北海道昆虫同好会ブログ

北海道昆虫同好会は北海道の昆虫を中心に近隣諸国および世界の昆虫を対象に活動しています。

2019年秋、絶滅危惧種の蝶イシダシジミの生息地で草刈り

2019-11-14 00:29:07 | イシダシジミ
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2019年秋、絶滅危惧種の蝶イシダシジミの生息地で草刈り




2019-11-12(火)の北海道新聞朝刊16Pのオホーツク版に絶滅危惧種とされ種の指定種として厳重に保護されることになったイシダシジミ( アサマシジミの北海道亜種 Lycaeides subsolana iburiensis Butler)の管内唯一の生息地、陸上自衛隊遠軽駐屯地演習場で草刈りが行われたことが報じられていました。








従来、環境省等は絶滅危惧種や種の指定はするものの、せいぜい採集禁止の看板を立てるくらいの対策しか行われないケースが多いなかで、地域住民などがこの蝶の幼虫が食べる食草ナンテンハギに覆い被さる笹や小灌木、ヨモギ、ワラビ、フキなどを草刈り機で刈り倒すという実効性が期待される対策を開始したのは注目に値する。







2019年10月中旬に草刈りを実行したのはNPO法人丸瀬布昆虫同好会、遠軽町職員など計12名。この産地では過去に自衛隊による草刈りが行われた翌年にイシダシジミが大発生したことがあり、以前からこの発生地での継続的な草刈りが推奨されていた。




今回の草刈りの効果が期待される。ぜひその後の経過も知りたいものです。




この記事は北海道オホーツク地域の北海道新聞購読者などごく一部の人々の目にとまるだけとおもわれ、広く北海道全域ないし全国にも知ってほしいとおもい本ブログでも紹介させていただきました。



かってはオホーツクや道東をはじめ道内各地に普通に産する蝶で、この蝶がこれほど減ってしまうとは誰も考えてはいなかった。



減少の理由は種々考えられているがはっきりしないものの、開発など人間の営みにともなう生息環境の破壊(豊かな草原の消失)や生息地の自然環境の急激な変化によるところが大きいと考えられます。





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環境省、最初から「結論ありき」の、国民を無視したまったくの暴挙

2016-07-07 21:18:09 | イシダシジミ
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種の保存法にかかわる環境省との面談記録とその経緯
                             杠 隆史 ( ゆずりは たかし )

今年(2016年)2月9日夜、私は徳島市のホテルにいた。9日・10日と企業での研修講師の仕事である。夜12時前にパソコンを開いてメールをチェックすると、23時29分着で「多摩虫の会」のメーリングリストに会員のS氏の発信で以下のようなメールがあった。

環境省が「種の保存法」における国内希少野生動物種(採集・譲渡などの全面禁止)を追加に定めようということで、パブリックコメントを2/15までに求めております。

リストを見ると、山梨・長野のゴマシジミ、イシダシジミ、ウスイロヒョウモンモドキといった蝶が含まれています(昆虫のみ転記)。

ご意見ある方多いと思います。ぜひ、期限内にご意見を発してください。


12) フサヒゲルリカミキリ
13) マダラシマゲンゴロウ
14) オキナワマルバネクワガタ
15) ウケジママルバネクワガタ
16) ゴマシジミ本州中部亜種
17) アサマシジミ北海道亜種
18) ウスイロヒョウモンモドキ
19) アカハネバッタ

さっそく環境省のホームページで確認したが、とんでもないことである。

翌10日も徳島市で研修があり、11日は建国記念日だったので、2月12日午前に環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室に電話し、私の肩書(昆虫界と研修業界)を明確にしたうえで、田邊係長(女性)と約30分間いろいろ話をした(室長は出張、補佐は会議中だった)。


まず、情報公開からパブコメ締め切り期間がわずか1週間ということ、蝶類保全協会と日本鱗翅学会以外の関連学会(日本蝶類科学学会・日本蝶類学会)や、アサマシジミの地元北海道の北海道昆虫同好会はもちろん、大阪昆虫同好会のような歴史も実績もある同好会などにも一切連絡せずに、秘密裏かつ性急に決定しようとしていることに対する疑問、各種とも愛好家の手元には莫大な数の標本がありその扱いについてなど、先に指定されたヒョウモンモドキの譲渡禁止で困っていることも含めて多くの意見を述べた。

また、私が多くの地方自治体での行政政策形成研修に講師として指導している立場から、このような進め方はきわめて不適切であるという指摘もした。


電話では埒が明かないため、私が3月早々に出張で東京に行くので、私の都合がよい3月4日午前に、直接、室長や室長補佐に意見に述べに行きたいとも伝えた。

その時に、環境省が今回のパブコメを募集する3日前の2月6日夜に、私の同窓生である小池百合子元環境大臣に「ヒョウモンモドキが種の保存法に指定され、私を含めて本種の標本を多数所持している友人たちが困っている。法改正に向けて働きかけるので力を貸してほしい」と依頼したことや、小池環境相時代に「国立公園と国定公園での昆虫採集全面禁止法案」を環境省の役人が上申したときに、小池環境相が承認しなかったことも伝えた。(毎年2月に開催している「ゆずりはのつどい・東京」の前日は、私が世話役になって芦屋市立岩園小学校・昭和40年卒業生の同窓会を開催しており、首都圏在住の同窓生が毎回10名前後集まる。これは20年続いている東京同窓会だが、小池氏とNRCスタッフの岸本由美子もレギュラーメンバーである。また、小池氏と岸本は幼稚園から甲南女子高校まで同級生で、岸本の長男の奥さんは小池氏の元秘書で、今なお深い関係がある。)


その結果、当日の夜9時12分に以下のメールが来た。

「本日はお電話ありがとうございました。環境省野生生物課希少種保全推進室の田邊です。3月4日ですが、午前中11:00からでよろしければ当室補佐が対応いたします。

なお、入館登録に当たり、所属と電話番号、人数をお知らせ下さいますようお願い申し上げます。」


そこですぐに朝日純一氏に連絡し、同行してもらうことになった。

また、環境省とパイプがある矢後勝也氏に状況を聞こうと連絡したところ、「私も同行させてください」ということでごの3名で環境省に行くことにした。


こういう動きを容認していると、近い将来、日本国内で昆虫採集がすべて禁止になる日が来てしまうかもしれない。

日本の素晴らしい文化のひとつの昆虫採集の存続のためにも活動したいと思い、行動を起こした。


翌日は、仁坂吉伸和歌山県知事にも連絡して協力要請し、仁坂氏からは環境省訪問時に「仁坂の意見も聞くように環境省の担当官に伝えてください」というメッセージをいただいた。

また、鳩山邦夫代議士の秘書、小沢洋介氏にも連絡したところ、小沢氏はさっそく環境省希少種保全推進室の安田室長に対し、2月16日に鳩山氏の国会事務所に説明に来るように求めた。


 さらに大阪昆虫同好会のメンバーや「ゆずりは」読者の方々にもパブコメ提出を依頼した。


2月16日、私は明石市役所での研修を終えた5時過ぎに小沢氏に電話して状況を聞くと、鳩山氏が法案の修正を強く求めたが、安田室長が「すでに閣議の議案として提出しているので法案の修正はできない」ということだった。

これによって最初から「結論ありき」の、国民を無視したまったくの暴挙ということが明らかになった。

これは鳩山代議士が面談されたおかげである。


3月4日、午前10時に環境省近くの朝日氏の事務所に集合し、打ち合わせをして環境省を訪問した。(訪問記録参照)

 <その他の事項>
1.2月23日、日本蝶類学会会長の横地隆氏に依頼された豊田市での研修の終了後、横地氏に環境省の動きを報告、各学会や同好会が結束してこの問題にあたることを確認した。
2.鳩山氏・仁坂氏および複数の同好会などに訪問記録を送った。


3.5月14日、兵庫県芦屋市の「ホテル竹園」で小学校の同窓会があり、その席で小池百合子代議士に2月9日以降の経緯を報告し、環境省の横暴ぶりを訪問記録をもとに説明した(訪問記録は手渡した・・・添付写真)。また、「小池さんの名前を出していなかったら、3月4日午前に限った面談もかなわなかったかもしれない」と感謝の気持ちも伝えた。

   

   文中に出てくる小池さんが都知事選に正式に出馬表明をしました。彼女は虫屋の理解者です。





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種の保存法と環境省 

2016-07-07 21:06:12 | イシダシジミ
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先般、種の保存法と環境省の理不尽な対応につき連載しましたが、このたびその経緯を杠 隆史(ゆずりはたかし)からきれいにまとめていただいた記録が届きましたので再録させていただきました。

もう一度、環境省がどのようなスタンスで種の保存法に対処しているのか認識を確認していただければ幸いです。


環境省自然環境局野生生物課訪問(平成 28 年 3 月 4 日(金))の結果について 平成28年3月14日
杠 隆史・朝日純一・矢後勝也
訪問日時:平成28年3月4日(金)午前 11 時 10 分~午後 0 時 35 分
訪問者:杠 隆史(NRC 代表・「季刊ゆずりは」主幹・日本蝶類科学学会理事・NPO 日本ア ンリファーブル会理事・大阪昆虫同好会代表幹事)・朝日純一(弁護士・日本蝶類科学学会 副会長)・矢後勝也(東京大学総合研究博物館助教・日本昆虫学会自然保護委員長・日本鱗 翅学会自然保護委員長) 環境省応対者:自然環境局野生生物課稀少種保全推進室室長補佐 徳田裕之・希少種保全 推進室指定検討係長 田邊依里子
1. パブコメから閣議決定までの短兵急なスケジュールの問題点(公正で透明性のあ る手続きであったといえるか)
(今回の省令改正手続きにおけるパブコメから閣議決定までの事実経過の時系列)
2月9日 省令改正(国内希少種の追加指定)パブコメ募集開始(2月10日マスコミ 報道)
2月15日 パブコメ締切
2月16日 鳩山邦夫事務所に環境省の担当室長の安田直人氏が呼ばれる:「既に閣議決 定の議案として送っているので変更は困難」との答弁
2月19日 省令改正の閣議決定
○環境省への質問
(a-1) 今回の省令改正における国内希少種に蝶類3種(アサマシジミ北海道亜種・ゴマ シジミ中部亜種・ウスイロヒョウモンモドキ)を含む41種(我々は蝶しか知識がな いので、以後は蝶に絞って話題とする)が追加指定された手続きは、行政手続法に基 づく手続きであると承知しているが、上記のようないわば「短兵急」ともいえる進め 方は、行政手続法第1条が規定する「公正の確保と透明性の向上」を図ったものとは いえないのではないか。
(a-2) 今回の1週間というパブコメ期間は第40条の原則30日間を大幅に下回っている が、そうすべき「やむを得ない理由」は何か。
(a-3) 第 41 条にいうパブコメ実施について周知させる努力を怠ったのではないか。 (a-4) 指定種の現状に精通している有識者の意見をどの程度聞いたのか。
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(a-5) 今回のパブコメから閣議決定までの事実経過の時系列を見ると、「提出意見を十 分に考慮」すべき義務に違反しているのではないか。
○環境省の回答
(b-1) 事前に追加指定の情報が流れると、(特に南西諸島等における他の指定種の実情 に鑑み)駆け込み採集を誘発する恐れが高いので、短い事前告知期間と短いパブコメ 期間の設定に合理性がある(やむを得ない理由がある)と考えた。
(b-2) 蝶の指定に関する有識者の意見としては、チョウ類保全協会の2氏のほか、本日 臨席している日本昆虫学会・日本鱗翅学会の矢後氏の意見も聞いている。会費を払え ば誰でも会員になれる団体の意見は、情報の管理上問題があるので意見聴取の対象と はしなかった。
(b-3) パブコメの提出意見は期間終盤に投じられたものを含めて全部熟読・検討してい る。環境省として「想定される意見」については事前に時間をかけて検討しており、 今回の提出意見は全て想定の範囲内のものであったので、十分に考慮したものと考え ている。
○環境省への回答に対する当方らのコメント・議論
(c-1) 短い事前告知期間と短いパブコメ期間の設定の合理性についての説明は、少なく とも蝶3種については全く当てはまらないのではないか。41 種を一括指定しているが、 種によって生態や実情は様々であり、それに応じたきめ細かい配慮の姿勢が欠落して いるのではないか。かような指定により国民の権利・自由が著しく制限される結果が 惹起されることに対する感覚が希薄なのではないか。
(c-2) 少なくともチョウ類保全協会の2氏は極端な保全運動の推進者として認識され ており、各地の専門家や学会・同好会会員の間ではかなり浮いた存在になっている。 彼ら2人から意見を聴取したからといって「有識者から意見を聞いた」ということに は到底ならない。
(c-3) 蝶に関していえば、(まだ発生期までは時間があったのであるから)日本蝶類科 学学会、日本蝶類学会には何らかの形で意見を聞くべきであった。因みに、矢後氏は、 今回の指定種3種の中の一部の種の指定には最優先と考えておらず、指定候補種とし て明らかに保全の急務を要する別の数種を最優先として推薦していたが、今回は保留 とされた。結果としてはチョウ類保全協会の2氏の(偏頗な)意見が取り入れられた 結果となっている。これは2氏が推進しようとしている多くの問題点を含んだ「保護 策」にお上のお墨付きを与え、2氏の活動に予算を取る(=税金を使わせる)ための 画策に利用されたという評価さえ招きかねないのではないか。
(c-4) パブコメとしての意見を「十分に考慮」するとは、パブコメを虚心坦懐に受け止 め、そのような意見が提出されたバックグラウンドにどのような問題点が存在してい
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るのか、ある程度時間をかけて吟味し、判断することを意味するはずであるのに、「想 定された範囲内」の意見だから締切の翌日には閣議に送り、3日後には閣議決定とい うのは、少なくともパブコメ期間終盤に出された提出意見を無視しているに等しいと 取られても仕方ないのではないか。
(c-5) 今回、指定種にこの3種を選定することの問題点に加えて、指定種の標本の「譲 渡し等」について重大な問題点が出されていると承知しているが、それを「十分に考 慮」したとは到底言えないのではないか。
(c-6) このような行政手続法の履践について重大な疑義がある過程を経て成立する今 般の命令改正により事実上突然国民の(後に述べるような)権利・自由を奪われるこ とに対し、素朴な憤りを禁じ得ない。
■行政手続法(抜すい)
(目的など)
第1条 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手 続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明
性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであること
をいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資
することを目的とする。
2 処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律 に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところに よる。
(意見公募手続の特例)
第 40 条 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、30日以上の 意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、前条第三項の
規定にかかわらず、30日を下回る意見提出期間を定めることができる。この場合に おいては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければならない。
2 命令等制定機関は、委員会等の議を経て命令等を定めようとする場合(前条第四 項第四号に該当する場合を除く。)において、当該委員会等が意見公募手続に準じた手 続を実施したときは、同条第一項の規定にかかわらず、自ら意見公募手続を実施する ことを要しない。
(意見公募手続の周知等)
第 41 条 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めるに当たっては、 必要に応じ、当該意見公募手続の実施について周知するよう努めるとともに、当該意
見公募手続の実施に関連する情報の提供に努めるものとする。
(提出意見の考慮)
第 42 条 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意
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見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見
(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない。
2. 国内希少種の追加指定 -指定前の標本の「譲渡し等の禁止」-の問題点(指定前の 標本の処遇について、適切な配慮がなされるべきことが検討されたか)
○環境省への質問
(d-1) 種の保存法第3条に「この法律の適用に当たっては、関係者の所有権その他の財 産権を尊重(しなければならない)」という規定が置かれているが、今回の追加指定(前 回の指定におけるヒョウモンモドキも同様の問題を孕んでいた)により、この規定と の関係で、指定前に民間(一般私人・アマチュア)の蝶類愛好家・収集家の手許で適 法に所有されている指定種の標本の「譲渡し等」については、どのような取扱いにな るのか。
(d-2) それら国内希少種の指定前の標本の「譲渡し等」を禁止する趣旨・目的は何か。 (d-3) 哺乳類などと蝶を一緒にして 41 種を一括して指定するのはあまりにも乱暴であ る。もっときめ細かな対応が必要で、棲息地における現状だけではなく、標本がどの くらいあるのかとういう現状把握も必要ではないか。今回の追加指定3種の民間で所 有されている標本数がどの程度であるか把握しているのか。
(d-4) アマチュアの同好者が国内希少種の標本の譲渡し等を受けて研究したり、図鑑を 出版したり、展示会を開いたりすること、年長者の同好者が年少者の同好者に標本を 譲渡し等してコレクションの世代間保存を行うという行為への影響はどう考えている のか。 (d-5)「ゴマシジミ中部亜種」という指定種の括りは、かような罰則を伴った規制法に 要請される「明確性」の要件を欠いているのではないか。ちなみに矢後氏はパブコメ 公開時に、環境省には「関東・中部低地亜種」の名称および亜種名の学名表記(ssp. kazamoto)を推奨していたが。
○環境省の回答
(e-1) 種の保存法第 12 条第 1 項により、指定前の標本についても、有償の所有権又は 占有権の譲渡・移転(売る・買う・賃貸し・賃借り・預ける・預かる)はもちろん、 無償での所有権又は占有権の譲渡・移転(あげる・もらう・ただで貸す・ただで借り る・ただで預ける・ただで預かる)は全て原則禁止される。
(e-2) 国内希少種については、国外希少種のような事前登録による規制解除の措置は用 意されていない。
(e-3) 国内希少種の学術・研究目的での譲渡・貸借・陳列はその旨の申請があれば適切 に許可する。
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(e-4) 公的研究機関(大学や博物館など)は届出を出せば自由に国内希少種の寄贈を受 けられる。
(e-5) 販売・頒布目的でない展示は法文上も自由である。
(e-6) 国内希少種の標本の所有者による廃棄・破壊行為と相続による移転は規制対象外 である。
(e-7) かような規制を行わないと、国内希少種の標本を得るための採集行為を誘発して 希少種の絶滅を助長することにつながるので、希少種の保存のために必要な措置であ る(種の保存法第 12 条と第 3 条は矛盾しない)と考えている。
(e-8) 種の違いに応じて指定の内容を変えることや、蝶の標本数の実態把握は作業が煩 雑になるからできない。今回の追加指定3種の民間での所有標本数は、実態は調べて いないが、「非常に多くの標本数がある」とは認識している。ただ、公的機関の受入等 で対処は可能なのではないか。
(e-9) 標本譲渡の自由については、そもそも「野生生物をお金に替える」という行為は いかがなものかという考え方もある。
(e-10)「ゴマシジミ中部亜種」は ssp. kazamoto を指すものとして明確な認識ができるも のと考えている。
○環境省への回答に対する当方らのコメント・議論
★指定前の標本の流通規制について
(f-1) 一般に昆虫類は多産多死の生物であり、哺乳類や鳥類のような少産少死の生物と は異なり、個体をフィールドで得ることが容易なため、標本数が桁違いに多くなる必 然性がある。
(f-2) 前回指定のヒョウモンモドキも同様であるが、今回の追加指定種3種はかつて個 体数が非常に多い種であった結果、民間で所有されている標本数は膨大な数に上る。 (f-3) 種の違いによるきめ細やかな対応や蝶の標本数の実態把握が「作業が煩雑になる からできない」というのは役所の論理であり、到底容認できない。そのような姿勢で の指定はきわめて杜撰である。
(f-4) 種の保存法第 12 条による「譲渡し等の禁止」措置は、国民の最も重要な財産権 のひとつである所有権のほとんど(自ら保持すること、捨てること、相続することを 除く)をいきなり奪うことを意味するが、かような規制を一律にかけることと、追加 指定種の「種の保存」の必要性との間に合理的なバランスが取れていないのではない か。
(f-5) かつて多くの棲息地があり、個体数も多かったこれらの指定種は、開発や自然環 境の変化でその棲息地が極めて限局された場所しか遺されていない種であり、今や国 が予算措置を講じてでも保存しなければ絶滅してしまいかねない希少種であることは 共通認識である。
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(f-6) 他方、膨大な数の標本数が民間で所有されているこれらの指定種の標本(特にゴ マシジミ中部亜種は数万頭に達するものとの推定が成り立つ)が存在している(した がって、標本価値もそれほどない)のに、指定前の標本の流通を自由にしたからとい ってわざわざ厳重に保護されている棲息地に犯罪者になるリスクを侵して採集(密漁) に出向き、それを販売(密売)する者がはたしてどれだけ出てくるのか、その因果関 係を肯定する根拠に乏しいのではないか。
(f-7) よしんば指定前の標本の流通に一定の規制をかけることを認めるにしても、より 制限的でない手段(たとえば、相当期間を設けて民間の手持ち標本のデジタル登録を させて、登録標本については ID 番号を与えるなどして識別可能としたうえで自由な譲 渡し等を認めるなど)をどうして採れないのか、甚だ疑問である。
(f-8) 大学や博物館などの公的機関にしても、指定種の標本ばかり膨大な数が寄贈され ても収蔵数に限界があるためにすべてを受け入れることはできず、結局、貴重な標本 を廃棄せざる負えない状況も将来的に出てくるであろう。実際に寄贈依頼が来ても断 らざるを得ないケースが多く出始めている。ただし、もし現在の公的機関に収蔵庫拡 充が可能な資金源を補填してもらえるなら、あるいは、収納できるだけの新たな公的 機関を新設できるのであれば、本問題は解決できる事案である。
(f-9) 指定動植物の個性に応じて、指定前の標本についてはもっときめ細やかで国民の 昆虫趣味の自由(憲法第 13 条)、法の下の平等(憲法第 14 条)、学問の自由(憲法第 23 条)、財産権の不可侵(憲法第 29 条)に対する配慮を行き届かせることが種の保存 法第 3 条の趣旨からも必要があるのではないか。
(f-10) もともと適法な所有権の対象である蝶の標本をこのようないわば「後出しじゃん けん」のような追加指定により(指定後に種の保存法に違反して採集された標本と同 視して)所有権を実質的に奪うのは、「事後法の禁止」を定めた憲法第 39 条の趣旨に 適合しないのではないか。
(f-11) 日本は世界唯一といってよいほど昆虫採集・昆虫趣味が非常に盛んな国であり、 民間のアマチュア愛好家・収集家が作成し保管していた標本が昆虫研究の場で大きな 寄与をしてきたという、世界でも類を見ない歴史的な背景があるが、今般のような国 内希少種の追加指定は、かような日本が世界に誇れる文化的基盤の一つを構成してき た昆虫趣味の絶滅を招くのではないかと強く危惧する。
(f-12) 環境省の種の保存法第 12 条の解釈適用は、今般の追加指定に見られるような短 兵急な国内希少種の指定と相まって、「アマチュアの同好者が国内希少種の標本の譲渡 し等を受けて研究したり、図鑑を出版したり、展示会を開いたりすること、年長者の 同好者が年少者の同好者に標本を譲渡し等してコレクションの世代間保存を行うとい う行為」がすべからく違法行為と化してしまう結果を導く。このことは、日本の国内 希少種の保存という目的が過度に重視される反面、日本に住み、その存立を支えてい る国民の権利が不当に軽視される、いわば本末転倒を招くものであって、全く納得で
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きない。(朝日がイシダシジミの項の一部の執筆を担当した、本年2月発行の「珠玉の 標本箱 12(アサマシジミ・ミヤマシジミ・ヒメシジミ)」を担当官に示し、「この標本 プレートに図示されているアサマシジミ北海道亜種(イシダシジミ)の標本は、アマ チュア執筆者が自ら所有しているもののみならず、他の同好者から買ったり、もらっ たり、借りたりしたものが含まれているが、こうした出版に至る過程も指定後は「違 法」となるわけですね?」という質問を投げかけたところ、担当官は「まあ、そうい うことになります」と答えたが、この問答がこの問題の本質の一端を如実に表してい る)
★ゴマシジミ本州中部亜種の指定について
(f-13) ゴマシジミ中部亜種 ssp.kazamoto がどのような外観的な特徴を備えた変異集団 であるかということに明確に答えられる者は学者にもアマチュアにも皆無であろう。 (f-14)「亜種」という概念自体が主観的な認識・判断を含むものであり、そもそも一つ の棲息地内でも極めて変異に富むゴマシジミに「亜種」が認められるかという議論さ え存在し得る。
(f-15) 仮に ssp. kazamoto という変異集団を認めるとしても、その分布境界はどこに引 かれるのか、「関東地方」の集団は「中部亜種」に入るのか、中部地方に隣接する山形 県などの集団の扱い、高山に棲む別亜種(ssp. hosonoiなど)と認識される集団との境 界などの明確な切り分けが困難な問題が内包されており、かような括りで追加指定し て罰則の対象にすることは罪刑法定主義(=ある行為を犯罪として処罰するためには、 立法府が制定する法令において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科され る刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則のことをいう。憲法
第 31 条)に反するのではないか。
★その他
(f-16) 一般に我々蝶類の愛好家は、種の保存法が目指している絶滅危惧種の実効性ある 保全の必要性を理解している。これまでの文化財保護法や地方公共団体の条例による 「天然記念物」指定のように、「指定したら終わり」ではなく、きちんと国がお金も人 も出して効果的に希少種の絶滅を防ぐことには賛同しており、できるだけの協力もし たいと考えている。
(f-17) しかし、指定前の標本の流通に対して、現在の環境省による種の保存法第 12 条 の解釈適用による規制をかけることは、少なくとも蝶類の標本に限っては、過剰な規 制であり、何ら種の保存に寄与しない反面、いたずらに法律違反者を出すことにもな る。これは種の保存法第 3 条に適合した法律解釈とはいえず、憲法の諸条項にも違反 する疑いがあるのではないかと思われる。この標本の取り扱いに関する問題点が大き いため、その他の希少種保全に関する優れた内容が理解されない要因にさえもなりう る。
(f-18) 幸い、国内希少種の指定については3年ごとの見直しも図られる制度設計になっ
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ているので、その際の見直しを要請すると共に、昆虫標本の流通に対しては「野生生 物をお金に替えるのはいかがなものか」といった感情論ではなく、希少動植物の実効 性ある保護と国民の権利・利益の正当な保護をどう合理的にバランスさせるべきかと いう冷静な議論を経て、合理的な着地点に到達することを強く望む。
(f-19) チョウ類保全協会や日本鱗翅学会に入っていない同好者はかなり多く、杠は「季 刊ゆずりは」などの誌面で、地方自治体の採集禁止措置が採られたり、石垣島が国立 公園に指定された時などは読者に周知するなどの努力をしている。今後は、環境省が 先の2団体(日本昆虫学会を入れると3団体)だけではなく、日本蝶類学会・日本蝶 類科学学会および全国の歴史と実績がある同好会に事前に周知し、意見を聞いてもら いたい。先にも述べたが、我々は種の保存法に反対しているわけではなく、正当なこ とに対しては積極的に協力する姿勢である。また、杠は去る2月 23 日に日本蝶類学会 会長の横地会長に会い、今後、連携していくことを確認した。
■絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)(抜すい) (財産権の尊重等)
第3条 この法律の適用に当たっては、関係者の所有権その他の財産権を尊重し、住
民の生活の安定及び福祉の維持向上に配慮し、並びに国土の保全その他の公益との調 整に留意しなければならない。
(譲渡し等の禁止)
第 12 条 希少野生動植物種の個体等は、譲渡し若しくは譲受け又は引渡し若しくは 引取り(以下「譲渡し等」という。)をしてはならない。ただし、次に掲げる場合は、
この限りでない。
一 次条第 1 項の許可を受けてその許可に係る譲渡し等をする場合
二 特定国内希少野生動植物種の個体等の譲渡し等をする場合
三 国際希少野生動植物種の器官及びその加工品であって本邦内において製品の
原材料として使用されているものとして政令で定めるもの(以下「原材料器官等」 という。)並びにこれらの加工品のうち、その形態、大きさその他の事項に関し原 材料器官等及びその加工品の種別に応じて政令で定める要件に該当するもの(以 下「特定器官等」という。)の譲渡し等をする場合
四 第 9 条第二号に規定する場合に該当して捕獲等をした国内希少野生動植物種等 の個体若しくはその個体の器官又はこれらの加工品の譲渡し等をする場合
五 第二十条第一項の登録を受けた国際希少野生動植物種の個体等又は第 20 条の 3 第 1 項本文の規定により記載をされた同項の事前登録済証に係る原材料器官等の 譲渡し等をする場合
六 希少野生動植物種の個体等の譲渡し等をする当事者の一方又は双方が国の機 関又は地方公共団体である場合であって環境省令で定める場合
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七 前各号に掲げるもののほか、希少野生動植物種の保存に支障を及ぼすおそれが ない場合として環境省令で定める場合
2 環境大臣は、前項第六号又は第七号の環境省令を定めようとするときは、農林水 産大臣及び経済産業大臣に協議しなければならない。
(譲渡し等の許可)
第 13 条 学術研究又は繁殖の目的その他環境省令で定める目的で希少野生動植物種 の個体等の譲渡し等をしようとする者(前条第 1 項第二号から第七号までに掲げる場 合のいずれかに該当して譲渡し等をしようとする者を除く。)は、環境大臣の許可を受
けなければならない。
2 前項の許可を受けようとする者は、環境省令で定めるところにより、環境大臣に 許可の申請をしなければならない。
3 環境大臣は、前項の申請に係る譲渡し等について次の各号のいずれかに該当する 事由があるときは、第一項の許可をしてはならない。
一 譲渡し等の目的が第1項に規定する目的に適合しないこと。
二 譲受人又は引取人が適当な飼養栽培施設を有しないことその他の事由により 譲受け又は引取りに係る個体等を種の保存のため適切に取り扱うことができない
と認められること。
4 第 10 条第 4 項の規定は第1項の許可について、同条第 9 項の規定は第1項の許 可を受けて譲受け又は引取りをした者について、前条第 2 項の規定は第一項の環境省 令の制定又は改廃について準用する。この場合において、第 10 条第 9 項中「その捕獲 等に係る個体」とあるのは、「その譲受け又は引取りに係る個体等」と読み替えるもの とする。
(陳列又は広告の禁止)
第 17 条 希少野生動植物種の個体等は、販売又は頒布をする目的でその陳列又は広 告をしてはならない。ただし、特定国内希少野生動植物種の個体等、特定器官等、第
九条第二号に該当して捕獲等をした国内希少野生動植物種等の個体若しくはその個体 の器官若しくはこれらの加工品、第二十条第一項の登録を受けた国際希少野生動植物 種の個体等又は第二十条の三第一項本文の規定により記載をされた同項の事前登録済 証に係る原材料器官等の陳列又は広告をする場合その他希少野生動植物種の保存に支 障を及ぼすおそれがない場合として環境省令で定める場合は、この限りでない。 (罰則)
第57条の2 第9条、第12条第1項又は第15条第1項の規定に違反した者は、5 年以下の懲役若しくは 500 万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
■日本国憲法(抜すい)
第 13 条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する
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国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大
の尊重を必要とする。
第 14 条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又 は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第 23 条 学問の自由は、これを保障する。
第 29 条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
第 31 条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪は れ、又はその他の刑罰を科せられない。
第 39 条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為について は、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問
はれない。
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2016年以降のイシダシジミの運命  環境省、無用の介入

2016-06-13 20:47:39 | イシダシジミ
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2016年以降のイシダシジミの運命  
  環境省、無用の介入


遠軽町ではアサマシジミ(イシダシジミ)をシンボル化して町民ぐるみで保全活動を行ってゆくという。

この際、イシダシジミで過疎の町遠軽を売りだそうというのかもしれない。

とりあえずナンテンハギの種子を採取してそれをもとに栽培して増やし、遠軽町の太陽の丘えんがる公園コスモス園近くに移植してアサマシジミの生息地作りを目指すというとても単純素朴な発想でがんばることになったらしい。

2015年8月27日に佐々木修一遠軽町長、渡辺博行えんがる町観光協会会長、山本公威第25普通科連隊長兼遠軽駐屯地司令ら15名が参加して約100個??のナンテンハギ種子を採取したという。

その心意気には多少感ずるものがあるが たった100個の種子をもとに単にナンテンハギを増やす(6-7年かかる)だけでは前途はきわめて多難というより絶望的と思われる。

本気でイシダシジミを存続したいのなら、ぜひ前述の方策をまず検討してほしい。

実はナンテンハギの群落は道東では場所によっては今でもさほど稀ではなく、ナンテンハギが十分にあってもイシダシジミがいないところは多い。



道東。某所。 2015年7月18日。 ナンテンハギの群落。しかしここは、たまたまイシダシジミはいない。



イシダシジミの生息環境としては単にナンテンハギ大群落があるだけでは不十分ということが推定されます。

イシダシジミ生息地に共通するいくつかのポイントはこの蝶にくわしい蝶愛好家の間では語られてきましたがここでは割愛します。

道東は広く、とてもではないが十分な調査は行われておらずイシダシジミの隠れた未知産地が見つかる可能性はきわめて大きい。

従来、道外などからひょっこりやってきて、あんちょこに採集にゆけた有名産地ではいなくなったというだけのことで、人知れず発生を繰り返している場所がもはやどこにもないなどとは決して言えない。

私も含めて今現在の道東のイシダシジミさがしを本気で行った蝶愛好家はほとんどいないのではなかろうか。

実際、もはや他人には教えられない遠軽以外の秘密のイシダシジミ産地を持っている蝶愛好家は現実にかなり存在すると思われます。


たとえば、2015-7-11 道東 某所。 イシダシジミ♀。


ここの個体群はナンテンハギ鉢植えに自然産卵させ、2016年6月上旬現在終令幼虫多数。


環境省(の数人の担当お役人: 少なくとも私たち蝶愛好家の目からは蝶類保護に関しては有能な人材とは思われない)は、2016年、アサマシジミ北海道亜種(イシダシジミ)を種の保存法の対象として採集禁止 etc の規制を、おそらく多忙のため大急ぎで発案し、内閣の閣議決定(当然ながら阿部首相はアサマシジミのアの字も知らない)を経て発表した。

従来、わが国において採集禁止種を増やすことにとりわけ熱心なことで有名なごく少数の方々(実際には悪名高い2名とされる)の意見をもとに、国内稀少野生動植物種に指定したようだが、いまのところその是非について述べるだけの情報がないのでコメントは避けたい。

ただ、環境省の超多忙と思われる数人の担当役人氏たちは北海道昆虫同好会、大阪昆虫同好会、日本蝶類学会、日本蝶類科学学会等の歴史も実績もある大きな団体からはまったく情報収集をせず、ごくごく一部の彼らにとって極めて都合の良い意見を申し述べる異端者的ともされる前述の2名の意見を重用して ことを進めた気配が濃厚であることは多くの蝶愛好家の間でささやかれている。

もし、イシダシジミの減少もしくは絶滅が地球の歴史上必然的なものであるならそんな指定はまったくの焼け石に水で、今後はイシダシジミの発生状況のモニタリングすら行われることもなく、ただ人知れずこの蝶が消えてゆくという状況を作ったに過ぎない。

そうであるとすれば、環境省の意味のないお節介焼きは、もうほどほどにしてほしいということになる。

イシダシジミの保全ということになれば採集禁止だけで何とかなるものでは全くないことは常識だ。

あるがまま放置することが保護になるというこれまでの幼稚な考えはぜひ捨ててほしい。

保全を本気で考えるならもっと先にやるべきことは多々あったはずだ。

英国では蝶愛好家(なぜか日本の環境省は蝶愛好家を推定敵とみなして、まったく相手にすらしない)を中心に類似環境の土地を確保し絶滅直前の蝶個体群そのものを移植することすら行われているという。

イシダシジミに最も深くかかわってきた前述の大きな蝶愛好者団体の方々の協力を求めるというより、これらを推定敵視しているかにすらみえる環境省の態度は建設的でないとおもう。

恐らく環境省の担当職員にとってはイシダシジミは絶滅してゆく蝶という一点にのみ彼らなりの価値を見いだしているからであろう。

それを規制の対象にすることのみがもっぱらの仕事であり、イシダシジミを本気で絶滅から救おうとしたり絶滅を少しでも先送りすることにはさほど熱心でない気配が濃厚に感じられるのは私だけであろうか。

これまでも批判が多かったひたすら採集禁止種を作るということのみが彼らの最終目的(単なる業績作り)といったものでないことを祈りたい。

この地球上では毎年数百種以上の生物が絶滅し続けているとも言われますが、もしかするとイシダシジミはその一種に過ぎないのかも知れません。

もしそうなら、この早晩消えゆく運命の生き物を採集禁止やら標本の厳格な取り扱いなどで今後の一切の調査研究などを実質上封じたうえに、罪人増産をはかる仕組み作りに血道をあげるのは、もしかすると徳川綱吉の生類憐れみの令に匹敵する空しく愚かな所行の可能性すらあります。

本末転倒です。

冷静になって考えればイシダシジミに純粋に多少の価値を見いだしている人は蝶愛好家のみであって、一般人にとってはイシダシジミは特に興味もない単なる虫けら同様の存在に過ぎないのです(密猟者から守ろうなどといったマスコミの煽りがあれば多少気にする人はでるかもしれません)。 

多くの蝶愛好家を無視しては、真の意味でのイシダシジミ保護などあり得ないと思われます。


今後、このような超多忙のごく少数のお役人が、又聞きの又聞き・ネットレベルの情報等をもとに次々と蝶の採集禁止種を設定し、それを機械的に閣議決定してゆく体制はあまりにも一方的で古典的ではなかろうか。

これは蝶の保護にとって本質的には何の役にも立ちません。

法律といったものの性格上、いったん決まったらその後の柔軟な対応など不可能である。

絶滅が危惧される蝶が問題になった場合、大きな昆虫愛好家団体や昆虫業者などをも通してまず採集を厳格に控える状況を作った上で、現状を実際に調査・把握して正にその蝶に関心の深い蝶愛好家たちに対策(もちろん一時期の採集禁止もふくめて)を検討させるほうが、実効のある保護対策となるのではあるまいか。

実際にそれらの蝶に関心のあるのは蝶愛好家のみであり、マスコミに踊らされる一般市民ではない。

まず蝶愛好家たちみずからがその気になり保護を買って出る方向へとシフトすべきではあるまいか。

日本のそれなりの蝶愛好家や業者が公認のもと本気になれば多くの採集禁止種の大量飼育など実に容易なことで、これらの蝶を一匹100円程度ないし無料で大量に放出すればマニアの密猟などといったくだらない問題は解決するだろう。

この考えは既に規制前からの累代飼育株を利用して水面下では広く行われており、2016年現在、わざわざ犯罪者になりうる種々の規制種の密猟といった危険をおかす愚かな愛好家は激減していると思われます。

ごく最近でもそのコンセプトはモルフォオオムラサキ等で実践継承されつつある

飛騨高山では毎年、全国からの蝶愛好家が中心になってギフチョウ発生地の草刈りを行い、草刈り参加者のギフチョウ採集は自由としたところ絶滅に瀕した産地が回復しているという。

単なる採集禁止(保護関係者善、蝶愛好家悪といった単純構造をつくる)といった環境省の方策がいかに芸のないものかおわかりになるとおもう。


ちょっと気になって環境省なるもののホームページを初めてのぞいてみて驚きのけぞった。

おそらくものすごい量の仕事を環境省のお役人個人個人はこなさねばならないことは一瞥してわかる。

愛好者数万人ともされる危険な外来種アカミミガメ5か年計画など、まさに圧巻だ(イシダシジミがたった1週間のパブコメ募集の末、対策が決まったのとは雲泥の差)。

実はイシダシジミの採集禁止云々は山のように積み上げられた彼らの仕事のほんのひとかけらにも過ぎない。

思いをめぐらす優先順位は限りなく下にあるだろう。これまで私が書き連ねてきたようなことを思うほどの時間も余裕も多忙な職員にはまったくないだろうことは容易に想像がつく。

行政は完璧を期せなどというのは、こちらのたわごとにすぎないことがわかる。

所詮行政とは、せいぜいそんなものであろう。ただ、とても強力な権力を有している。

そうすると、翻って、その行政をあらかじめどのように利用するかが知恵者といったところなのであろうか。

この点、私も含めて環境省のイシダシジミに対する扱いに不満をもつ多くの一般の蝶愛好家たちは相当に出遅れているのかも知れない。


          このたぐいの話は ここで一旦終了にします。





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2016年、イシダシジミの現況とマニアの採集との関係

2016-06-13 00:16:26 | イシダシジミ
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2016年、イシダシジミの現況とマニアの採集との関係



わが国において草原性蝶類の衰退はいちじるしい。

マスコミ的な表現では環境変化とマニアの乱獲が原因ということになるが、マニアの乱獲にウェイトを置きたがるのはニュース性を追い求めるマスコミの体質上仕方がないだろう。

しかし、多くの場合マニアの採集は、すでに絶滅が近づいている個体群に単にトドメをさすといった一見やたら目立つ行為ということに過ぎない。

このような場合、しばしば乱獲というマスコミ用語が用いられる。

私たち蝶愛好家の視点からすれば本当の原因は種々の理由による棲息環境の変化であることは言を待たない。

イシダシジミの場合も同じと思う。

20年ほど前であれば道東の産地を回ってイシダシジミ終令幼虫をナンテンハギの葉先からいくらでもつまんできては蛹化させ、おびただしい数のイシダシジミを羽化させることなど容易であったがこれを乱獲とはいえない。(キャベツ畑に乱舞するモンシロチョウを1000匹採集してもこれを乱獲とは言う人はいないだろう。それと同じ。 )

道東の泉川の駅周辺では、やや発生の後期にゆけばイシダシジミはまさに群飛・乱舞しており、採集の食指はまったくわかない駄蝶であった。

そんな蝶が、気が付いたらほとんどいなくなっていたのだ。

誰もそれと気づかないうちに忽然と道東の草原から消えてしまった。

理由はよくわからない。爆発的に増えたエゾシカが大好物のナンテンハギ若葉をイシダシジミ幼虫もろとも食べてしまったという意見はかなり真実味をおびて語られた。

鉄道路線が廃線になり線路脇の草刈りをしなくなったためナンテンハギが他の植物に負けて消えてしまった。

やや湿った道路脇に発生地が多かったのだがアスファルト舗装がどこまでも行き渡り排水溝も完備して環境が乾燥し、発生地が消えた。

イシダシジミ生息に理想的な草原がことごとく畑や牧草地に変わってしまった。

帯広の大産地は宅地化で消えた。

草原の乾燥化がはじまり灌木が茂り背の高い雑草が茂りナンテンハギを覆い尽くして、やがてナンテンハギは消えてしまった。

農薬散布の巻き添えを食ってイシダシジミ幼虫全滅。寄生虫、ウィルス、天敵などにやられたのではなかろうか。 

地球温暖化が何らかの悪影響をあたえたに違いない。 etc etc etc .........。 

いずれの説も一見本当くさいが実際のところはっきりした原因は不明であろう。

しかし人間の生活の営みそのものに関わる形で消えていった産地は実際のところきわめて多いと思われる。

一方、種アサマシジミ(イシダシジミはアサマシジミ亜種)は環境さえ整えばモンシロチョウ以上に爆発的に発生する蝶で、私は実際にモンゴルで数百匹規模の大吸水集団はよく見ています。

たとえば2002年6月24日、モンゴル最北部の秘境ドートノール湖畔では雲霞のごとく本種が大発生していました。

採集記録をみると、この日イシダシジミ608♂♂82♀♀を採集しましたが(これも乱獲とは言えないだろう)見渡すかぎり、おそらく数万~数十万の本種が大発生していました(拙著モンゴルの蝶類第4巻シジミチョウ科・セセリチョウ科 P. 117)。 

ひたすら採集に徹して大急ぎで各地をまわる調査旅行で生態観察が十分出来なかったのが残念です。

モンゴルでの状況を見ればイシダシジミは環境さえ整えば爆発的に増える蝶と言えます。


モンゴルほどではありませんが前述の泉川駅周辺のように道東でもかってはおびただしい数の本種をみています。

田中角栄時代以降の、ごく最近の自然しか知らない若い方々(おそらく環境省職員も同じ)には到底理解できないかもしれませんが、環境さえ整っていれば、マニアの絶え間ない乱獲のみで絶滅する蝶(ほ乳類や鳥類とは発生の仕組みが別次元の生物です)は滅多にいないと断言できます。


近年ではオホーツクで唯一、まだ生息が確認されているという遠軽町自衛隊射撃訓練場のイシダシジミにその気配を感じることができると思います。

2015年6月のこと、絶滅間近???とされる遠軽の狭い産地に残り少ないイシダシジミ(幼虫)を求めて血眼で殺到する多数の蝶マニアの方々の気持ちはわからないでもありませんが、あまりにもアサマしすぎて一般の方々がみれば、とてもみにくい光景に映るかもしれません。ただ、これまでの私自身の所業からして彼らを非難する資格は私にはありませんが。

しかし、諸般の事情で発表できないため、おおっぴらになってはいないのですが実は2013年、ここのイシダシジミは大発生しています。

その前年2012年秋に、詳しいいきさつは不明ですが自衛隊員によるこの場所の大々的な草刈り・灌木伐採があったのです。

ナンテンハギに覆い被さる雑草・灌木が刈られた結果、翌年ナンテンハギの生育がよくなったことが大発生の理由と考えられます。

秋の草刈りによる2013年イシダシジミ大発生は多くの方には留意されることも公表されることもありませんでしたが、たまたま、その時期に訪れた蝶愛好家の方々によりはっきりと確認されています。

その情報をもとに 2014年は多くの採集者が入ったようですが発生状況は悪くなく一人成虫20頭ほどは採集できたとのことでした。

その後草刈りは行われず雑草は勢いを取り戻しナンテンハギの勢いは再び衰え、採集者の増加もあって2015年は発生個体数は再び激減していたのが現状と推定されます。

ただ、蝶は大発生のあと激減することがあり、もしかするとそれかも知れませんが。


ナンテンハギそのものは刈らないよう気配りした秋の草刈りを継続し、自衛隊による射撃場管理(立ち入りを厳格に制限する)を徹底することにより遠軽のイシダシジミは再び勢いを取り戻す可能性は多いにあると思います。

これが遠軽のイシダシジミを存続させる最も現実的な方法とおもわれます。


射撃訓練場であるという特殊事情から危険や軍事機密等、自衛隊法の縛りなどあるのだろうか。

ただ北富士自衛隊演習場は訓練のないときは広く一般に開放されていると聞く。柔軟な法解釈で一般ボランティアなどが合法的に立ち入るようには出来ないのだろうか。


    この項、 続く。





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