先日の熊本・福岡ひとり旅で以前から行きたかった中洲にあるレトロ映画館にて公開中の映画「母性」を観た。
【解説】ベストセラー作家・湊かなえの同名小説を映画化し、戸田恵梨香と永野芽郁が母娘役を演じたミステリードラマ。ある未解決事件の顛末を、“娘を愛せない母”と“母に愛されたい娘”それぞれの視点から振り返り、やがて真実にたどり着くまでを描き出す。女子高生が自宅の庭で死亡する事件が起きた。発見したのは少女の母で、事故なのか自殺なのか真相は不明なまま。物語は悲劇に至るまでの過去を母と娘のそれぞれの視点から振り返っていくが、同じ時間・同じ出来事を回想しているはずなのに、その内容は次第に食い違っていく。語り手となる母のルミ子を戸田、娘の清佳を永野が演じ、ルミ子の実母を大地真央、義母を高畑淳子、ルミ子の夫を三浦誠己が演じる。「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「ヴァイブレータ」の廣木隆一監督がメガホンをとり、「ナラタージュ」の堀泉杏が脚本を担当。
暴力的な父親と下品で絶対的権力をもつ母親に育てられた夫と、上品な家庭で大切に育てられたお嬢様妻との生活。夫は妻の料理にも髪型・服装にも何の感想もなく、嫁いびりの実母から妻すら守れない逃げ人生を送り、幼い頃から実母に愛情たっぷりに育てられた間違った優先順位のマザコン妻とのそれぞれの歪んだ愛情に観ていて気持ちが萎える。それぞれの家庭に共通することは、子供が社会に出るための巣立ちの準備を全く見据えていない親の躾に他ならない。「親の非常識、子の常識」が終始漂っている。そんな二人の間に出来た子供は幼い頃から親の顔色ばかりを見て育ち、社会不適合の妙な正義感を振りかざすようになり、立派な可愛げのない女性へと育っていく。映画「MOTHERマザー」とはまた違う日常に潜む恐怖である。戸田恵梨香と永野芽郁の主演女優を始め、大地真央、高畑淳子、そして子役の演技と見事なキャスティングに感動すら覚えた。
また母娘双方の真実がそれぞれの目線で描かれているのだか、それぞれの言い分や表現が微妙に異なっている部分に背筋がぞぉ～と寒くなり、改めて作品ポスターや上記画像の「母の手」が恐ろしい・・・母になる娘と娘のままの母・・・今年最後に映画館で観た作品はその夜の福岡の寒さと重なった・・・
