寮管理人の呟き

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どくとるマンボウ回想記 / 北杜夫

2007年02月16日 | 書籍

日本経済新聞出版社、2007年1月24日第1刷、定価1500円+税

北杜夫さんは2006年1月に私の履歴書を連載した。私はそれをすべて読み、精彩を欠いていることから「体調が悪いのかな」と心配していた。本書は同新聞に発表したエッセイと新たに書き下ろしたものを加えて、面白い作品になっている。

『どくとるマンボウ青春記』を知らなかったとしたら、松本を訪れることは決してなかったと思う。私は海の無い県にはかなり辛辣な評価をつけているのだが、ここは数少ない例外だ。

傲慢な言い方になるが、旧制高校が置かれた都市(そのほとんどが城下町)は品があるのだ、北関東とは違って(笑)。松本は戦災を受けなかったため、昔の町並みが残っている。すぐに顎を上げたがるクソ京都(一地方都市)が忘れている謙虚さがあるように感じる。

北さんは死ぬ前に一仕事したかったんだろう。これは彼の一生を早送りで見ることができる秀作だ。ものの30分で読了した。彼が苦労して捻り出したと思われる短歌は私の胸を強く打つ。

いつしかに季節の移りて見渡せば四方のはかなさ

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