北海道昆虫同好会ブログ

北海道昆虫同好会は北海道の昆虫を中心に近隣諸国および世界の昆虫を対象に活動しています。

空を翔ぶ宝石アグリアスベアタの撮影。

2022-04-27 16:11:18 | 南米の蝶

空を翔ぶ宝石アグリアスベアタの撮影。

 

 

 

 

 

南米ペルーに蝶の採集に来たからには是非とも採集したかったのが空を翔ぶ宝石アグリアスベアタでした。

 

 

Junin 州 Satipoのジャングルの奥地にこの蝶の採集ポイントがあり、そこでは約2週に1匹ほどが採集されていました。アンデスアマゾンの最源流域のジャングルの枯れ川を数時間遡行した標高400mほどのそのポイントで、かろうじて美しい1オスを採集できました。

 

その後、急にこの蝶の写真を撮りたいという気持ちが高まりましたが、もうそのポイントでは無理で、別のポイントへ転戦することになりました。

 

 

Agrias beata  beata  は、かなりの高標高にも産するようで、この山塊の標高1000mほどの原生林に生息するという。

 

案内人となったホセ君は、この辺りの蝶や自然を知り尽くしているといい、必ずベアタの写真を撮らせると自信に満ちて言いきった。

 

 

最近のベアタ情報を聞きに、この山塊で アグリアスベアタの飼育をしているホセ君の友人宅を訪問した。文字通りの掘っ立て小屋でひたすらベアタの飼育をして完全標本を得て、それを売って生計を立てている。

 

 

奥さんと、可愛いい子供4人と、きわめて質素だが幸せそうに暮らしている感じ。しかし最近 ベアタ生息地の斜面が焼き畑で消えてしまったと嘆いていました。

 

 

飼育中の アグリアスベアタの3令?幼虫を撮影させてもらった。 幼虫は麻薬コカインの原料であるコカの葉を食べて育つ。標本や蛹があれば購入したいと思っていたが幼虫しかいなかった。

 

 

 

 

 

ここは標高1100m の原生林の沢筋。ホセ君がベアタを誘引するトラップを仕掛けた。

 

午前8時40分。薄曇り。気温30度C。 無風。 ホセ君が高い樹上を矢のように翔ぶ2頭の黒いアグリアスを指さした。超高速で翔ぶベタアグリアスだ。

 

 

午前9時15分。1匹がトラップに舞い降りた。  午前9時26分。もう1匹も近くの小径に仕掛けたトラップに舞い降りた。濃い緑を背景に赤い線が稲妻のように走ったと思った途端、クラウディーナアグリアスも舞い降りた。

 

 

 

生まれて初めて憧れの南米アンデスアマゾンに来て、まさかこの蝶を撮影できるとは夢にも思っていなかった。撮影しながら嬉しさで鳥肌が立っていました。

 

 

 

蝶にしてはずっしりとした感覚でジンジンと筋肉の振動が伝わってきました。美しいチョウです。

 

 

アマゾンの熱帯雨林の破壊は90%が違法伐採によるといいます。この付近でも伐採は盛んで大型トラックで巨木が運ばれてゆくのをしばしば見かけました。大型トラックの多くはボルボであるのも印象的でした。このトラックの大木が違法伐採かどうかは知りません。 

 

 

このほか焼き畑で斜面のあちこちにチロチロと蛇の舌みたいな炎が広がって山肌が燃えているのをよく見かけました。伐採地のあとは、しばらく焼き畑として使用されることもあります。

 

 

 

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空を飛ぶ宝石、ベアタミイロタテハ  Agrias beata  その1

2022-04-20 14:09:42 | 南米の蝶

空を飛ぶ宝石、ベアタミイロタテハ 

Agrias beata  その1

 

アグリアスの仲間は一般的に採集される個体数が少ないため標本はかなりの高値で取引され、空を飛ぶ宝石とも言われた。ベアタミイロタテハ Agrias beata は、コロンビア、エクアドル、ブラジル、ペルーの局所的発生地で得られている。これらの国々が国境を接するアマゾン河上流~源流域、標高300m 前後、やや高標高の地域に棲息する。いくつかの亜種や特異な Form が知られる。

 

 

A. beata  beata  原名亜種はペルーのTingo Maria産。 裏面基部の斑紋は赤。前翅表金緑色帯は最も広くあでやか。

 

この個体は2003年11月に採集された Tingo Maria 産♂。 S.有賀コレクションより。

 

表面

 

 

裏面

 

私はアンデスアマゾン源流域のShima シマ、やその近郊でやや標高の高い Kubiriaki クビリアキ でベアタアグリアスを採集したが、原名亜種と同一の個体群とおもわれる。高い木の梢を矢のように飛ぶが突然、トラップに舞い降りる。トラップに来ているときは鈍感でいずれも指でつまむ格好で採集できた。最初に網をかぶせた1♂は激しく暴れてトラップ液で汚れてしまい惨めな姿になった。

 

 

Peru  Andes Amazon  Kubiriaki  クビリアキ産♂

表面

裏面

 

 

Agrias beata   ssp.stuarti   Iquitos 産

この亜種スチュアルティは裏面基部から内側の領域が広範に赤ないし黄色くなり、翅表の金緑帯はとても巾狭くなる。

 

2004年1月に採集されたIquitos 産♂ 裏面基部から内側が柿色のタイプ。A.宮下collection より。

 

2004年1月に採集されたIquitos 産♂ 裏面基部から内側が黄色いタイプ。Y.村田collectionより。

表面

裏面

 

 

 

 

Agrias beata の♀

 

アグリアスの♀はトラップ採集できる♂と異なり一般的にきわめて得難いとされ、標本の価格も異常に跳ね上がるようだ。特に、A. beata ベアタアグリアスの♀は とりわけ得難いとされ、コレクションすることは至難とされていた。その A. beata ベアタアグリアスの♀ を以下に呈示させていただきます。

 

 

 

 

Peru  Andes Amazon  Kubiriaki  クビリアキ産♀ 2001年12月採集品 Y.村田collectionより。

表面

裏面

 

 

 

Peru  Andes Amazon  Kubiriaki  クビリアキ産♀ 2001年10月の採集品。S.有賀collection より。

表面

裏面

 

 

 

 

Agrias beata   ssp.stuarti   Iquitos 産♀。 2004年1月の採集品。H.菱川 collectionより。

表面

 

裏面

貴重な A.beata の標本を撮影させていただいた方々は、いずれもかなりの資産家、ないし熱烈なアグリアス収集家の方々で、かってこれらの標本を収集することは至難であったと思われます。私のような一般的な収集家ではこのような立派なコレクションは困難でした。月日は流れ、2022年現在では、採集や飼育の技術も進歩し、昔と比べるとA. beata の標本価格はかなり下がっています。それでも Agrias beata  が空を飛ぶ宝石であることは変わりがありません。

 

 

    この項、 続く。

 

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Astrope degandii      ベアタもどき

2022-04-13 14:38:55 | 南米の蝶

Astrope degandii      ベアタもどき 

 

20XX-Nov.  10      Alt. 400m  Shima  Junin    Peru.

 

南米ペルー、アンデスアマゾン源流域。

 

この辺りには3種のアグリアスが生息している。 

 

Agrias amydon,  A. claudina  lugens,  そして  A.  beata  (ベアタアグリアス)。 前2者はなんとか撮影、採集できたが 最後のベアタアグリアスは手強い。

 

 

 

ベアタアグリアスの発生数は少なく、この時期、このあたりでは1週間に1-2頭くらいしか採集されないと言う。

 

 

この日、このジャングル奥のベースキャンプから枯れ川になったシマ川をさらに3時間遡行してベアタアグリアスのポイントへ向かった。もう歩くのが嫌になる頃、やっとポイントに着きトラップを仕掛けた。

 

 

 

ほどなくヒラヒラとこの蝶が舞い降りて、本物のベアタを見たことがなかった私はてっきりこれが珍品ベアタと勘違いした。

 

 

心臓が破裂しそうに鼓動して、喉がカラカラ、緊張のあまり声も出ない。そんな状況で撮影したのは、この Astrope degandii  でした。

 

知らないものが見れば最初はベアタと間違えるかもしれないが、全く、似て非なるものです。

真っ白いストローが印象的で、それなりに美しい蝶だとは思います。

 

 

 

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ペルー産ベニコノハの謎

2022-04-05 12:45:17 | 南米の蝶

ペルー産ベニコノハの謎

 

この一見とても印象的な 南米産タテハチョウは日本では、なんとなくベニコノハと呼ばれているようです。

 

 

ちょっとその気になってこの蝶を調べてみようかと思ったもののネットレベルでは ほとんど情報がなく、 D' Abrera  ダブレラの Butterflies of the Neotropical Region Part 5     Nymphalidae and Satyridae  p 720-721 に多少の解説を発見したのみでした。 

 

 

 

 

私はペルーのアンデスアマゾンでベニコノハとおぼしきこの蝶を何度か撮影したり採集する機会がありましたが、帰国して調べてみると、このダブレラの解説が書かれた当時では 種 Siderone  thebais はペルーからは記録がなかったようです。

 

 

というより、近年この蝶がペルーからもたらされるようになって、さほど時間がたっていないのかもしれません。 

 

 

 

 

さて、問題はこの蝶にはかなりの多形性 highly variable species  と 季節型  seasonal dimorphism  がある可能性が述べられ、それを根拠にざっくりまとめて えいや こいつらは実は 2種なのだ、 すなわち S. thebais  と S. marthesia  の 2種として説明しようとしているところです。

 

 

 

 

 

そうではなくて、多形性と季節性 とういうよりは、もっと沢山の種が含まれているのではないかとの意見もあるようです。

 

 

 

 

たとえば 私たち日本人みたいに翅型、斑紋、色調など微細な変化にやたらとこだわる視点からみると ダブレラが 同じ S.thebais として呈示している2個体は どうみても別種に見えてしまう。

 

 

 

まあ、今回は ペルー産ベニコノハ?  は Siderone thebais セバイスベニコノハ といった名称にしておきたいと思います。今後のベニコノハ属の再検討を 中南米~南米の標本を多数もっておられる方、 または現地での生態的観察などを出来る方 に期待したいと思います。

 

 

 

 

 

南米ペルー、アンデスアマゾンで アミドンアグリアス Agrias amydon と吸水中の セバイスベニコノハ。

 

 

 

 

 

 

 

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ミヤマカラスアゲハに寄生する恐怖のアオムシコバチ。

2022-04-03 17:13:45 | アオムシコバチ

ミヤマカラスアゲハに寄生する恐怖のアオムシコバチ。

 

 

20XX-8-15 (土) 晴れ  23℃

 

コクサギの枝に袋がけでミヤマカラスアゲハを飼育していたが、蛹化後とりこんで羽化を待っていた蛹の色が悪くなり、なんとなく膨化してむくんだような異変がみられるものがある。

 

 

 

 

 

これらはアゲハ幼虫に寄生する寄生蜂アオムシコバチ( Ptrroomalus  puparum )に寄生された蛹です。

 

 

 

 

 

アオムシコバチは体長数mmの超小型の寄生蜂だが、袋掛け飼育などのさい、どこからかの隙間から侵入し、ミヤマカラスアゲハ幼虫に大量の卵を産み付ける。

 

 

 

 

 

蛹の中で羽化した多数のアオムシコバチはミヤマカラスアゲハが羽化するであろう頃に、突然蛹を食い破った脱出孔から一斉に外へ出てくる。

 

 

 

 

朝、大型シャーレに入れて置いた寄生とおぼしき別のミヤマカラスアゲハ蛹から 果たして寄生蜂が出始めており 小型タッパウエアに移した。

 

 

 

 

一個の蛹からは、数えるのを断念するほど、おびただしい数のアオムシコバチが出てくる。性欲旺盛で蛹から出た♂♀は盛んに交尾行動に移る。なかには脱出孔から蛹の中にもどって交尾するものまであるらしい。

 

 

 

 

 

 

脱出するアオムシコバチの数がすざましい一方、不思議なことに脱出孔の数は数個と少ないのは興味深いが理由は不明。

 

 

 

 

寄生された蛹は小型タッパウエァなどに密封放置する。なかでワンワンぶんぶん飛び回っている無数のアオムシコバチはかわいそうだが、そのまま放置してすべて、おくたばりになっていただいています。

 

 

 

 

最近では、寄生を嫌って袋がけ飼育はあまり行わなくなりましたが、大型個体を羽化させるにはやはり多少の寄生覚悟で袋がけ飼育するしかなさそうです。

 

 

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