■「裸のマハ/Volaverunt」(1999年・フランス=スペイン)
●1999年サン・セバステャン国際映画祭 主演女優賞
監督=ビガス・ルナ
主演=ペネロペ・クルス アイタナ・サンチェス・ギヨン ステファニア・サンドレッリ
「裸のマハ」は絵画史上初めて陰毛が描かれた裸婦像。異端審問会に告発されたという。そのゴヤの名画をなめるように撮るカメラワークから、問題の陰毛のアップ・・・そこにくびれたグラスが重なるオープニングは実に印象的。観客を映画の世界へと誘う上手な魔法だ。ビガス・ルナ監督は「性」にこだわる監督。でもそれは陰湿さはなく、「おっぱいとお月さま」にしても「ハモン・ハモン」にしても、ラテン系の映画らしいあっけらかんとしたユーモアがあった。今回はそんなユーモアある作風から離れ、19世紀の宮廷をめぐる愛憎劇をスリリングにみせてくれる。前出2作品ほどの露出はないけれど(残念・笑)、エロスの匂いが画面から香ってくるような映画だ。冒頭パーティの場面、裸足で踊るペネロペ・クルスの美しさ。宰相マヌエルが彼女をみそめる場面、「絵に描かせて側に置きたい」というのも、男としてわかるわかる。
ミステリーは二段構え。ひとつは「マハ」のモデルは誰か?という歴史上の謎。アルバ公爵夫人がモデルだとされている。が、当時”フランス流”として剃毛が流行っており、公爵夫人も例外ではなかった。では誰がモデルなのか?。そしてもうひとつは、公爵夫人の死が殺人なのか自殺なのか?というミステリー。宮廷内の人間関係の面白さもあるのだから、登場人物それぞれの証言が入り乱れて「羅生門」のような展開になったらもっと面白かったのではないだろうか?。でも豪華な衣装と美術、当時を再現しようとする凝った出来栄えは見応えありです。
(2003年筆)