北海道昆虫同好会ブログ

北海道昆虫同好会は北海道の昆虫を中心に近隣諸国および世界の昆虫を対象に活動しています。

エゾヒメギフチョウの乱舞が終わって。2024年度北見市近郊のエゾヒメギフチョウ発生地と産卵状況調査。

2024-07-31 17:16:13 | エゾヒメギフチョウ

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エゾヒメギフチョウの乱舞が終わって。2024年度北見市近郊のエゾヒメギフチョウ発生地と産卵状況調査。

 

2024-5-10(金) 晴れたり曇ったり。19℃。

 

 

ジョウザンシジミの撮影の後。昼のおにぎり2個を食べてから12:00、近くの林道へ、昨年に続いてエゾヒメギフチョウ産卵状況調査に向かった。

 

 

目的地の林道ではエゾヒメギフチョウが吸蜜に飛来していたエゾノリュウキンカとハワサビの群生地で少し植物の撮影をしたが、今日の蝶はエゾスジグロ数頭のみ。

 

 

 

オホーツクでエゾヒメギフチョウが好むフキノトウは花が終わり綿帽子の種子をつけている。

 

 

近年、在来種のエゾノリュウキンカの群落の中で、ここでは国内外来種になるハワサビの勢いが強くなっているようだ。 

 

 

ここのエゾノリュウキンカに吸蜜するエゾヒメギフチョウ。(数年前の写真)。

 

 

この付近にのみ見られるめずらしい葉ワサビの白い花に吸蜜するエゾヒメギフチョウ。(数年前の写真)。

 

 

最近は、別の発生地ばかり回って、この場所で成虫の飛ぶ時期に観察に来たことはなかった。このエゾヒメギフチョウ発生地は、かって私が発見したが我が家からすぐ近くという私にとっては秘密の発生地、とりわけ貴重な場所で、ここを知る人は数人のみ。

 

 

わき水のある水源地ポイントではこれも葉ワサビと同じく外来種のクレッソンが大繁殖していた。

 

 

 

エゾヒメギフチョウが多くみられるポイントのやや下流域、道路沿いのオクエゾサイシン群落を丹念に調べたが5卵塊を発見し撮影したのみであった。 

 

これらの場所以外はオクエゾサイシンはあるが産卵葉はなかった。発見した限りでは卵塊や産卵数は昨年と同じ程度と思われた。ただ、チョウの発生数からするともっと違った場所に私の知らないオクエゾサイシン群落や産卵場所があると思われる。

 

 

ここではエゾエンゴサクは少なく吸蜜植物としてはあまり利用されていない。

 

途中エゾヒメギフ2匹発見。風に乗ってかなり速く飛んでいて追いついても空振りばかりで逃げられた。Ⅰ♂のみ なんとかネットしたがボロ汚損個体で撮影後リリース。年齢がすすみ私の視力、とくに動体視力は明らかに低下している。

 

 

 

 

林道右から入る古い林道をつめてみた。大型車両が入ったあとがあり 深い轍になっていて はまったらお仕舞いといった場所もあったが 最後は広大な若いカラマツの植林地と 立派だが何年も放置されているように見える古色蒼然のログハウスがあり雑草や若木におおわれ施錠されていた。

 

 

 

 

ここまで見たところではエゾヒメギフがいそうな新しいポイントは無かった。 

 

 

午後2:15 帰宅した。 庭のチューリップが満開でした。

 

 

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2024年度ジョウザンシジミ春型の撮影。

2024-07-24 08:56:44 | ジョウザンシジミ

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2024年度ジョウザンシジミ春型の撮影。

 

2024-5-10(金) 晴れたり曇ったり。19℃。

 

 

 

午前10時。北見市の我が家からほど近い林道へジョウザンシジミの撮影に出かけた。

 

 

 

 

現場では当初、谷あいの発生地には風が少し吹いており、曇って蝶影なし。

 

 

ジョウザンシジミの食草エゾキリンソウ、花はまだ咲いていない。

 

チャマダラセセリの食草、キジムシロの花は満開。

 

 

30分ほどあたりを観察しながら待つと、そのうちジョウザンシジミの崖へ陽がさしてきた。

 

 

この日、崖に陽がさしはじめて現れたのは、ジョウザンシジミ3オスのみ。

 

 

いつものように道路沿いの側溝付近を速く低く飛ぶ。側溝を好むのは地表よりもやや低くなって風当たりが弱いためだと思います。

 

 

オスどうしで盛んにからみあっているがメスはいないようだ。

 

2♂♂のみなんとか撮影射程距離に入ってくれたので岩や蕗の葉や地面の枯葉やタンポポの花上のものをせっせと撮影。

 

 

 

ジョウザンシジミのオスたちはとても小さいうえに活発で動きが早く、撮影のチャンスはきわめて少ない。

止まってもすぐ飛び立ち、吸蜜時間も数秒。 さあ構図をきめて、それからピントをしっかり合わせて、シャッターを切るといったパターンでは撮影不可能。

 

 

 

止まりそうな瞬間にヤマカンでカメラをかまえてパシャパシャとシャッターを押し続けるしかないのです。

 

 

 

 

そんな状況なのでうまくピントが合って構図もよろしいといった写真は少なく、ほとんどはピンぼけ写真でした。今回も、それでもまあまあの出来の写真を提示しました。

 

 

まだ多少時期が早いせいかメスは発生しておらず、期待していたチャマダラセセリもいなかった。

 

 

 

 

この日のジョウザンシジミは午前11:00~11:30の短時間のみ現れたが、その時間以外はエゾスジグロチョウしか見えなかった。

 

 

 

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激減する北海道特産のチョウ、リンゴシジミ始末記。

2024-07-03 15:19:15 | リンゴシジミ

 

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激減する北海道特産のチョウ、リンゴシジミ始末記。

 

 

北海道特産種のリンゴシジミ Strymonidia  pruni  jezoensis  、英名 Black hairstreak  。 国外ではイギリス、北欧、ウクライナからモンゴル、朝鮮半島、から日本に至る旧北区全体的に見られ るとされるが欧州では減少しつつありイギリスでは最希少種とされ、デンマークでは絶滅が確認されている。

 

 

 

北海道でも今や希少な種類と思われ、最近では特定の小規模な産地以外では滅多にお目にかからない蝶になってしまいました。

 

 

以下に示す大きな理由のため、北海道では毎年、絶滅産地ばかりが増えてゆく状況です。

 

 

 

 

しかし、理由もはっきりせず、急速に絶滅寸前状態に陥ったイシダシジミと比べると激減の理由は、はっきりしています。

 

 

 

かって原始の北海道ではリンゴシジミの主たる食樹は在来種のシュウリザクラ、またはエゾノウワミズザクラであったと思われます。

 

 

私が子供の頃はもっぱらエゾノウワミズザクラの群落をチラチラ飛ぶリンゴシジミが主体で、エゾノウワミズザクラの花を食べている終令幼虫を採集したりしていました。

 

 

 

エゾノウワミズザクラの群落は広い河川敷や湿地に多く、やがてこれらの場所は洪水対策で盛んに樹木が伐採されるようになって樹木の無い河川敷や、畑や、パークゴルフ場、運動公園などに姿を変えて行きます。この間、オホーツクではリンゴシジミはエゾノウワミズザクラの伐採に伴いみるみる姿を消して行きました。

 

 

明治の頃、北海道開拓に伴い、入植した多くの農家の庭にはスモモが植栽されて当時は貴重な食べ物でした。しかし殺虫剤散布で実を食害する虫たちを完全に処分しなければ、とても食べられるスモモの実は収穫できず、そのためスモモの樹とリンゴシジミを関連ずける発想は全くありませんでした。

 

 

ちなみにスモモ Prunus salicina  は中国などから日本にもたらされた外来種です。

 

 

 

平成の時代になり、河川敷などでエゾノウワミズザクラに依存するリンゴシジミが次々に消滅してゆく一方で、いつの頃からか離農した農家のスモモにリンゴシジミが発生していることが知られるようになりました。当初はにわかには信じられませんでしたが、離農して廃屋となった農家の庭のスモモに群れ飛ぶリンゴシジミを見てとても驚いた記憶があります。

 

 

 

離農した農家では庭に放置したスモモが消毒されることはなくなります。スモモは多くの昆虫類に利用されることとなり、リンゴシジミもエゾノウワミズザクラからスモモに食性転換することによって生き延びたのでした。

 

 

 

かっては道東、道北にしか記録がなかったリンゴシジミは離農農家の庭のスモモを利用することにより生き残り、かつ 札幌、道央方面に次々に分布を広げ、一時は多くの産地が知られていました。チョウ愛好家の間で御神木と大切にされていたリンゴシジミ発生スモモもありました。

 

 

 

このようにいわば里のチョウとも言えるリンゴシジミは日々変遷する自然環境に素早く適応しながら、したたかに世代をつないだかに見えました。

 

 

ところが現実はそう甘いものではありませんでした。

 

 

 

実を収穫することもなくなったスモモは、やがて一般の人たちの目から見ると、やたらと根を張りどんどん巨木化する無用の樹木になってしまったのです。

 

 

 

やがて畑作地に近い場所のスモモはジャガイモの病害虫がつくなどの理由で魔女狩りみたいに切り倒され始めます。

 

 

 

さらに北海道全域での大規模農地造成で邪魔になる離農廃屋とともに多くのスモモが伐採されました。

 

 

 

害虫や種々病原体の発生木となる可能性を警戒されて、植林地の近くや、人家や畑の近く、時にはラブホテルの前にあったスモモなどは蝶愛好家がネットを持ってウロウロするのを嫌って、すべて伐採されてしまいました。

 

 

 

オホーツクではスモモかがことごとく伐採されたために、近くに植栽された梅やアンズに食性転換し、ほそぼそと命脈をつないでいるリンゴシジミ個体群がいますが、彼らの運命はまさに風前のともしびといった状況です。

 

ウメについたリンゴシジミ幼虫。

 

スモモへの食性転換で一時、勢を盛り返したかに見えたリンゴシジミですが、一時的な発生木となっていたスモモの多くが伐採され、彼らにとってはまことに住みにくい時代になったものです。

 

 

 

 

私の実家のエゾノウワミズザクラでは10年以上にわたってリンゴシジミが発生していましたが、私が北見市を離れてから、母が庭木にヤマボウシを植えるためにこのエゾノウワミズザクラを切り倒してしまいリンゴシジミは消えました。

 

 

 

どう見ても、今や風前の灯の希少種で、デンマークのように絶滅を待つしかない状態のリンゴシジミですが、スモモを利用することにより復活させることは比較的容易と考えています。日本蝶類○○会、○○省など従来採集禁止種を増やすしか脳のなかった方々も含め、本気でチョウ類の絶滅をなんとかしたいと考えるなら今が潮時かもしれません。イギリスではちょっと苦戦しているようですが。

 

 

 

ちなみに長年、チョウや渓流魚の盛衰をつぶさに見てきた私としては、あえてこれら自然の流れに介入する気持ちが日々薄くなって来てはいます。

 

 

閑話休題。

 

冷静に考えてみますと、私自身も酔心してきた生態系という概念には何やら人間のおごりたかぶりが垣間見られます。

 

今現在、おごりたかぶっている人間も宇宙人の視点からすると、地球の生態系をかたちずくっている、知能が高いようで実はとても低い性悪な生き物、の一種に過ぎないのではないかと気づき始めた昨今です。

 

 

このおごりたかぶりに気づくとき、真の生態系保全に向かえる可能性が出てくるのかもしれません。そのきっかけをつかめず人類はひたすら走っているように見えます。

 

 

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