残暑は相変わらず厳しいのだが山椒は変ることなく辛いのであるからいつまでもウダウダしても居られないとまあ、斯様に考えて痛い腰を上げた。熱中症警戒アラートは「危険」のレベルが続いていたり台風の停滞やらダブルで自宅軟禁もそろそろ何とかしなきゃあかん。降雨時は無理でも午後になれば作業スペースが日陰になるので気温は高くとも日射は避けられるから木工作業を行ってみる事にした。午後の気温は33℃程度が普通になっているが気温より蚊の襲来が苦になりそうで、電気蚊取りと蚊取り線香を二個用意しての作業開始である。何のための試作かと言えば来る1月の後半に開催される「森の市」への出品の試作なのだ。間借りで木の玩具を出品しているが目新しさも欲しい。これはお客よりも小生自身の為である。
試作しようと考えたのはいわゆる「イースターエッグ」であるがもちろん卵の殻は使わない。市販の卵は外殻が薄くて使う気にもなれない。少年時代、祖母が平飼いしていた時の卵の様にカンカンと角に叩いて割るような強度が欲しいのだがコストや生産性重視の卵では無理である。そこで考えたのが「軽い木材で形成し胡粉を塗って模する」事だった。そのためには軽い材を調達せねばならず、とりあえず入手可能なフイールドに放置しておいた「ヤナギの太枝」と「桐の集成材を更に接着して厚みを出した材」で試作をしてみる事にしたのだ。
既にヤナギ材は鉈で割って卵の直径が取れる形状に近くしてあるし桐集成材の接着も十分な時間経過が済んでいる。まずは失敗しても惜しくは無いヤナギ材の鉈割りから木工旋盤で切り出してみる事にした。材の両端にはコンパスで円を描きセンターを出しているが外周の凹凸で偏芯状態なのとチャックに加える部分が円筒形ではないので保持力に難がある。そのため本格的加工前にチャックで掴む範囲の端面と外周を切り出しておかねばならないのだ。しかしながらこの作業が一番危険で回転を落したくても機能は無いので通常回転速度で回す事になるから切削負荷は押さえなばならない。
切削負荷を大きくしない様に削り出した押しセンター側を改めてチャックで掴ませれば安定した保持となるものの木質が軟弱なので締める力の加減が必要で、ここのところは試行錯誤だけれど錯誤では材がぶっ飛ぶ事に繋がり、そうなると小生に直撃間違いなしなのでホント怖いわい…。押しセンターで振れを防止するものの押しつければ先端は抵抗薄く挿入される。ここも手加減が大事で結局は「運を天に任す」感じになった。
切削抵抗を減らすには切れ味の良い刃物を使用するのは「イロハのイの字」ではあるもののとにもかくにも試作して見たくて作業突入したのだった。材料の長さは旋盤の大きさから180mmが限界でこの長さだと押しセンターの穴やチャックで掴む部分の寸法を除かねばならないので二個取りとなる。ヤナギ材が4本で桐の集成材が2本取りなので都合6本となるから「木の卵」は12個が得られる勘定だ。まあ、取らぬ卵の数算用」であるからしてどうなるやら、やってみなくては分からない…。
削り出してみて初めて分かったのだあるが「卵型」を納得できるデザインにまでカーブを整えるのは意外に難しいのであった。事前にコンパスで原寸大に製図してあるしプラ版で外径のゲージも用意したけれど「要は見た目の感覚」が核心だった。ゲージなんて「形を揃える道具」でしかない。端的に言えば「全く不要」で寸法を測る必要も無い只々「目視」による加工が最適だったのである。