『赤ちょうちんでちょいと一杯ひっかけて――。そんな気晴らしも、時間やフトコロにゆとりがあってこそ。先行き不透明なこのご時世、皆さんどこで、どんなお酒を飲んでいるのか? 飲み方から見えるものは何だろう。 いたいた、顔色も表情も変えずに飲むオジサマが。 首都圏のJR線。「ロングシートの通勤車両でもお酒を飲む人がいる」と聞き、平日夜の車両を歩き回ると……。スーツ姿の男性がそこここで、発泡酒や缶酎ハイをあおっている。1本あたり2、3人。懐具合のせいか、プレミアムビールのたぐいはお目にかかれない。 常磐線上野駅では、発車前から会社員男性(46)が座席で500ミリリットルの発泡酒に口を付けた。すし詰め車両にもお構いなし。イヤホンをして音楽を聴きつつチビリ、業界紙を読んではチビリ。柏駅で降りたところで声をかけた。 「うちに着く前のリセットだよ。解放したいから飲む。人目? 気にならないこともないけど、そこはちょっと失礼して……。お店には、一人じゃ入りづらくてね」 別の日、東京駅からの京葉線。40、50歳代とおぼしき男性が車両の端の壁際、ひじ置きのような台に酎ハイの缶を置き、仕事の資料らしきペーパーを繰っている。ゴトン、ゴトンと40分近く、千葉県の武蔵野線市川大野駅。「ストレス解消だね。うちでも飲むけど」。空き缶をカバンに入れ、そそくさと改札への人ごみにまぎれた。 何人も見かけたが、飲まなきゃやってられない、と悪態をつくわけでもなし。缶を見なければ、お酒を飲んでいるとは分からないほどだ。ただし、お世辞にもおいしいお酒だとは思えない。 「人目を気にしないのは、あまりいいことじゃないですね。ボックスシートや新幹線などでは昔から飲んでいる人はいたし、違和感もないんだけど」。こう語るのは、お酒の消費や文化に詳しい「酒文化研究所」代表、狩野卓也さん(50)である。どうしてこんなことが? 「みんな忙しくなり、飲み代が減ったからでしょう。電車の中で化粧をする人もいるぐらいだし、まあいいやと開き直る人が増えたのかもしれません。そのうち日本酒、さきいかも登場したりして」 いっぷう変わった“酒場”は他にもある。コンビニエンスストアの店先だ。 都内在住の女性会社員(49)は平日夜のママさんバレー練習後、仲間とちょくちょく談笑する。自転車の荷台をテーブル代わりに、ポテトチップスやちくわなどをつまんで。「居酒屋は長居しちゃうしお金もかかる。だからコンビニです。屋外のビールは進むけど、『もう1本』は飲まないようにしています」 30歳代の派遣労働者の男性も“コンビニ派”だった。「工場で夜通し働いた後、朝になって仲間とコンビニで軽く飲むんだよ。愚痴を言い合ったりしてね。昔は居酒屋も珍しくなかったけど、お金がなくてさ」 若者だけでなく、大人もたむろしつつあるコンビニ。狩野さんはどう思う? 「昔は酒屋前での立ち飲みなんて、珍しくなかったんです。ちょっとしたつまみとともにさっと一杯。コンビニがそこに取って代わったわけです。大勢でも一人でも、飲む人の気持ちはよく分かります。中高生が学校帰りに買い食いするのと変わりません」 一方、「酒飲みの社会学」の著書がある奈良女子大教授(社会病理学専攻)、清水新二さん(62)は批判的だ。 「安易にどこでも飲む行動は、決して好ましくありません。コンビニの前は公共の場所です。まあ、何人かでたむろして飲めば、飲む量に歯止めが利く分だけ、一人で飲むよりはましですが」 お手軽な一杯に賛否が割れたのは、お酒が毒にも薬にもなるからか。小泉政権以降の規制緩和もあり、お酒を取り扱うコンビニは2月末現在、全国4万1875店(日本フランチャイズチェーン協会加盟業者分)にもなる。 さて、変わりつつあるのは飲む場所だけではない。サントリーが3月に発売したチューハイ「ほろよい」。このCMで紹介された「ウェブ飲み会」をご存じだろうか。 CMには俳優の堀北真希さん、水嶋ヒロさん、オダギリジョーさんが登場。別々の場所で飲みながら、「ほろよいって?」「素直になれる、一番心が開く状態」などとネット上で言葉を交わすのだ。 「我々が『ウェブ飲み会』という言葉を作ったのでなく、先にそうした飲み方があった」とは、同社RTD・リキュール部長の山田真二さん(53)。こう続ける。 「最近の20歳代は10時以降、音楽やネットとともにお酒を楽しむ傾向があります。ゆっくり、長く飲むので低アルコールが好まれます。40、50歳代が7、8時台に食中酒を楽しむのとはまったく違いますが、それでも、誰かとつながっていたい欲求があるから、チャットを楽しみながら飲むのでしょう」 社会学者の清水さんはおおむね肯定的に受け止める。「現代的な飲み方。ほろ酔いの状態と上手に付き合い、静かにゆっくりと飲むのは悪くない。ただ、毎日飲みながらウェブをしていると、ウェブをする時にはいつも飲みたくなるということになりかねない。注意は必要です」 相手の顔が見えない“飲み会”というのも味気ない気がするが、そこが当世風なのだろう。ブームが高じ、お店で飲む若者が減り、飲みながら親交を深める赤ちょうちん文化が廃れてしまわないのか。 首都圏で立ち飲み店「かぶら屋」を20店舗展開する「フードゲート」(東京都)社長、内山九十九(つくも)さん(48)は、そんな悲観論を一蹴(いっしゅう)する。 「お客さんを見ていると、20歳代の方はかっこよさとかおしゃれだからと入ってくる。でも、30歳代だと、女性でも一人で来る方がいるんです。コミュニケーションの大切さや人恋しさを実感するんでしょう。やはり最後は人と人とのふれあいですよ」 前出の狩野さんも言う。「その昔、日本ではお酒はへべれけになるまで飲み、自分をさらけ出すためのものだった。今は量も抑え気味だけど、私たちの根本にはそうしたDNAみたいなものがあって、人と人との距離感を縮めたいという思いがあるのでは」 世相が移ろい、お酒の飲み方が変わりはしても、私たちがお酒に求めるものはさほど変わっていないのかもしれない。……おいしいお酒を飲みたくなってきた!』毎日JP
お酒が今の日本の世相を如実に物語っている出来事と思います。お酒好きな人達を通して、庶民の不況の中の経済状況や生活が反映されている取材と思いました。景気が良くなり赤暖簾や居酒屋で、お酒を飲みながら楽しく話し合える日の到来を左党は待ち望んでいると思います。庶民のささやかな楽しみも楽しめない今の深刻な不況下の日本です。通勤帰りの電車の中で、中年のおじさんが一杯飲まれますと未成年もの中高生が真似して電車の中で飲まないか心配です。小泉政権以降の規制緩和もあり、お酒を取り扱うコンビニは2月末現在、全国4万1875店、日本フランチャイズチェーン協会加盟業者分あるらしいですが。コンビニは、昔で言えばよろず屋、夜遅くまで営業していますしお酒の当てになる物も販売しているのでお酒のを買い外で立ち飲みするのはもってこいかも分かりません。コンビニの規則で店内で飲めませんが。不況の影響で暖簾をくぐり、居酒屋で立ち飲みをする人が少なくなったのかも分かりませんね。外食産業低迷の原因も底にあるのかも分かりません。庶民のささやかなストレス解消の場としてのお酒屋さんの数も少なくなり、お酒屋さんで立ち飲みする場所が無くなり、するめやつまみで、ちょっと一杯自宅に帰る前に冷酒を引っ掛けて飲めなくなったと言えますね。規制緩和で、コンビニやスーバーマケットでお酒が自由に販売されるようになりお酒屋さんの営業が成り立たなくなったからと思います。お酒屋さんで、お父さん達のつまみ片手に日本酒やビールの立ち飲み風景は昔懐かしいものになってしまいましたね。都市圏では、酒屋さんが少なくなったと思います。通勤帰りの電車の中でロングシートで、お父さん達が、一杯飲まれますと未成年の中高生が、真似をして電車の中でお酒を飲まない心配です。未成年者の飲酒の問題も出て来そうですね。お酒を飲むことで気分を晴らし、お酒飲み仲間で、知り合った人達と仲良く交流を深め、皆で楽しいお酒が楽しめる庶民の憩いの時間が復活しますように祈っています。庶民の目線に立った政治で、庶民の暮らしを良くして欲しいと思います。