トンボや小魚を探しに水田地帯を彷徨したが皆無だった。社へ参拝のおりオニヤンマやサワガニの溢れていた小沢に降りてみた。「カワトンボくらい見れるかも…」の淡い期待もできない期待と思いつつもその期待に賭けてみたのだ。
「やっぱり駄目だ」と思っていたところに石の上から水底に入った動きを見た。「蛙だ!」と思ったものの、まさかカジカガエルとは思わなかった。両手で水底から掬い取ったカエルはまさしくカジカガエルであった。
沢筋も主母川の浅瀬もカジカガエルの鳴く時刻には立ち入らなかったし郷里にカジカガエルが生息していようとは想いもしなかった。鎮守の森はモリアオガエルだけと思っていた。
水田地帯を歩いたらカエル一匹隠れる草地もない。だから「カエル飛び込む水の音」も無しで農機の音や姿を消し去れば「行雲停水」、飛翔するトンボ一匹いない水田地帯だった。沢の木漏れ日の下で聞こえてくる微かでもよく通るカジカガエルの鳴き声は「祇園精舎鐘の音」と同じく「色即是空 空即是色」そのものに思えた。
まったく「故郷は遠くにありて想うもの」なのだろう。
「やっぱり駄目だ」と思っていたところに石の上から水底に入った動きを見た。「蛙だ!」と思ったものの、まさかカジカガエルとは思わなかった。両手で水底から掬い取ったカエルはまさしくカジカガエルであった。
沢筋も主母川の浅瀬もカジカガエルの鳴く時刻には立ち入らなかったし郷里にカジカガエルが生息していようとは想いもしなかった。鎮守の森はモリアオガエルだけと思っていた。
水田地帯を歩いたらカエル一匹隠れる草地もない。だから「カエル飛び込む水の音」も無しで農機の音や姿を消し去れば「行雲停水」、飛翔するトンボ一匹いない水田地帯だった。沢の木漏れ日の下で聞こえてくる微かでもよく通るカジカガエルの鳴き声は「祇園精舎鐘の音」と同じく「色即是空 空即是色」そのものに思えた。
まったく「故郷は遠くにありて想うもの」なのだろう。