山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

ヤマトタケルが転生した少年は…

2024-08-17 22:43:19 | 読書

 畏友のブラボーさんが「縄文」に興味を持つオイラに送ってくれた漫画・諸星大二郎『闇黒神話』(集英社、1988.6)を読む。ベトナム戦争が終結し、ロッキード事件が発覚するなど変動激しい内外情勢があった当時、若きブラボーさんは進展する企業戦士の中枢として日夜奮闘する日々の合間に読んだのが、「週刊少年ジャンプ」に連載されていた「闇黒神話」などだった。深夜に至る残業前、近くの喫茶店で夜食のナポリタンを食べながらコーヒー片手にむさぼり読んだらしい。オラはひとり住まいの母親の実家にもどり、なんとか新天地での就職に滑り込んだばかりのほろ苦い再出発だった。

 

 主人公の少年・山門武(ヤマトタケシ)は殺された父の真相を解明していくと、出雲と関係が深い諏訪地方の縄文土器と怪しい関係者に出会う。そこから、ヤマト王権に抵抗していたクマソ一族の末裔が登場し、「武」の究明を妨害する。同じような縄文のルーツを持つ両者がなぜ対立するのかはよくわからないところだったが。

  

 日本の古代遺跡、日本神話、仏教、呪術、宇宙などの関連話題が次々引きも切らず展開していく。その強引なスケールの広がりが本書の魅力でもあるが、登場人物の生硬な表情が気になるところでもある。内容がダークで伝奇的なものだからなのかもしれない。

 

 物語としては世紀末的な終わり方でもあったが、熱烈なファンはいるようで、装丁が凝っている価格の高い豪華本も発行されている。なお、闇黒神話と別に「徐福伝説」が収録されているが、残念ながら舌足らずで終わった短編のように思えた。ただし、徐福の山師的な姑息さを暴くところは見事だとともに、「混沌よ わしにはひらかぬのか!  永遠への扉を ひらかぬのか!?」と叫ぶ徐福の言葉は、本書のテーマと著者の人生や社会への箴言ではないか、とも思われた。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする