ウドンコ病が発生して商品価値のなくなったイチゴを5㎏弱頂いた。傷みは早いし生食でもそうそう食べきれる訳もなく、ましてや「ジャム加工」すればパン食は少ない小生の冷蔵庫はジャムで溢れてしまいかねない。そこで保存が出来て嵩が減り、尚且つ美味しくなるのは何だろうと考えて「羊羹」が浮かんだのだがウドンコ病に侵された圃場のイチゴならではの糖度7度では加糖しなければ美味しい羊羹にはならない。
とりあえず就寝前に傷んだ部分とヘタを切り取り冷蔵庫に収めた。これで傷みの進行を遅らせ思案する余裕が出来た。で、深夜に「煮詰める」結論を出したのだが思い起こせば郷里の婆様はスイカ糖を作っていた。記憶では「腎臓に聞く」と聞いたように思うけれど棚の奥にあってどう使っていたのかは知らなかった。しかし盗み舐めして「甘かった」のは記憶にあるし色合いも西瓜を彷彿とさせる液体だったように思う。ちなみに小爺は生まれも育ちも越後党である、が徒党は組まない徒労は満ちている。
そんなことで翌日、作業を早めに終えて帰宅しイチゴ糖に加工する事にしたのだ。この時大活躍したのが二枚貝の給食用の機材として購入したフードプロセッサーで、瞬く間にイチゴ4.5kgをドロドロに出来たのだ。最初はすり鉢を出して潰し始めたのだが「とてもたまらん!」となってお出ましを願った。
総量4.5kgは一番大きい鍋圧力鍋に満杯になって、同じ容量なのだが南部鉄鍋なら口広だし蒸散量も早いだろうと用いてみたものの、どうもイチゴの酸で鉄が溶けだす様な感じがする。まあ、鉄分補給にはなるけれど色合いが暗くなりそうなので却下としたのだ。
そこで登場願ったのがホットプレートで、半量しか入れられないけれど沸騰しても溢れる事無く煮詰める事が出来たのだった。キッチンに立ちっぱなしの4時間でイチゴ糖1.2kgを得た。冷凍保存のSサイズ2袋に収まる量まで減らすことが出来たのだが、それよりも何よりも思っていたより美味しくなってしまったのである。
生果そのものは商品価値のない、生産者側からすれば廃棄相当の等外品質で糖度7度では「美味しい」と感じる果物ではなかったにもかかわらず、酸味が優先した出来上がりなのだが濃厚なフルーツ感は捨てがたい。このままパンに塗ってもフルーツ感覚あふれるペーストで、酸味はルバーブジャムのそれに似ていた。
本来ならば廃棄物扱いの品質が加工によっては消費者に大歓迎される物に変わってしまう好例ではないかと人生経験豊富、知見も余るほどある人生の生き字引翁、エッセンシャルワーカー紛いの姥捨て山の主、高齢小生が言うのだから間違いなかろう。
味は写真では伝わらないものの色調はイチゴを連想できる色合いではなくなっているが香りは濃厚になってイチゴ感がある。色合いは若い世代なら「チョコレート色」、高齢世代なら「小豆色」そのものに見えているだろうが、何はともあれ口にしない限りは美味しさを分かってもらえない。
生産された果物類も様々の理由で廃棄される量は多いと思うけれど、こういう加工をすれば廃棄物が減り美味しい物を提供できるに違いないが今回のお遊びの実感・・・。まあ、「廃棄イチゴ大変身!贈答相当品に化けてしまった‼」のが結果結論。小生としては、これをこのイチゴ生産者にひと匙でも味見させたいと思う。きっと気落ちしていても「苦労が報われる」実感をする瞬間である事は疑わない。