鈴木清順風の紳士が課題図書として置いていった、山田風太郎『エドの舞踏会』(文藝春秋、1983.1)を痛快に読ませてもらう。
薩摩の海軍将校・山本権兵衛(のち総理大臣)は、鹿鳴館に当節の元勲とその夫人らの人集めを命じられる。
彼はアメリカ帰りの大山捨松(大山巌の夫人)とともに、井上馨・伊藤博文・山県有朋・黒田清隆・森有礼・大隈重信・陸奥宗光・ジャンドル将軍とその夫人らに声をかけていく。
風太郎は鹿鳴館とその夫婦にスポットを当てることで明治という時代を抽出させる。
夫人の多くの出自が美人の芸者であることで、鹿鳴館は芸者らの優れた配慮で成り立っていたという視点が斬新だ。
とりわけ、外務省顧問であったル・ジャンドル将軍の糸子夫人の混血児が他人に秘かに育てられ、結果的には15世市村羽左衛門になったという定説は圧巻だった。
山田風太郎といえば、忍法を駆使した大衆小説家としか見ていなかったが、『エドの舞踏会』は綿密に明治の史実を集めていることが伝わってくる。
その史実の隙間に風太郎の忍法が発揮され、すべて真実のように思わされる。
しかも快刀乱麻のごとく痛快にして切ない物語に仕上がっている手腕に脱帽する。
大仏次郎を想起した。
彼は鞍馬天狗だけが肥大化している作家だが、彼の戦前の冷徹な時代認識とその作品の先見性は、風太郎と同じものを感じ入る。
また、山県有朋が栃木那須に保有していた広大な「山県農場」は、子孫の妻山県睦子さんが林業家として日本の林業の一翼を担っているのを最近知ったばかりだ。
薩摩の海軍将校・山本権兵衛(のち総理大臣)は、鹿鳴館に当節の元勲とその夫人らの人集めを命じられる。
彼はアメリカ帰りの大山捨松(大山巌の夫人)とともに、井上馨・伊藤博文・山県有朋・黒田清隆・森有礼・大隈重信・陸奥宗光・ジャンドル将軍とその夫人らに声をかけていく。
風太郎は鹿鳴館とその夫婦にスポットを当てることで明治という時代を抽出させる。
夫人の多くの出自が美人の芸者であることで、鹿鳴館は芸者らの優れた配慮で成り立っていたという視点が斬新だ。
とりわけ、外務省顧問であったル・ジャンドル将軍の糸子夫人の混血児が他人に秘かに育てられ、結果的には15世市村羽左衛門になったという定説は圧巻だった。
山田風太郎といえば、忍法を駆使した大衆小説家としか見ていなかったが、『エドの舞踏会』は綿密に明治の史実を集めていることが伝わってくる。
その史実の隙間に風太郎の忍法が発揮され、すべて真実のように思わされる。
しかも快刀乱麻のごとく痛快にして切ない物語に仕上がっている手腕に脱帽する。
大仏次郎を想起した。
彼は鞍馬天狗だけが肥大化している作家だが、彼の戦前の冷徹な時代認識とその作品の先見性は、風太郎と同じものを感じ入る。
また、山県有朋が栃木那須に保有していた広大な「山県農場」は、子孫の妻山県睦子さんが林業家として日本の林業の一翼を担っているのを最近知ったばかりだ。