以前から気になっていた映画「最強のふたり」を観ようと九月上旬に劇場へ向かった。すると劇場前には長蛇の列が出来ており、まさかと思いつつ係員さんに確認すると「2回あとの上映からのご案内」と少し誇らしげに説明された。こんなにも評判がいいなんてと驚きつつ、その日は劇場を後にした。それから数週間が経過し、評判が評判を呼び上映劇場も増え、先日ようやく観ることが出来た。
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【解説】フランスで公開されるや歴代興収記録第3位という大ヒット。フランス国民の3人に1人が観たばかりか、ヨーロッパ各国でもNo.1ヒットを飛ばし、ハリウッドがリメイク権も獲得した話題の本作。主人公は体が麻痺して車椅子生活を送る大富豪と、スラム出身の黒人青年。クラシック音楽を愛し、現代美術に造詣が深い富豪と、アース・ウインド&ファイヤーが好きで会話も下ネタが多い青年。歳も趣味も性格も、育ってきた環境もまったく違う2人だからこそ、利害関係のない人間同士の友情が生まれたのだ。しっとりとした人情ものではなく、さらっとしたコメディタッチで描いたのは正解で、後味もいいさわやかな作品となっている。
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実在の話を基に作られた作品である。オープニングで流れるアース・ウインド・アンド・ファイアーの「セプテンバー」が懐かしい。黒人青年ドリス(オマール・シー)が障害者の大富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)を全く憐れまないスタンスが気持ちいい。また室井滋似のフィリップの助手イヴォンヌ(アンヌ・ル・ニ)がとてもいい。いい映画はわき役が余りでしゃばらずにいい味を出しているものだ。
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発作が起きたフィリップをドリスが早朝の街に連れ出すシーンがあるのだが、ふと私の娘がまだ小さかった頃、夜泣きをして、自転車で深夜の街を走ったシーンと重なった。また深夜の街を滑るように車が疾走するシーンがとても印象的な映画だった。
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良い点は数々あるのだが、とにかくフィリップの「笑顔」が素敵で、それを観るだけでも一見の価値がある作品だと思う。それほど素敵な笑顔なのである。ただタイトルがあまりにも残念である。「最強のふたり」って・・・原題Intouchables(英語ではuntouchables)には「手を触れてはならない」とか「禁制」の意味があるが、「社会ののけ者」の意味もあるらしい。
次第に高まって行く評価と共に私の期待も勝手に膨らみ過ぎた為、行列の出来る名店のようにほんの少しだけ物足りなくの感じたものの、とても心地良い113分であった。帰り道にそのままアース・ウインド・アンド・ファイアーのCDを借りた。
有限会社やな瀬不動産