映画「658km、陽子の旅(2022年公開)」を観た。
【解説】「#マンホール」「私の男」の熊切和嘉監督と「バベル」の菊地凛子が、2001年の「空の穴」以来22年ぶりにタッグを組んだロードムービー。「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM 2019」脚本部門で審査員特別賞を受賞した室井孝介の脚本を原案に、人生にもがき苦しむ女性の東北縦断の旅を描く。就職氷河期世代である42歳の独身女性・陽子は、人生を諦めてフリーターとしてなんとなく日々を過ごしてきた。そんなある日、かつて夢への挑戦を反対され20年以上疎遠になっていた父の訃報を受けた彼女は、従兄の茂やその家族とともに、東京から故郷の青森県弘前市まで車で向かうことに。しかし、茂の家族は途中のサービスエリアで子どもが起こしたトラブルに気を取られ、陽子を置き去りにして行ってしまう。所持金もなくヒッチハイクで故郷を目指すことにした陽子は、道中で出会ったさまざまな人たちとの交流によって心を癒されていく。共演には竹原ピストル、黒沢あすか、風吹ジュン、オダギリジョーら実力派が多く顔をそろえる。
昨年九月の青森ひとり旅のレトロ映画館での鑑賞の際に映画「バカ塗りの娘」と最後まで迷った作品である。冒頭乱雑な部屋で淡々とひとりパソコンに向かって仕事をして孤食する化粧っけがない無表情な主人公は宅配荷物の受け取りの際にお礼すら言わず、いとこと対面した時の第一声も声が出なかったのは誰とも話さない生活ゆえの代償なのだろう。ヒッチハイクのシーンになっても声が出ず、乗せてもらっても愛想も礼儀もなく、会話のキャッチボールすらも出来ず、進んで手伝うこともしないので、黙って後部座席に座る主人公に対して黒沢あすか演ずるシングルマザーが言う「私はドライバーじゃないんだけど」はもっともである。ただヒッチハイクを重ねると次第に声も出始め、会話も出るようになり、お礼も言えるようになるのはやはり実際に人と対面して話したからだろう。彼女自身が半生を振り返るシーンで色々なことから逃げてきた結果だと話すが、彼女はこの時点で気づいただけでラッキーである。何故なら気付かない人の方が圧倒的に多いのだから・・・そんな主人公を会話が苦手な人の特徴である「時々変に大きな声」で菊地凛子が実に見事に演じる。改めて生きていくうえで会話力の大切さを痛感した作品だった。
本作品では携帯がないことによって大変な思いをするのだが、自分に置き換えると妻の携帯番号ですらうる覚えであることに気が付く。固定電話の頃は何件かは覚えていたものだったが・・・ちょっとこの辺りは考えようと思った。
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