて、フランソワに付き添ってもらうことで村人の同情心を買う
パスカルと仲が良かったフェリシャンは、小児麻痺で車いすに乗っているが
今ではこの世でいちばん不幸な人間は自分ではないと思い、親友を労わる
パスカルの愛犬ディックだけは、主人ではない男に懐かない
●プラスチック爆弾
パスカルは、フランソワを見張りにつけて
機関車にプラスチック爆弾を仕掛ける
ドイツ兵に見つかるとフランソワが囮になって引き付ける間に
足の悪いパスカルが逃げる
ドイツ軍から派遣された機械化部隊が移動するというしらせが入り
輸送列車を脱線させる計画を立てるが
命令変更で、モレルとレオナールが377号でやることになり怒り心頭となる
モレル:オレの機関車をぶっ壊してたまるか!
代わりにヴィランが運転する230号が衝突してぺしゃんこになった
●闇に紛れて
パスカルがまたレールに爆薬を仕掛けている間、フランソワが見張りをしていたが
ドイツ兵に見つかり、装置は取り外され、パスカルは重症を負う
医者を呼び、弾は胸を貫いたが、命は助かり
村人には肺病が悪化したと思わせる
1人の少年が青年時代を一足飛びに飛び越えて
実際の年齢より早く、一人前の男になるためには、特別な事情がいる
●ネコはどの方向にとぶか
1週間後、フランソワの誕生日を祝うために
もと森番だったテシエじいさんが来る
そこに本物のパスカルが帰ってきた
テシエじいさんには、誰にも言わないように言って帰る
イギリス人:
僕のことはこれまで通りパスカルと呼んでくれなきゃダメだよ
なりゆき次第さ ぼくの国では
“ネコはどの方向にとぶか見定めろ”という
パスカルはダンケルクの戦闘で負傷し、ドイツの病院で一命をとりとめた後
捕虜収容所を転々として、脱走をはかり、スイスを経由して戻った
パスカル:
僕らのうちどちらかがこの土地を去ることだ
そして去るのは、僕のほうだ
僕はその任務に向いていない
体が回復したら隊列に復帰しよう
「自由フランス」に加わる手段はあるだろう
戦争が始まった時と同じように、カトリーヌと森を抜け
小型偵察機に乗って去った
イギリス人:パスカルはついてる 運がいいよ
●“ヤギ”をすくえ
軍隊と物資を運ぶ列車が数時間おきに5本通過し、あわただしくなる
見張りも一層厳しくなる中、再び爆破の計画を立てる
とうとう377号の出番となり、モレルはまた代わりの機関車に細工しようとするが
ヘルマンの親切で377号が行くことになる
パスカルはテシエじいさんをマキに送り、若い仲間の手助けがいると伝える
パスカル:
今夜こそ僕は君を辛い試練にあわせることになるだろう
高架橋の前の盛り土に爆弾を置いて逃げ出すんだ
つまり377号に乗ったモレルとレオナールが何も知らずに
機関車とともに粉微塵になってしまう
(モレルたちとも親密なはずなのに、なぜこんな計画にして
わざわざフランソワをその役目にしたのかが分からない・・・
フランソワは恐怖のあまり体が硬直して
爆弾を置いた線路ぎわから動けなくなる
モレルとレオナールは最初の計画通り
10分後に機関車から降りようとしていたが
爆破された機関車が横転して投げ出される
フランソワはすぐに駆け付けた時には、モレルはひどい火傷を負って倒れていた
一方、敵を引きつけて発砲したマキの仲間も撃たれて重傷を負う
●たったひとりの男
ブールジュの病院のベッドに寝かされたモレルは輸血が必要だが
戦時中、血液型を調べる道具すらないため
フランソワとレオナールの血をとって
モレルの血と混ぜると凝結して使えないと分かる
ヘルマンは医師に「仲間です」と言って、血をとってもらうと適合したため採血してもらう
いつも同志に対するように「駅」と声をかけてくれる鉄道仲間にささやかな恩返しをしていた
フランソワはパスカルの死を翌日聞く
テシエじいさん:
いいかね、ぼうず
明日の葬式には、女たちの前に立って、お前が先頭を歩くんだぞ
お前がこの家のたったひとりの男なんだから・・・
■あとがき
ルネ・ギヨ
1900年 フランス生まれ
高等学校の数学教師をしている間も、暇があればアフリカの自然と動物と触れ合っていた
フランスで教師をするかたわら、アフリカ時代の経験をいかした動物物語、冒険小説を書いて
国際アンデルセン大賞も受賞した
本書は、第二次世界大戦の際、ナチス・ドイツに抵抗したフランス人の話
フランスが正式に降伏し、休戦条約でフランスの中央以北、西部がドイツ軍の占領地になったが
南部地方だけ自由にできる地域として残った
「レジスタンス」と呼ばれる抵抗運動はここから始まった
ロンドンから秘密連絡員が来る場面があるが
本拠がロンドンに置かれていたという意味
当時、フランスは、ヴィシーの政府(ナチスに協力する政府)と
ロンドンの「自由なフランス」の2つに割れていた
1944年、ついにパリをドイツ軍から取り戻すことに成功した
ドイツ人の中にもナチスに反対する人たちもいて
抵抗派に便宜をはかってくれた
第二次世界大戦は、うわべはドイツ、イタリアとフランス、イギリス間の戦争のように見えて
実際は、ファシズムに対する平和を愛する人たちとの戦いだったことを
よく覚えていてください
自分の中の弱さ、卑屈さをまず克服することが
敵に勝つことだ、ともギヨは言っているのでしょう