北海道昆虫同好会ブログ

北海道昆虫同好会は北海道の昆虫を中心に近隣諸国および世界の昆虫を対象に活動しています。

緑色のモンキチョウ 。南米ペルー、アンデス高山帯4300mで高山蝶を採集。その弐。

2022-08-25 13:48:05 | 南米の蝶

緑色のモンキチョウ 。南米ペルー、アンデス高山帯4300mで高山蝶を採集。その弐。

 

 

 

2005-1-1 (土) アンデス高山帯4300m。晴れたり曇ったり。

 

 

 

辛抱強く空をあおいでチャンスを待つ。やがて予想どおり雲の切れ間からカッと日がさすと、強風は徐々に弱まってきて、急速に気温が上がってきた。

 

 

 

 

 

まったく生き物の気配がなかった荒れ地に、魔法みたいにどこからともなくポツポツと蝶が現れ、低く速く飛び始めた。昔、北インドのカシミールラダック高山帯で激しい高山病に悩まされながらハードウィッキウスバやシャルトニウスウスバを採集したときとそっくりだ。

 

 

 

 

 

高度計ではこの付近は標高約4200~4300m。蝶たちの動きは意外に速い。実際にはさほど速くないのかもしれないが、こちらが思うように動けないせいか、とても速く感じる。低く、速く飛ぶ蝶はとりにくく、平地なら容易なのだが 待っていてもネットの射程距離にはなかなか入ってこない。

 

 

 

かなりの高山帯なので高度順応不十分なまま追いかけることになり、たちまち息切れ、呼吸苦、眼の奥が痛くなるような頭痛、吐き気など高山病発症の危険がやってくる。

 

 

 

 

偶然、近くにきた蝶に思い出したようにネットを振るが空振りばかりでイヤになる。飛んでいる蝶が無理なら止まっている蝶を狙いたいのだが、あいにく吸水にくる湿地や、吸蜜する花がほとんどない。蝶は見えるが全く採れないという最悪のパターン。

 

 

 

クソ。くやしい。悔しい。

 

 

 

絶望的な気持になったが、遠くにアンデス高山帯に棲む野生動物リャマの斃死死体を発見した。呼吸を整えながらゆっくりゆっくり歩いてやっと近づくと、そこには夢のような光景があった。

 

 

 

 

 

リャマのなかばミイラ化した死体とその周辺に散逸したパーツや獣糞に多数の高山蝶がきていたのだ。

 

 

 

リャマのミイラ化した死体やその周囲の草地に、緑色のコリアス C. mossi  モッシミドリモンキチョウ はじめ 黄色いコリアス C.euxanthe ユウクサンテモンキチョウ、褐色のジャノメ、チチカカヒメシジミ Madeleinea  Sp. ?  ほか数種のシジミ、セセリ1種、高山性シロチョウ2種が多数集まって盛んにストローを伸ばしていた。

 

 

 

 

千載一遇のチャンスと思い、これらの蝶をせっせと採集し大型三角紙に放り込む作業を開始した。

 

 

 

 

陽が陰ってくると、蝶たちは三々五々飛び去るが、近くの草地、岩の上などに静止する個体も見られ、これらの撮影は容易であった。

 

モッシミドリモンキチョウ( Colias  mossi  Rothchild ) はコリアスとしてはとても珍しい灰緑色の翅裏面で、表面は暗灰色を帯び、翅表の斑紋や色調は多数の展翅標本を見ると実に変異が大きい。低く速く飛ぶ時は灰緑色の蝶に見える。止まっているときはまさに緑色のコリアスに見える。

 

 

 

 

 

帰国後、C.mossi について調べようとしたが、これまでのところはとても珍しい蝶のようで、ダブレラの大図鑑、世界のコリアス図鑑はじめ、いくつかの書籍にごく簡単な図示解説があるのみでそれ以外に参考になるような情報はなかった。

 

 

   この項、続く。

 

 

 

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南米ペルー、アンデス4300mで高山蝶を採集。その壱。

2022-08-17 21:53:55 | 南米の蝶

南米ペルー、アンデス4300mで高山蝶を採集。

その壱。

 

 

20XX-1-1 (土) 朝6時30分。 曇 たまに日が射す

 

 

正月元旦の早朝。もやーつとした怪しい空気がどんよりとよどむペルーの首都リマを出発、アンデス山脈越えに向かった。早朝で車はさすがに少ない。郊外のガススタンドで給油したらサービスにコカコーラ一本くれた。途中でスナック用にオレンジ色のバナナを買ったがフィリピンの高級オレンジバナナとくらべるとあまりおいしくなかった。

 

 

 

 

この時期は谷あいの川にもけっこう水があり山全体が緑で、乾期の荒涼とした風景とは別世界のようだ。

 

 

 

 

何となく昔の雰囲気がただようけっこう大きな街をいくつも通り過ぎた。

 

 

やがて人家は見えなくなりアンデスの山裾にとりついた。これからアンデス越えにかかる。

 

 

 

 

ペルーでは、このトヨタハイラックス4駆は圧倒的にパワフルな車だ。アンデスの山あいの道を息をつきながら登ってゆく車たちを、次々に抜き去ってひたすら登る。どんどん登り、またいつもの休憩地点のレストランで朝食。おなじみのチキンサンド。コーヒー。スープ。

 

 

 

 

リマを出て6時間、この間、実に色々なことがあったが今回はすべて省略。

 

 

 

 

 

ひたすら走りに走って、とうとう4800mの ラ・オヨラ ( La  Oroya )を難なく超えた。いつの間にか、なんとなく息苦しくなっているのに気づく。

 

 

 

 

これは峠から、さらに続いている5000m級のアンデスの高山帯の風景をみあげたところです。万年雪がありそう。いつもは通り過ぎるだけの峠だが、今日はアンデスの高山蝶の採集をこころみる予定だ。

 

 

 

 

峠を越え、テンゴマリアへゆく道へ入りしばらく行くと今回の目的地の高山蝶採集ポイントに着いた。ここは初めてのところで、多少の草地もみられ、なにがしかの蝶がいるかも知れない。標高は4300m。半日もしないうちに一気に日本の富士山よりも高いところにきてしまい、高度順応もへったくれもない。

 

 

 

車を降りるとかなり気温が低く身震いするほど冷たい強風が吹いている。あいにく空は厚い雲におおわれて、強風で雲の流れがとても速い。

 

 

 

10歩も歩くと酸素が薄いため目の前が真っ暗になり、ぐらぐらめまいとともに呼吸困難になる。冷たい強風、曇天、とても寒い、自由にならない体。蝶の採集どころではない状況に見える。

 

 

 

 

かって北インド高山帯に高山蝶を採集に出かけた時、死の恐怖を十分に味わい、私の性格まで変えてしまった恐ろしい高山病を経験した記憶が頭をよぎる。

 

 

 

 

 

しかし、今までの経験上、こんなことであきらめては高山蝶は採れない。実は高山帯の天候とはいつもこんなものです。空をあおぎ、流れる雲の動きを見ながら、祈る。おてんとうさま、出てこい。いや。お願い。出てきてください。

 

                この項、続く。

 

 

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オオイチモンジの悲劇。

2022-08-03 14:04:21 | オオイチモンジ

オオイチモンジの悲劇。

 

2022-7-1(金) 晴れ 24℃

 

 

さわやかな朝。今日は道東のヤマベ釣り解禁日。久しぶりにヤマベ沢山釣りたい、ヤマベから揚げ食いたいモードになり、近郊のヤマベ繁殖渓流へむかっった。

 

 

 

午前10時ころ、小気味のよい青空に、新緑、どこまでもまっすぐなアスファルト道路。

 

 

とある橋にさしかかると、橋の上に何かを発見。蝶愛好家でなければ間違いなくスルーしてしまうだろう。

 

 

車を止めて近づくと、思った通りそれはオオイチモンジの♂でした。

 

 

羽化したての新鮮な個体で橋の上を低く滑空中のところに運悪く自動車がきて衝突し、あえない最後となったものだとおもう。

 

 

ぶつかった衝撃で羽根がおちょこになり落下、即死ではなく私が拾い上げたときはかすかにピクピク動いていました。

 

 

 

おちょこになった羽根を修復したところ。羽化したての♂完全品。

 

 

 

 

この蝶は友人のK氏が展翅するというので彼にあげました。

 

 

 

実は蝶と車の衝突事故や吸水中に轢かれるなどのトラブル( Butterfly car hit )はインドの国立公園で問題となったことなど何かの記事でよんだことがあります。

 

 

北海道でよく見かける Butterfly car hit で最も多いのはミヤマカラスアゲハ夏型♂でシーズン中はよく道路上に哀れな姿が見られます。エゾシカや小動物なら急ブレーキやハンドル操作で衝突を避けようとしますが、蝶の場合はぶつかるのみ。

 

 

 

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